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オッサンフェアリーと私  作者: さむぺん
第1章 妖精界
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熱い展開、走れオッサン

 男の妖精の前に1枚の紙を持った妖怪ちゃんが飛んで行き、紙を落とす。

 お兄さんは不思議そうにその紙を拾う。


「あー!すいませぇぇぇん。それ僕の紙ー!」


 そこにすかさずオッサンが登場。

 これ絶対私の方が良かっただろ。


「えっ、あ、あぁ。どうぞ」

「ありがとーう!」


 ほら見ろ、お兄さんドン引きじゃないか。

 完全に腰が引けたお兄さんと、オッサンが謎に見つめ合う空間はまさに地獄。

 大丈夫か、本気で通報されそうだけど。

 ここからオッサンどうやってドアを出させるんだろう。


「あー、ねぇ君?ドア出してくれたりする?」


 えげつないレベルの直球勝負に出た。

 さすがに怪しすぎる。私なら逃げる。

 お兄さんはじっとオッサンを見つめたまま微動だにしない。怖いんだろうな。


「あっ、いや違うよ?」


 何が違うというのか。あのオッサンが珍しくパニックに陥っている。

 お兄さんはじわじわと後ずさりをし始めている。まずい、逃げられる。

 ここで私が出て行ってもどうしようも出来ない。

 やはり様子見だ。

 妖怪ちゃんも何も出来ないし、頑張ってオッサン。


「落ち着いて、整理しよう。まず僕は君にドアを出して欲しいの。別に僕は使わないんだけど」


 落ち着くべきなのはお前だ。

 お兄さんがゆっくりと体の向きを変え、思い切り走り出した。


「いやぁぁぁぁぁぁ!待ってぇぇぇぇぇぇ!」


 その後ろを叫びながら追いかけるオッサン。

 私と妖怪ちゃんはただ見守るしかなかった。

 しかしさすがにはぐれると不味いので、追いかけることに。


「お兄さぁぁぁぁぁぁぁん、大丈夫だからぁぁぁぁぁぁぁ!怪しくないからぁぁぁぁぁぁぁ」

「怪しさしかねぇよ!着いてくんなよ!」


 全力で走り合う男2人。そういえばさっきオッサンが「男同志、熱い展開になりそうじゃん?」って言ってたけど、そういう事か。

 目の前で繰り広げられる展開はオッサンの狙い通りという事か。


「あの……止めなくていいんですか?」

「妖怪ちゃん、逆に聞きますけど、アレをどうやって止めるんですか?」

「……わかりません」


 どちらかの体力が尽きるまで、走り続けるのだろう。そう思っていたが、終わりは早かった。

 お兄さんがいきなり立ち止まり、振り返ったのだ。

 そして、止まれず走ってくるオッサンへ、


「着いてくんなって言ってんだろぉぉ!」


 と叫び、熱い拳を1発。オッサンの腹部へ決め込んだのである。

 オッサンは聞くに堪えない声を発し、倒れた。

 お兄さんはそれを確認し、走り去った。

 この作戦、失敗である。


「大丈夫ですか、生きてますか」

「無理……多分死ぬ……内臓が多分無いぞう……」

「元気そうですね」


 せっかく見つけた妖精だったのに、しかもまぁまぁな距離を走ったせいで道も分からない。

 さっきまでは大通りを歩いていたが、完全に中道に入ってしまっていたようだ。


「通報されてた方がまだマシだったかもですね」


 妖怪ちゃんが呟く。確かにそうかもしれない。


「熱い展開でしたね」

「熱い拳だったよ……凄く」

「で、どうしてくれるんですかこの展開」

「労わってくれても良いんだよ?」


 オッサンはゆっくりと立ち上がり、ため息をついた。コイツ、自分に酔っている。

 そのモードは是非とも成功させてから入ってくれ。


「次は私がやりますからね」

「任せた……相棒……」

「人違いでは?」


 妖怪ちゃんの案、“拾ってもらった流れ作戦”はかなり使える。漫画でも多く使われる理由がわかる。

 我々の失敗した点はオッサンにやらせた事だ。


 次こそ、必ずドアを出させてやる。

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