04 お風呂2
「へ?」
突然のことに間抜けな返事を返してしまう。
「体だよ、体。当たり前だろう?髪を洗ったら次は体に決まってるじゃないかい?」
「いや、普通髪から先に洗うから、てっきり体は洗わないのかと・・・」
どうにか洗わない方向にもっていこうとするが、そんな急に理由を思いつくわけもなく、つい適当なことを言ってしまう。
「何を言っているんだい?別に髪から洗う人だっているだろう。ほら洗った洗った、いつまでも外にいると風邪をひいてしまうよ。」
当然、ユメから反論が来る。しかも髪を洗い終えたからかこちらを振り向きながらである。
「わかった、わかった!とりあえず背中洗うから向こう向いててくれ」
やばい!と思い即座に承諾する。さすがにこの状況はばれたくない。どうにかうまく立ち回るしかないだろう。
「はーい♪」
先ほどの髪を洗うほどではないが軽く上機嫌である。体を洗うこともよほど大変だったのだろう。
首から腰にかけてハンドタオルで洗っていく。実際に触ってみると引き締まった体をしている。あまり筋肉質なかんじではなく、テレビとかで見ていた長距離選手みたいな感じだ。
「日頃から鍛えてたりするのか?」
「うーん、そうだね。一応体力つけたりとかはしてるかな。神器をつけている間は身体能力があがっているら戦闘とかはどうにかなるけど、今回みたいな感じで色々遠出することが多いから途中でへばってしまわないようにはしてるかな。ナツマはあまり鍛えてなさそうな感じだけど向こうの世界では何をしてたの?」
「朝から晩まで事務作業だよ。あまり体を動かしてないからそんなに筋肉はついてない。なんなら、今からユメと戦ったら負けるんじゃないかな」
「それはどうかな~。特に戦闘訓練とかやっているわけじゃないから戦うとなると私あんまり強くないし。」
ほんとかよ。さっきの俺を引き留めた動きはどういうことだよ。
「さっき獣と戦っていた時は剣とか槍とか斧とか使ってたけど?」
「使い方よくわからないから適当に使ってるだけだよ。剣はとりあえず刃がついている方で切って、槍は突き刺し、斧は振り下す!みたいな」
思ったより適当だったな、動きがよかったせいか様々な武器をマスターしているように見えたがそういうわけではなさそうだ。
「後、壊れても神器の中に戻せばすぐに直るし、別にいいかなって。」
「羽織の中ってどうなっているんだ?武器を持っているわけじゃないんだろう?」
「なんか武器を想像すると勝手に出てくるって感じ。戻すときは武器が近くにある状態で、戻れーって念じると戻るよ」
なんか仕掛けがあるのかと思ったが、見たまんまだったらしい。
「その三種類以外にも武器はあるのか?銃とか弓とか」
「出せるには出せるけど使い方がよくわからないし、当たんないんだよね。ゼロ距離とかで打てば当たるけど、それなら剣や斧でいいやって感じ」
そういえば、銃とか弓って実際に当てるのは見た目よりも難しいということを聞いたことがある。しかも動く敵となればなおさおさらだろう。
「ていうか・・・・」
「ん?」
「さっきから背中ばかり洗っているけどそろそろ別のところをあらってくれるかな・・・?」
さすがにばれてたのか、少し怒り気味である。ただ前の方を洗うとなるとさすがに・・・
「早く洗ってくれよ!私もうそろそろお湯に浸かり・・・」
と、急にこちらを完全に振り返る。まずいと思ったが振り返るスピードがはやくまったく動けなかった。
「ば、ばか。急にこちらを振り向く・・・」
「・・・あ。」
さっきまでばれてなかったが、とうとう見られてしまう。そう、自分の腰に巻いているハンドタオルに
三角テントが張られていることに
「・・・えっと」
「何も言わないでくれ。今から前の方も洗うから。」
もう、やけである。とっとと洗って湯船につかりに行こう。
「すまない。私も配慮が足らなかった・・・。まさかこんな醜い体に反応するとは思いもよらなくてね」
「醜かねぇよ。」
「え?」
「別に醜かねぇだろ。ただ腕が無いだけで、普通の女の子となんりゃ変わんねぇよ。」
「それは君だけじゃないのかい?普通は気味悪がったりするもんだと思うのだが。」
「んなわけねぇだろ、別に腕が無いくらいそれほど珍しいわけではないし、気にしすぎだろう。なんなら俺らの国では欠損した方たちが集まってやっているバーなんてのもあるくらいだしな。」
「そうなの?・・・。そっちの国、いってみたいなぁ。」
「ん?来ればいいじゃないか?転移魔法でこっちからいけるんだろ?」
「それができるのは転移者だけ。元々こっちの世界で生まれてきた人や"異世界転生者"はそっちの世界にいけないんだよ。しかもそっちに戻ったら記憶は消されてしまうらしいし。」
また、新しい単語が出てきたよ。今度は転生者ときたか。
「なあ、転生者って・・・」
「へっくしゅ!」
ユメからくしゃみが出てくる。さすがに外に出すぎたか。
「あぁ、悪い悪い。とりあえず、とっとと流して湯船につかろうか。」
「そうだね。まったく、ナツマがもう少しはやく体を洗ってくれたらよかったのに。」
「しょうがねえだろう。ばれないようにするにはあれしかなかったんだよ。・・・へっくしゅ!」
「・・・とりあえず入ってからにしようか。」