003
そういえば、この作品は基本、午後に更新する予定です。
明日は二つ更新する予定ですが、それも午後からの更新になります。
別にまだ書いていないわけではなく、気分でそうしているだけです。ホントだよ。
ミラは不思議に思うことがたくさんあった。
ただし、それをすべて挙げていくとキリがないので、ここでは二つだけ紹介しておくことにしよう。
一つは、自称26歳と名乗る隈の深い少年、ウェリックの走る速さが異様に速かったこと。
確かに彼はあの悪い(女性に弱いのはちょっとおかしいのだが)魔法使いを一撃で倒した。だから、彼が彼女よりも強いことをミラは分かっていた。
ただ、まさかこんなに走るのが速いとは思っていなかった。少し油断すると、こんな深い森の中ですぐに迷子になってしまうだろう。
もう一つは、今、まさに深い森の中を走っていることだ。
普通、ギルドはそれなりに大きい町にあるものだ。
彼女が住んでいた村はあまりにも辺境の方にあるので、そんなギルドは無かった。そのため、彼女の村から十日ほど歩いた町にあったギルドに入ったくらいだ。
なのに、彼は人気のない森の奥を突き進んでいたのだ。
彼は彼女のギルドよりも自分のギルドの方が近いと言った。しかし、どう考えても、こんな森奥深くにギルドなんてあるはずがない。
——おかしい。おかしすぎる。こんなところに住むなんてそれこそ、隠遁生活を送る魔法使いか、盗賊、あるいはさっきの舌の長い変態さんが所属しているような悪い組織のどちらかに決まっている。
——ひょっとして、私にいやらしいことをしようと思って、こんな森奥深くに来たの? 見た目は幼いのに、なんてことを考えるの? まぁ、26歳なら、そんなこと考えるか……。
そう思っていた彼女はさっきからずっと彼を訝しげな眼で見ていた。
「さっきから、何じろじろ見ているんだよ? その目が気持ち悪くてたまんないんだよ」
彼女に見られていることに気づいたのか、ウェリックはそう言った。
「ここって、どこなんですか? どこからどう見ても建物の一つもないじゃないですか?」
「てめぇのギルドよりも俺のギルドの方が近かったから、連れて行ってやってんのに何文句言ってんだよ?」
「だからと言って、こんな森の中を走りまわされるとは思っていないですよ!」
「ぶつくさ言っていっていないで走れ! 早くしないと遅れるぞ?」
「もう! こんな目に合うとは思いませんでしたよ!」
彼女はゼェゼェ言いながら、彼の後を必死に追いかけた。
しばらく森の獣道を走り回っていると、開けたところに出た。
そこには古びた教会が建っていた。
ウェリックはその、今にも崩れそうな教会を指さしてこう言った。
「ここだ」
ミラは目を疑った。
彼の指さす教会は窓ガラスにはひびが入っていて、蜘蛛の巣が遠くから見てもあちこちにあるのがよく分かる。すぐにでも崩れそうで、人がいるとは到底思えない場所だった。
「ここ? どう考えても、廃屋じゃないですか!」
ミラはウェリックの襟ぐりを掴んで彼を責め立てた。
ウェリックは嫌そうな顔をしながら、こう答えた。
「だから言ったろ? 俺はしがないギルドの者だって」
「これはしがないじゃなくて潰れかけですよ。こんなところにあるギルドなんて誰も訪ねようとは思いませんし、そもそも、こんな教会に人なんているんですか?」
「それがいるんだよなぁ」
「こんなところに居るのは幽霊かアンデッドのどちらかですよ!」
「おいおい。それはさすがに失礼ってもんだろ? 一応、俺はここのギルドの一員なんだぞ?」
「そんな冗談通用しませんよ! やっぱり、私にいやらしいことをしたくてつれてきたんですね。そして、あの教会の中で私を襲おうと思っているんだ! 絶対にそうだ!」
「てめぇみたいな乳臭いガキなんて俺はごめんだ!」
「乳臭い? そんな顔で私を幼いだなんて言わないでください! あなたの方がもっと幼いですよ!」
「なんだと?」
ウェリックが指をぽきぽき鳴らして、ミラに殴りかかろうとした。
ミラは怖くなって尻もちをついてしまった。
すると、どこからともなく小石が飛んできて、彼の後頭部に当たった。
ミラは——罰が当たった、と思って、プスっと笑ってしまった。
「なんだ? ひょっとして、てめぇがやったのか?」
ウェリックにそう言われたので、ミラは慌てて表情を変えて恭しく答えた。
「やっていませんよ。——っていうか、後ろにいる黒髪の女性は誰なんですか?」
「後ろの女性? ——ヘッ。そんな奴がここに居るわけないだろ? お化け屋敷じゃあるまいし」
ウェリックが振り向くと、そこには長い黒髪で露出の多い服を着た妖艶な女性が立っていた。
「あら? 最近帰ってこないなぁって思ったら、随分若い女の子と仲良くしていたじゃない? ——ひょっとして、愛人でも連れてきたの?」
「……んなわけないだろ! なんで俺がこんな乳臭いガキなんて相手しなくちゃいけないんだよ?」
「問答無用!」
黒髪の女性はウェリックに蹴りを一発くらわせた。
「ゲフー!」




