幻獣様とお仕事。11
私とベルナさんがコーレンさんを探しに行く途中、コーレンさんもこちらへ慌てて走り寄ってくる。
「こ、こちらにいましたか・・!アイム様より連絡がきて・・」
私とベルナさんの顔が強張る。
何かあったの?!
コーレンさんは息を整えてから・・、
「ロズかダズの穢れが、こちらへ来ていたようで・・「呪い」に変化してしまったようなんです」
「呪いに変化・・??」
穢れは分かるけど・・、呪いに変化ってどういう意味?
ベルナさんを見ると、
「穢れは本来清めればいいのですが、負の感情や、よくない気が溜まってしまうと「呪い」になるんです。そうなると、今度は魔の者になって「退治」しなければいけないんです」
「た、退治・・!?」
私が驚いていると、コーレンさんが頷いて・・
「魔の者になるほどの事は滅多になかったのですが・・、シルヴィオ様は初めての事ですし、力の加減も難しいだろうという事で、アイム様がキサ様にも来て頂いた方がいいと・・」
「分かりました!すぐ行きます!!」
ベルナさんは少し心配そうだけど、ヴィオを助けられるなら側にいたほうがいいだろう。ベルナさんにお願いすると、転移魔法ですぐ移動する事になった。
「キサ様、着きました」
転移魔法で、目をぎゅっと瞑っていた私がぱちっと目を開けると、辺りは温泉が湧いているのか嗅ぎ慣れた硫黄の匂いがする。ゴツゴツとした岩場に、いくつか池があって、湯気が出ている。温泉・・かな?
ベルナさんが、「あちらです」と指差した方を見ると、
林の間に、洞窟の入り口らしきものが見える。
「あの中に入って行くんですね」
「はい、ですがお気をつけ下さい」
真剣な顔をするベルナさんに頷いて、池に落ちないように岩場を歩いて、洞窟へと入っていく。
観光として人が入る事もあるらしく、洞窟の中は道が整備されていて、ほんわりと明かりが灯っている。よく見ると、星のかけらが埋まってる!そ、そうか・・、明かりがわりになるもんね。
ロープが落下防止の為に貼ってあるので、それを掴みつつベルナさんと奥へ歩いていく。
「・・おそらく、問題の場所でアイム様が待っていると思われるんですが・・」
「結構、奥なの?」
「そうですね・・、温水がうまく流れないとは仰っていましたし・・、地下深くだと思うので・・」
そんな話をしていると、洞窟の開けた場所へたどり着く。
最初はトンネルくらいだったのに、天井がずっと高い。星のかけらの明かりがあっても、天井までは照らせないけど足元はしっかり見えるのでホッとした。
少し細長い道の先に、奥にまた小さな入り口のようなものが見える。
あそこに行けばいいのかな?
足元は幅が1mくらいしかないので、ロープをしっかり掴む。
両側に水が流れていて・・、足元を照らす星のかけらの明かりが頼りだ。
「・・道がいきなり狭いんですね・・」
「もう少し行くと広くなるようです、気をつけて・・」
ベルナさんが、振り返ってそう言おうとして言葉を止める。
・・んん?何か後ろにいたの??
そっと私も後ろを見ると、
・・・・いる!!!
何か・・真っ黒いものがいる!!!
黒いもやのようなものなのに、ビチャ・・ビチャ・・と、液体の落ちる音をさせて、こちらをじっと見ている。
「・・キサ様、こちらへ・・ゆっくりでいいので来て下さい」
「は、はい・・」
ベルナさんが静かな声で、私の手を掴み・・
私はそっとベルナさんの方へと歩いていく。
と・・、黒いもやが私をまるでジッと見るかのように、ユラユラ動いて・・
『乙女・・、乙女いる・・』
低い、聞いたことのないような音なのに、言葉に聞こえる。
ベルナさんには、音にしか聞こえなかったらしい・・、訝しげな顔をするだけだ。でも、私にはハッキリと言葉に聞こえた。
『乙女・・、手に入れる・・』
不穏な事を言ったよ!??
これはまずい!!
私はベルナさんを見て、「逃げて!!」と叫ぶとベルナさんは私の手を掴みながら、細い道を駆け出していく!!黒いもやは、ビチャビチャと音を立てて、追いかけてくる!!!
っていうか、な、なんで乙女って知ってるの〜〜〜!!??