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夢の舞台はポラリスで  作者: 藤波真夏
Program No,03「色の妖精」
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After the closing2 大好きな場所

After the closing2 大好きな場所

 星川キッズフェスティバルから数日後。

 チームポラリスは全員星川町民会館に集まっていた。まだチームポラリスの公演は終わっていない。まだバラシ作業が残っている。バラシとは舞台で使用した大道具などを撤去する所謂撤退作業である。チームポラリス全員長袖長ズボンに身を包んで作業に徹する。まずは舞台の上にある大道具を撤去する。その後、パンチカーペットの上を掃除をしてゴミを取り除く。そしてゆっくりと巻いていく。突き出たらやり直し。

 声を掛け合いながらパンチカーペットを巻いていく。そして舞台上に残った養生テープを剥がしてゴミ箱へ捨てていく。巻き終わったら舞台上の掃除を行う。ゴミひとつ残さない。環境整備の基本だ。

 そして照明機材の撤収作業も行う。コンセントを外し束ねて、丁寧に機材を運び出す。舞台上に残った忘れ物を確認し終われば舞台の撤収作業が終了する。

 次は観客席の撤去である。後方座席のパイプ椅子はたたんで倉庫へしまう。大量のパイプ椅子は協力して倉庫へどんどん運んでいく。そして前部座席であるマットも持ち上げて外に待機させているトラックへ運んだ。サイズの大きい物はやはり普通の物よりも重い。その時は二人掛かりで運んだ。

 マットを撤去後は下に敷いていた滑り止めを取り除き、床をモップがけして掃除をする。施設を清掃することは演劇をする人間のみならず、人として当然の行いだ。ハジメは必ずやらせると心に決めていた。

 全員が手を抜かずに必死に作業した結果、大会議室にはチームポラリスの痕跡は跡形もなく消えていった。

「チームポラリスの皆さん。お疲れさまでした。次の公演、楽しみにしてます」

「今回は貴重な経験をありがとうございました」

 ハジメが礼をすると六人も実行委員会に頭を下げた。マットは実行委員会の人たちが小学校へ返却してくれることになり、ハジメたちはパンチカーペットなどの使用備品だけが手元に残った。

 トラックが出発したのを見送るとハジメは息を吐き、六人に言った。


「さ、劇場へ帰ろう」


 六人はハジメと一緒に劇場へ向かった。



 劇場に到着する。数日稽古も公演も行っていない劇場がなんだか新鮮な気分になってしまうのは気のせいだろうか。ようやく本拠地に戻ってきたとじわじわと感情が溢れ出る。

 持って帰ってきたパンチカーペットを劇場備品倉庫へ収納して公演は終わりだ。

 ハジメは改めて公演お疲れさま、と声をかけた。初めてを乗り越えた六人の顔つきは最初とは全然違う。本人たちは自覚もなければ変化などないがハジメにははっきりと分かった。最年少の鈴は主演を張ったことで少し頼もしくなった。そして準主演を務めた瑠衣も同様で、腕の怪我も包帯が取れて麻痺も出なくなり完治していた。

「さ! 打ち上げだよ! 鈴、どうする?」

 ハジメが鈴に話を振る。鈴はびっくりした。主演をした鈴に打ち上げのメニューなどを決める権利はある。鈴は少し考えて口を開いた。

「・・・ハンバーグが食べたいです」

「ハンバーグ?」

「七海さんの・・・」

 鈴の言葉に全員の視線が七海へと集中する。七海はキョトンとしているが、鈴の言葉の一部始終は聞いている。七海は笑った。そして鈴の頭をワシャワシャと少し乱暴に撫でる。

「お安い御用よ。ハンバーグぐらい、作ってあげるわ」

 鈴はやった! と喜んだ。早速、レッスンルームでの打ち上げが行われる。そして案の定、七海は男性陣を呼び出して買い出しを頼んだ。必要な材料を言ってそれを男性陣はメモする。

「さ、行って来い! 買ってこないとキャベツオンリーの刑だからね!」

 七海はそう言って男性陣を送り出す。男性陣が買い出しへ言っている間、七海は割烹着を装着し、三角巾を頭につける。そして瑠衣も鈴も同じくエプロンをつけて七海を手伝う。レッスンルームに机を出して椅子を出す。

「おやおや。どうしたんですか?」

 レッスンルームに管理人もやってくる。打ち上げの話をすると管理人も参加することになった。机を拭いて綺麗にする。七海はキッチンにある調味料を確認する。ちょうど男性陣が大量の食材を買って帰ってきた。それをキッチンに運ぶ。

 七海は早速ハンバーグ作りに取り掛かる。鈴は七海と一緒にハンバーグを作る。タマネギを切り、炒めて肉をこねてハンバーグの形に形成していく。一方の瑠衣は温野菜をつくるため、人参やトウモロコシの下ごしらえをしていた。キッチンから聞こえる包丁の音、何かを焼いている音、そして蒸し器の音。その音がレッスンルームに僅かながら聞こえてくる。

「七海さんの手料理、久しぶりですね・・・」

「なんか、うちで母さんのご飯待っているのと同じ気持ちになる」

 夜と大宙は椅子に座ってご飯はまだか、と待っている。弦も実は内心楽しみにしているがなかなか表情にはでない。今日は打ち上げという名の夕飯だ。

 大量の千切りキャベツに温野菜が完成する。そしてハンバーグもこんがりと焦げ目がついて肉汁が溢れる。

「うわあ! 美味しそう!」

「この大きいのは鈴のよ。特別」

「やった!」

 七海は少し大きいハンバーグを鈴のお皿に移す。そして七海特製デミグラスソースも完成した。ご飯も炊き上がり、料理は完成した。レッスンルームに料理が運ばれてくる。美味しいハンバーグの香りに腹の虫が鳴り出す。

「お待ちどうさま! 鈴のリクエスト、七海特製デミグラスハンバーグだよー!」

 待ってましたとばかりに男性陣が集まり出す。レストランに出てもおかしくないほどの見た目だ。瑠衣と鈴が皿を並べていき、ハンバーグの上からデミグラスソースをかけていく。

 みんな思わずおお〜という声が漏れる。

「さ、手を合わせていただきます!」

「いただきます!」

 ハジメや管理人、そして役者六人が箸を持ち、ハンバーグを口の中に頬張る。

「おいしい!」

 鈴が言った。その気持ちはこの場でハンバーグを食べている全員が思っていること。鈴はハンバーグを美味しそうに食べる。七海は少し嬉しい。ここまで美味しそうに食べる人を初めて見たからだ。

「さすが、七海!」

 ハジメも絶賛している。鈴は七海のハンバーグを思う存分に食べた。そして鈴は箸を置いて言った。

「私、演劇がもっと大好きになりました。子供達の笑顔も見れてすごくいい経験になりました。ここは私が一番大好きな場所。これからもよろしくお願いします」

 鈴がそう言うと瑠衣が当たり前でしょ、と言った。

「チームポラリスは宮原さんと管理人さんと私たち六人揃って初めて成立するんだよ。鈴の大好きな場所であり続けるの」

「瑠衣さん」

 また泣きそうになる。鈴は涙をぐっとこらえた。すると七海がハンバーグが冷めてしまうから座りなさい、と促す。再びハンバーグを食べる。すると七海がフライパンを取り出して言った。

「実はハンバーグあと三つ残っているの。おかわり希望者挙手!」

 すると鈴、夜、大宙、ハジメ・・・そしてちゃっかりと弦が手をすっと挙げた。七海は手を挙げたメンバーに争奪じゃんけんをするように言った。全員が七海のハンバーグをもう一個食べたい意欲に燃えている。

「監督。たとえ監督であれ容赦しませんよ」

「大宙。それは僕も同じだよ。大人だけど、手加減一切なしで行くからね」

「なんで私に譲らないんですか? 主演ですよ」

「俺だって食べたんだから! お願い!」

「勝つのは・・・俺だ」

 それぞれが七海のハンバーグが食べたいと燃えている。それを遠くで瑠衣は少し笑いながら見ていた。そしてついにハンバーグ争奪じゃんけんが行われた。

 その結果は---、神のみぞ知る---。

 とにもかくにも劇場ではチームポラリスの元気な声が響いたのだった。




 チームポラリス。

 次に打つ演目は---。


『俺は行きたい。ゴールテープを切った先に』

『僕が見たいのは・・・、虹の向こう側の世界だよ!』



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