幻獣様と世界と乙女。3
黒い虎のような「魔の者」の出現に、ヴィオが急いで私を後ろに隠して、魔法で魔の者に向けて光を放つ。
けど、早い!!
動きが早い!!光の球のようなものをひょいひょいと躱してしまう!
「シルヴィオ!そいつは「土」だ!!」
スメラタさんの声に私とヴィオが振り返る。
あ、そうだ、同じ力じゃないとやっつけるの難しいんだった。ヴィオは私をサッと抱きかかえると、飛び上がってスメラタさんの方へ着地するんだけど、び、びっくりするんですけど〜!?
慌ててレオルさんの方へ振り返ると、レオルさんが手を挙げると、虎を囲うように足元の土が壁のように盛り上がり、閉じ込めた!
『浄化!!!』
土の壁が、虎を押し潰すように大きな丸い土の塊になる。
「グゥアアアア!!!!」って、中から声がするけど、レオルさんが手をギュッと握ると、宙に浮いた土の塊は圧縮されるように小さくなり、消えてしまった!!
き、消えた?!
思わず周囲を探したけど、じょ、浄化したの???
「まだだ!!魔の穴が閉じないと、「魔の者」が出てくる!!」
スメラタさんの声に、ハッとしてヴィオが魔の穴に向けて、手を向けて淡い光を出す。
魔の穴から、確かに黒いもやが出てこようとしてる!
大きな鉤爪が穴をこじ開けようとしているのを見て、思わずぞくりとする。
レオルさんと、スメラタさん、ベルナさんも手から淡い光を出して、滝の真ん中にある真っ黒な穴を閉じようとしているのか、光がその穴の周りを埋めるかの如く、覆い被さっていく。
ヴィオも急いで光を手から出して、穴を埋めようとしているけど、苦しそうだ。咄嗟にヴィオの手を握った私は、ヴィオの力がどんどん減っていくのに気が付く。
まずい!
急いでヴィオの握っている手に力を流し込む。
ヴィオはちょっと驚いた顔をして私を見るけど、すぐに小さく微笑む。
力を注いでも、グングン力が減っていくなんて‥、レオルさんやスメラタさんは大丈夫なのかな?私は心配で周囲を見ていると、二人も苦しそうな顔をしている。
早く、早く魔の穴が埋まらないかな。
私も焦ってしまう。
と、ヴィオの手を握っていると、私の胸の奥からまた違う力が湧いてくるのを感じる。
「「え‥?」」
私とヴィオの声が重なって、繋いだ手と手を見ると、金色の光がお互いの手から溢れてくる。
その途端、ギュッと私の中からヴィオの手に力が流れていくのを感じて、今まで淡い光を出していたヴィオの手から金色の光が魔の穴に向けて勢いよくぶつかると、魔の穴が蒸発するように消えた。
「消えた・・!?」
レオルさんと、スメラタさん、ベルナさんが目を見開いて驚いている。
え?普通は消えないの??
私はヴィオを見て、聞こうとすると‥。
ポン!!!
と、可愛い音を立てて、ヴィオが5歳くらいの姿になる。
え!??小さくなった??
私もヴィオも驚いて顔を見合わせる。
「え、えええ?!な、なんで?キサの力??」
「私じゃありませんよ!え、でも、なんでいきなり小さく??」
二人で慌てていると、ちょっと驚いた顔をしながらスメラタさんがこちらへやってくる。
「今の力は何だ?初めて見たんだが‥」
「え!?スメラタさんが初めて見る!??」
ヴィオも私もよく分からないんですけど‥。
ベルナさんが、少し考えて私を見る。
「キサ様、シルヴィオ様に力を送っておりましたが、その時に何か変化は?」
「あ、そういえば‥、早く穴が埋まらないかなって思っていたら、いつもと違う力が湧いてくる感覚がありました」
レオルさんや、スメラタさんが一斉に私を見る。
え、な、なんでしょう??
「‥異世界の乙女の力かもしれないな」
「まだ未知数だからな‥」
二人は納得した顔をしているけど、ヴィオは小さくなった体を見て、
「‥やっとキサと夫婦になれたのに‥」
と、小さくこぼしている。
うん、今はちょっと慎みましょう、ヴィオ。