幻獣様と世界と乙女。4
5歳になったヴィオは、一時的に大きな力を使ったから小さくなってしまったのだろうとスメラタさんが話す。
レオルさんは、小さくなったヴィオを可愛がりたいのか、そわそわしながらヴィオの頭を撫でていいか聞くと、ヴィオは大変複雑な顔で頷いた。え、偉いね‥。
嬉しそうに微笑むレオルさんは、ヴィオの頭を撫でつつ、
「しかし、先ほどの金色の力は‥伝承で聞いた事はあるけれど‥」
「伝承?」
ヴィオは未だ複雑そうな顔をしながら、レオルさんを見上げる。
「大昔の伝承で、魔の力に対して「清めの力」という金色の光をもって、追い払ったという話があるんだ」
清めの力・・。
確かに金色の光だったな。
スメラタさんは、倒れている木の上にどかっと座り、思い出すように呟く。
「‥隠されていた神殿の地下にあった石板に、金色の力が書いてあった」
「「え・・!!」」
私とヴィオの声が重なる。
スメラタさんは静かに私を見上げる。
「ただ、そこに異世界の乙女については書かれていなかったが、もしかしたら清めの力には、キサが関係しているんだと思う」
「私の力‥」
「幻獣の俺たちだけでは、魔の穴は塞ぐ事は出来ても消すまでには時間がかかる。それを今回、あっという間に消したんだ‥」
そうなの??
だから、そんなに驚いていたんだ!
「‥とりあえず、俺は神殿に急ぎ戻って、もう少し解読してみる。シルヴィオも今日は戻った方がいいだろう。力はそんなに減ってはいないが、初めて使った力が大きいので体には負担があったのだろう」
「‥はい、分かりました」
「‥‥もう帰るのか‥??」
レオルさん小さなヴィオを帰したくないのか、しゅんとした顔をするので、思わず笑ってしまった‥。
ヴィオにジトッと睨まれた気がするけど、ちょっと気がつかなったフリをした。ま、まぁまぁ、末っ子ですから、可愛がられて下さいな。
そうして、今回はそれぞれ現地で解散だ。
残念そうなレオルさんに、体が戻ったら近く遊びに行くとヴィオが約束すると、嬉しそうに微笑むレオルさん。体は大きいけど、小さい子とお菓子作りが好きとか…、可愛いすぎる。
神殿に戻って、マルクさんが中庭まで迎えに来てくれたけど、
小さなヴィオを見て、倒れそうになった!
だ、大丈夫だから!!…多分。
部屋に戻って、ヴィオはベッドに腰掛ける。
小さな足をパタパタと揺らしながら、じっと何かを考えているようだ。
「ヴィオ?」
「あ、ごめんね、考え事してた‥」
仕事のことかな?
隣に座ると、ヴィオが私に頭をもたれ掛ける。
「疲れちゃいましたか?」
「うーん、なんでこんなに魔の力が動いているのかな?って思って‥」
「ああ、そうですね‥。なんだか多く動いているって言ってましたね」
「早く原因を知りたいなって思ったの‥。キサにも安心してここにいて欲しいし」
…ヴィオの優しさに思わず胸がじんと温まる。
いつだって、私を心配してくれるヴィオ。私はヴィオの小さな頭の上にそっと私の顔を寄せる。
「‥ありがとうございます。大丈夫、ヴィオがいてくれるんだから、何も心配してませんよ」
「うん!!絶対キサを守るからね!!」
嬉しそうに私に顔をすり寄せるヴィオ。
か、可愛い〜〜!!!
やっぱり小さいヴィオは可愛いなぁ〜〜!!
思わずでれっとしてしまうけど、小さいヴィオの可愛さは大きい時とはまた違って可愛い。
キュッと抱きしめると、ヴィオが私を見上げて‥、
「キサは、僕が小さい時の方が触れてくるよね?」
「ふ、触れ!!???」
「小さい時の方が、いっぱい甘やかしてくれるし」
「あ、甘やかしてます???」
「…大きい時の僕にも、同じようにして欲しいから、戻ったら同じようにしてね!」
ええ〜〜〜、多分無理かなぁ。
私は誤魔化すように、ちょっと目を逸らすとヴィオは私の腰にぎゅっと抱きついて「約束しないと離さない!!」っていうんだけど、小さいヴィオには抵抗できない〜〜〜!!結局、約束したけどいつ戻るんだろう‥。