幻獣様は大事にしたい。3
次の日の朝早く、ふっと目が覚めるとヴィオが静かに部屋を出て神殿へお祈り行く姿が見えた。
起こしてくれたっていいのに‥。
とはいえ、昨日の今日だしなぁ。
「う〜〜〜‥、なんかタイミングが難しい‥」
昨日なんて私が寝てから帰ってきたみたいだし‥。
ヴィオ、そんなに怒っちゃったのかな。
っていうか、こんな風に喧嘩した事がないからどう接すればいいんだろ‥。ああ〜〜、年上なのに全然ダメダメだなぁ‥私。
よし!!時間が伸びれば伸びるほど気まずくなるし、今日こそ絶対謝ろう!
お祈りが終わったら、すぐ部屋に戻って来るだろうし、いや‥もしかしたら戻ってこないかもしれないから、中庭で待ち伏せしよう!
扉をバンと開けると、すぐそばに警護している騎士さんが立っていて、驚いた顔をしている。
「き、キサ様!?」
「あの‥、な、中庭に行きたいんですけど‥」
「え、で、ですが‥、シルヴィオ様から戻るまで外へ出さないようにと言われておりまして‥」
ええ〜〜〜〜!??
そ、そんなに怒ってるの??
でも、ここで私が出たらかえって騎士さんが怒られちゃうかもしれないし‥。
「‥‥分かりました」
静かに扉を閉めて、テラスを見る。
‥テラスがあった!
ここから中庭にこっそり出るくらいなら‥いいよね?ちょっとお花を摘んでいた!って事でいこう。そう思って、カゴを持って、そっとテラスの大きなガラス戸を開けて外へ一歩行こうとすると‥、
ドン!!!
と、中庭からすごい音がする!!?
こ、これって‥、幻獣さんが来たのかな?アイムさんか?ターシェさんか??そう思って、中庭の方へ行くと、
「ああ、キサ‥、久しぶりだな」
「れ、レオルさん!!!」
ええーー!!真面目!って感じのレオルさんが守り月でないのに来るなんて、ちょっと意外だな!と思いつつも、久しぶりに会えて嬉しい。
「多分、ヴィオが神殿のお祈りが終わる頃なので、ひとまず食堂に‥」
そう話していると、ベルナさんがマルクさんと一緒にやってくる。
レオルさんはちょっと済まなさそうに二人を見て、
「急にすまないな。実はスメラタに頼まれて持ってきたものがあるんだ」
「スメラタさんから???」
レオルさんは、よく見ると籠を持っていて‥
その籠の蓋を取ると、植木鉢が4つほど入っている。植物を持ってきたの?
レオルさんは、私やベルナさん、マルクさんに鉢を見せて説明してくれた。
「スメラタが、ロズやダズだけでなく他の地を浄化するのにも使えるかと、研究していてな‥、種は「植物」のスメラタが、「土」は私の力‥、シルヴィオには「水」の力を貸して貰いたくてな‥」
「なるほど‥、確かに植物での浄化も効果的でしょうね」
ベルナさんは感心したように鉢を見て、ちょっとワクワクした顔をしている。横で鉢を同じく見ているマルクさんは感激して、すでにウルウルしてる。は、早いような?!
レオルさんは、ちょっと笑いながら‥
「まぁ、まだ実験の段階だが。シルヴィオに水を与えて欲しくてな」
「なるほど‥」
「「レオルさん!!」」
と、噂のヴィオの声がして振り返る。
瞬間、私とヴィオの目が合ったけど、ふっと視線を逸らされた。
そ、逸らされた!???
そっちに驚いて、私は思わず目を丸くする。
いつも私を見たら、嬉しそうに笑うヴィオが目を逸らした!??すぐ側にいたレオルさんも、私とヴィオの微妙な空気を感じ取ったのか、なんだか心配そうだ。
「‥レオルさん、お久しぶりです」
「ああ、守り月‥ご苦労様。アイムの所でもすでに活躍したって?」
サラッと、何事もなかったかのようにレオルさんは対応してくれて助かった。助かったけど‥、私はヴィオの態度に思ったよりもショックを受けていて‥、なんとか笑顔でいようとするのに精一杯だった。