After the closing2 祝いの宴
今日更新すればキリがよかったので、今日のうちに更新しちゃいます。最後まで読んでいただければ幸いです。藤波真夏
After the closing2 祝いの宴
『Mysterious adventure〜Dr. Kyle's journey〜』千秋楽の翌日。
チームポラリスの拠点である劇場は閑散としていた。人の気配は一切なかった。劇場のガラス張りの掲示板には公演のポスターが貼りっぱなし。そして、明かりすらも付いていなかった。
逆に七海の実家である、東弁当では賑わいを見せていた。
弁当屋の扉には「本日貸切」の張り紙。
「旗揚げ公演の成功を祝いまして、乾杯!」
ハジメが音頭を取り、チームポラリスのメンバーそれぞれの飲み物で乾杯をしていた。グラスがカランと音を立てる。
今日は東弁当で打ち上げである。
大きなテーブルの上にはいつも弁当の中に添えられているおかずがたくさん皿に盛られていた。全員が我先にと皿に盛られた料理を取り皿に運んで、口の中へ入れていく。
「うまい!」
「東弁当のおかずをこんなに独占していいんですかね?」
「明日、雪降ったりして!」
全員が星川町の出身。東弁当のお弁当のおかず独占状態の今が天国に思える。七海はホールの様子が見える台所で料理を準備していた。そう、七海だけはみんなと一緒に料理を楽しんでいない。むしろ、目の前にある大量の料理は七海が準備したものだ。
その様子にハジメは七海に声をかけた。
「七海! 君は準主役だよ? 一緒に食べようよ」
「気にしなくてもいいわ! ここからみんな見えるし、一応たくさん作ったけど・・・すぐなくなりそうだし」
七海がそう言った。
ハジメがテーブルを見るとたくさんあった料理は先ほどよりも大幅に減っているのが分かった。それにはハジメも大慌て。
「ちょっと! 人の分食べないでよ!」
「宮原さん。『早い者勝ち』って知ってますか? 東弁当のおかず独占状態なんてまたとない機会ですよ?」
瑠衣がそう言った。瑠衣はその流れで取り皿にあった唐揚げを口の中に頬張った。口の中に肉汁が溢れて表情が緩んだ。瑠衣に続いて大宙が割り込んだ。
「突っ込んで行かないとご馳走にありつけない。それが弱肉強食です! ・・・いたっ!」
大宙の頭にゲンコツが落ちる。拳の正体は弦だった。苦笑いをしながら大宙に言った。
「意味を履き違えるな・・・」
大宙はいってえ・・・と頭を押さえた。七海はほらね、と苦笑いをする。七海の手には空っぽの皿がある。それを引き、唐揚げがたくさん入った皿を取り出す。
「これで唐揚げは最後よ。いいね?」
「はーい」
「お前はこいつらの母親か」
「一周回って悪くないかも」
弦が呆れて言うと七海は笑って答えた。七海も割烹着を外し、席に着いた。七海? とハジメが聞くとグラスにジュースを入れた。
「ハジメが参加しなって言うからね。ずっと台所だなんて、ハジメにもみんなにも可哀想だからね」
七海がウィンクをする。改めて全員揃ったね、とハジメは言った。立ち上がってグラスを持つと高く掲げた。
「みんな。五公演お疲れ様! 次の演目も頑張っていこうね! 弦、七海。これからもチームポラリスの最年長として支えてあげてね。では、かんぱーい!」
「かんぱーい!」
今度は全員でグラスを掲げて、飲み物を飲み干した。
七海も全員に混じり、料理を口に運ぶ。我ながらうまい、と頰を緩ませた。
「それにしても、結成当初から喧嘩勃発とは・・・どうなることかと思いました」
夜は言った。それに全員が確かに、と同意した。
「仲がいいのはもちろんいいことだけど、たまには喧嘩してぶつかった方がいいよ。我の見せ合いも時には必要だからね」
ハジメはそう言った。それに弦も同意する。弦と七海のぶつかりあいは衝撃を与えている。でもその喧嘩があったからこそ、お互いに変化をもたらすいい結果となった。
「弦はいじればかわいいってことが分かったし」
「東?」
「弦は意外と押しには弱いタイプだと私は思う」
七海が笑う。しかし、弦は黙っていない。このままでは七海が弦の弱点の一つや二つを吐露しそうで弦は止めに入る。七海は弦の名誉を守るためなのか、これ以上は喋らなかった。
「今度の打ち上げは弦の家でやろう」
「それいいね!」
「弦さんの家ですか! 七海さん、それ名案ですね! さすが姐御!」
七海が提案をするとそれに夜たちは乗る。ハジメもいい案だね、と呟いた。それを聞いた弦は、
「東ッ!」
「やばいっ! 王様が怒ったっ!」
弦が立ち上がり、七海は弦から逃げる。その様子に全員笑った。まるで先ほどまで舞台に君臨していたカイルとクレオパトラのようだった。
弦も次第に笑い出す。七海もだんだん面白くなってきて笑い出した。
チームポラリスの打ち上げは夜遅くまで大盛り上がりであった。
チームポラリス。
次に打つ演目は---。
『僕達はずっと一緒だ。親友だよ!』
『僕は信じてた。僕達はずっと親友のはずだった。あの日までは---』
最後まで読んでいただきありがとうございます。感想&評価等よろしくお願いします。今回の更新でProgram No,01が終了となります。次の演目までお待ち下さい。藤波真夏




