幻獣様とお仕事。12
細長い道を走っていくけど、ゴツゴツしていて怖い!
でも後ろから迫ってくる黒いもやは、もっと怖い!!
「キサ様、もう少しで広い場所です!!」
ベルナさんが私を振り返って声をかけてくれるけど、も、もう怖いし、息が上がりそうです〜〜!!!
黒いもやが、ビチャっと何かを投げてきて、私の足元に何か落ちる。
走りつつ、ちらっと落ちてきたものを見ると・・黒い液体がグニョグニョと動いて・・、そこから手が出てくる!
「「「わぁああああ!!!」」」
思わず声が出てしまう〜〜!!
ヤダヤダ怖い!!!気持ち悪い〜〜!!!
「キサ様、頑張って・・!!」
ベルナさんが、そう言いつつ・・私の後ろへ魔法だろうか、手を払いのけるように光を放つ。
あ、ありがとうございます〜〜!!!
そう思った途端、黒いもやがドロッと溶けた。
と、溶けた??!!
両側の道へと流れ落ちたかと思ったら・・、
黒いもやは水が流れる道から這い上がって、私達の目の前に出てきた!!
「わ、わぁあああ!!」
ベルナさんが私を庇うけど・・、黒いもやは波のように体を持ち上げて、覆い被さろうとする!!
「「キサ!!ベルナ!!!」」
ゴォッと炎が黒いもやを吹き飛ばして、その瞬間私とベルナさんは何かに思い切り引っ張られて、広い場所へ降ろされる・・。た、助かった??
顔を上げると、白銀に輝く大きな狼になったヴィオが私とベルナさんを見ている。
「すぐに向かったんだけど・・、遅くなってごめん」
「あ、ありがとう・・」
ベルナさんは感動した顔をして・・、
「大きくなられて・・」
ってうるうるしている。い、今はそんな場合ではないような・・。
でも、気持ちは分かるけど・・。
「来るぞ!!」
ニケさんの声がして、黒いもやがアイムさんの炎をものともせずに迫ってくる。え、き、効かないの!??
私が驚いていると、ベルナさんは私を見て・・
「今はアイム様の守り月でないのと、あれは恐らく水の力を持っているのでしょう・・。同じ力でないと効かないのです」
「って、ことは・・ヴィオの力・・?」
私の言葉にベルナさんが頷き・・、ヴィオが体をぶるっと震わせると・・
ヴィオの体が白く、キラキラと光り出す。
『魔の者、眠れ!!!』
そういうと、光の塊がヴィオの頭の上に渦巻くように丸い球体になって、勢いよく黒いもやにぶつかっていく。
瞬間、黒いもやの真ん中に穴が空いたと思ったら・・、
透明な水に一瞬で変化して、ざっと道の両側へ流れていった。
・・お、終わったの・・?
私が呆然としていると、狼の姿から人間の姿にヴィオが戻る。
「ヴィオ、体は大丈夫?!」
慌てて私はヴィオの方へ駆け寄ると、顔が暗い中にいるのに・・青ざめているのがわかる。手を急いで握って、ヴィオの力を見ると・・、この間よりも小さくチカチカしている・・!!
まずい!!
急いで、力がヴィオに流れていくように念じると、私の手が温かくなって・・、ヴィオの体に力が流れていくのが分かる。
「・・キサ・・」
早く・・、流れていけ!
ヴィオの力のチカチカが、ようやく・・落ち着いてきたのか・・ほんわりと灯るようなものに変わっていく。
「もう大丈夫だよ・・」
「でも、まだ力が・・」
「キサの体に負担があっても困るから・・」
じゃあ・・あと少しだけ・・。
そう思って、力を流した途端・・、ふらっと体が傾げる。
「キサ!!!」
ヴィオが慌てて体を支えてくれて、転ばずには済んだ。
済んだけど・・、なんかフラフラする??
「だ、大丈夫・・ちょっと目眩がしただけ・・」
「「それ、大丈夫じゃないから!!」」
ヴィオに怒鳴られて、びっくりして目を丸くすると・・、ハッとした顔をして・・
「もう・・無理しないで・・」
弱々しくヴィオが言うので、思わず頭を撫でてしまった・・。
だ、大丈夫だってば〜・・。