幻獣様と世界と乙女。7
とにかく一刻も早く魔の門が開く前に、消さないといけない。
魔の穴をヴィオと消したのであれば可能かもしれない・・。そう言って、皆で一緒にロズとダズに転移する事になった。ベルナさんやニケさんもついて来てくれて・・、すごく心強い。
他の国の神官さんも手伝いに来てくれるらしい。
そっか・・それだけ大変なんだ。
マルクさんは、心配そうに私達を見送る。
「どうかご無事でお戻り下さい」
「はい!必ずヴィオを連れて帰りますね!」
「僕がキサを一緒に連れて帰るの!!」
うーん・・、締まらない・・。まぁ、いっか、私達らしいといえば私達らしい。笑顔で手を振ると、マルクさんはいつもの人の良さそうな顔で微笑みながら手を振ってくれた。
そうして、ロズとダズの県境に到着すると、急に背筋がゾクゾクとした。
辺りを見ると、砂漠のような場所で所々岩が大きく突き出ている・・。薄い茶色の地面が一面に広がる場所なんだけど・・、魔の者・・ではないけれど、それに近い存在なのだろう。
黒いもやがそこかしこで、かさこそと蠢いている。
ターシェさんは、それを忌々しそうに見る。
「まったく!!こんなになるまで反省もしないから!!」
「ま、まぁまぁ・・」
思わず宥めてしまう私・・。
でも、こんなにいても反省もしなかったのか・・。それはある意味すごいと思う。
レオルさんが遠くを見ると、私達もそっちを見る。
砂漠の真ん中に大きな石の門!??
黒い門の周りには何やら黒いもやが、纏わり付いていて・・、それを見ただけでぞっとする。
「あれが・・、魔の門・・ですか?」
「恐らくそうだろう。歴史書で読んだが、そっくりだ」
ごくっと思わず唾を飲み込むと、ヴィオが私の手をぎゅっと握る。
「一緒にいるから、怖くないからね!」
10歳くらいのヴィオに言われると、思いっきり和んでしまう・・。
思わず力が抜けて、ふにゃっと笑ってしまう。
「はい、お願いしますね」
「キサ、全然緊張してないでしょ?」
「してますよ!小さいヴィオが和むんですよ!」
「和むんじゃなくて、頼もしいって思って!!」
小さいヴィオに対しては、無理かなぁ〜〜。
スメラタさんはちょっと笑って、私たちを見る。
「末っ子がこれだけ肝が据わっていると、年長者は負けていられないな。行くぞ!」
そういうと、サッと空を飛んでいくので、皆も追いかけるように飛んでいく。うう・・、私達、相当緊張感が欠けてるって事ですからね?ヴィオ!そう思ってヴィオを見ると、ちょっと面白そうに笑って、ぎゅっと私の手を握ると同じように空を飛んでいく。
ベルナさんの手をニケさんも握って飛んでいるけど、ベルナさんもヴィオも飛べるの!???
「と、飛んでる!!」
「気持ちいいでしょ?今度一緒に空の旅もしようね!」
そ、そんな場合じゃない!!飛べたの、初めて知ったんですけど〜〜!!ギュウッとヴィオの手を握ると嬉しそうに尻尾を振るけど、そんな場合じゃない〜〜〜!!
魔の門へ近付いていくと、魔の者が姿を現す!
それぞれの力に合わせて、光を放つけど、やっぱり強い!!
「キサ、金色の力をちょっと頂戴ね」
「はい!」
目を瞑って、ヴィオに力が流れていくようにイメージすると、私の手からヴィオの手に金色の力が溢れてくる。
それぞれの力に合わせる事なく、金色の力は魔の者を片っ端から消してしまって、これには他の幻獣さんたちも驚いた顔をする。
「想像以上だな・・」
スメラタさんが側へ飛んできて、そう話すけど・・
いよいよ目の前に迫って来た魔の門を見て、私はドキドキする。あんな大きな門を消すなんてできるの!??