幻獣様とお仕事。8
お付き合いしている私とヴィオのお仕事とはいえ、初のお泊まり旅行。
意識してしまってたけど、現地に来たら・・思いのほか良い場所で、すっかりそんな考えが飛んでいた・・。だって温泉なんて、もうきっと入れないと思ってたし・・。
「うう〜〜〜最高だ〜〜〜」
温泉掛け流し!
外も見えて、最高だ!
お風呂から出たら、果物ジュースを飲もう!
すっかり長湯して、お風呂から出ると椅子に座って本を読んでいたヴィオがホッとした顔をする。
「どうかしましたか?」
「いつもよりお風呂長いから・・大丈夫かなって」
「あ、すみません。つい、気持ち良くて・・」
日本人なんで浸かっていたくなってしまうんです・・。温泉に。
ヴィオはちょっと笑って、
「キサ、温泉本当に好きなんだね。他には何が好きだったの?」
「お茶をするのも、本を読むのも、あ、音楽を聴くのも好きでした!」
「じゃあ、こっちでも一緒に好きだった事を一緒に楽しもうね」
「ヴィオ・・」
や、優しいなぁ!!
さっき私の事、知らないって気にしてくれてたもんね・・。
気遣ってくれる優しさが嬉しくて、そっとヴィオの頭を撫でてみると、ちょっとピクッとヴィオの耳が揺れたけど・・そのまま撫でさせてくれた。
「き、キサ・・、あ、あの・・」
「うん?あ、そうだ一緒に頂いた果物ジュース飲みます?」
「う、うん・・」
箱から薄い淡いピンク色の果物ジュースの瓶を出して、グラスに注ぎヴィオに手渡す。
早速一口飲んでみると・・甘すぎなくて、美味しい〜〜!
リンゴと桃を合わせたような味に気を良くして飲んでたけど・・なんか、これほかほかする?
「・・これ、お酒かも?」
あ、待ってヴィオ!もしかして初めてのお酒じゃない??
ヴィオを見ると・・、目がトロッとしてる。
ま、まずい!!!明日は仕事なのに!
「ヴィオ!大丈夫??あ、水を飲もう!!」
「・・・キサ、大丈夫だよ?」
ヴィオは立ち上がって、水を取りに行こうとする私を腕の中に抱きしめる。
・・あれ?
なぜ抱きしめられる??
「キサ・・大好き」
ヴィオがとろんとした目つきで微笑みながら、私の頬を撫でるけど・・。
こ、これはまずいのでは!?
「ヴィオ!完全に酔ってますね?」
「酔ってないよ?」
「・・古今東西、酔っ払いは皆そう言います・・」
ふふ・・っと面白そうに私を見て、笑うヴィオさん・・。
「と、とりあえず・・立ってるのも危ないし、ベッドに腰掛けて?ね?」
「うん・・、僕の奥さん優しいなぁ・・」
「お、奥さんって!!」
思わず顔を赤らめつつ、何とかヴィオをベッドの方へと促して座らせる。よし!あとは水を持ってこよう。
急いでグラスに水を入れて、ベッドへ持っていこうと振り返ると、ヴィオはベッドの上にくったりと寝そべってる。嗚呼、完全に酔い潰れてる・・。すみません・・神様、幻獣様を酔っ払いにしてしまいました・・。
「ヴィオ・・お水、ちょっとだけでも飲んでね?」
「うん・・ありがとぉ・・」
すっかりふにゃふにゃである。
でも、なんか小さい頃に甘えてたヴィオみたいで可愛い・・。
つい微笑ましい気持ちで、体を少し起こして水を飲んでいるヴィオを見ると・・、ジトッと私を見て、
「小さい時みたいって思ってるでしょ・・」
バレた。
ちょっと視線を逸らすと・・
「僕と結婚してるのに・・、キサはいつまでも僕を子供扱いだ・・」
拗ねた顔でヴィオがそう言って、私にグラスを渡すとまたパタッとベッドに寝転がる。
・・って、け、結婚してる???
思わずふにゃふにゃのヴィオを見て、確認する。
まさかヴィオの夢、じゃないよね?もう一度確認すべくジッとヴィオを見つめると、嬉しそうに笑った。いや、そんな場合じゃなくてね?
「あの、本当にもう結婚・・してたんです・・か?」
「そうだよ〜、でも、キサは僕を見て照れちゃうから・・待ってるの」
ヴィオは、とろんとした目で私を愛おしそうに見つめる。
「僕の事、全部好きになって・・僕を欲しいなって思って欲しいの、待ってるの・・・」
瞬間、私の顔が真っ赤になった。
「待ってるね・・」と、呟いてヴィオは静かに目を瞑って、眠ってしまった。
私はというとヴィオと一緒になってから、みんなが口にしていた事が全部辻褄が合うことに気付いて・・、毛布を掛けたヴィオの横で、明日から一体どんな顔をすればいいのかと悩んだ。
大いに悩んで・・、とりあえず眠ることにした・・。