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試し書き  作者: 固ゆで卵
プロローグ
2/2

一人の勇者と九人の英雄

かなり多く名前出しました。物語を進めるためにどうしてもこのプロローグが必要でした、四百年後、つまり主人公が登場するのはもう少しだけ待ってくださいね。

勇者が『勇者育成計画』を発表した後、各種族ごとの長である代表ら十名が勇者の元へ集められた。集められた長達にはまず、計画の全容を勇者から説明された。


「育成計画とは僕自身の力を受け継ぐことであり、その膨大な力を有するに値する人格者を女、子供関係なく選出し、受け継いだ力を次世代へと繋いでって欲しい。また力の偏りによる争いを起こさないため各種に一人、『勇者の恩恵』を授ける」


集められた当初、今では世界で最も尊き存在となった勇者自らが、なぜわざわざ自身が住む辺境へ族長達を呼び出したのか理解出来なかったのだが各種族に力を分けると聞いて自分たちが呼び出されたその理由は理解出来た。しかし驚きを隠せなかった、計画の全容を聞かされたから驚いたわけではない、そう勇者様は『勇者の力を分け与える』そう仰ったのだ。

––––勇者の力とは誰もが知っている、膨大でありこの世界で唯一の、聖属性という魔に対し絶大な効力を持つ力のことだ。そんな力を受け継ぐことだなんて誰も想像しない、

誰かが培った魔法を学び習得する、と言うことならば昔から存在した。だが特別な勇者の力、ましてや『受け継げること』など出来るはずがないとそう思っていた。

勇者の一言から間が空き、数分が経った頃、その沈黙を破るようにしてエルフ族長である[ローエン・シュバルツ]は言う。


「勇者様よ、失礼を承知で聞くがそんなことは可能なのだろうか……」

「ああ、可能だ。ただ僕の力そのものを受け継ぐことは出来ないんだ。それに分け与えることによってどうしても力は弱まってしまう」

「ならよ、誰か一人を決めてそいつに全部渡せばいんじゃねぇのかい?」

「ガルフ、話を聞いていたのか? 勇者様は争いが起きぬように力を平等に分けなければいけない。そう言ったのだぞ?」

「シルフィア、おめぇこそわかってねぇな、オイラが言いてぇのはだな。一番強い人間を立ててそいつを中心にいるのが一番いいんじゃねぇかってことさ、そしたら争いだっておきねぇし勇者様の力を貰うんだ、復活した魔王だって余裕だろうよ」


そう言い争っているのは

ドワーフ族長[ガルフ・ウォーガ]と

妖精族長[シルフィア・メル・フォード]。ドワーフ族と妖精族は考えの違いからよく対立することがあるが決して仲が悪いわけではない、しかし言い争いをしているガルフとシルフィアの目線には明らかに火花が散っていた。


「ははは、喧嘩はやめてよく聞いておくれよ。ガルフの言うこともそうなんだけどそれだけじゃ魔王には勝てない。思い出してみてくれ、僕は魔王を封印するために力の半分を失ってしまった……。全力の僕の力を持ってしても魔王に勝つことは出来なかったんだ ……わかるだろう? ただ受け継ぐだけじゃ勝つことも不可能なんだ。それに奴は更なる力を得て復活するのは当然と見ていい」


この二人の言い争いを仲裁する役目は決まって勇者であった。

それに次いで勇者からの警告に再び沈黙が流れる……。しかし驚かないと言えば嘘になるがこの場に置いてその驚きと恐怖を表に出す者は誰もいなかった。そうでなければ有象無象といる種族の長など出来るはずもないのだから。

……現在かつてない平和を取り戻した世の中ではあるが結束した種族は決して一枚岩ではない。そのため小競り合いなども生じる、それをまとめ上げるのも彼ら。肝は座っている

––––––元来魔王、及び魔王軍を撃退したのは決して勇者のみの力ではない。彼が打倒魔王を掲げると共にまた、支配されずとも魔王軍へ抗い続けていた九人の猛者たちが彼の元へと集結した。

耳長エルフ

[ローエン・シュバルツ]

小人ドワーフ

[ガルフ・ウォーガ]

妖精フェアリー

[シルフィア・メル・フォード]

魚人マーメイ

[スミラティ・フォシエス]

鳥獣チョウジュウ

[アイズ・スカイザー]

獣人ジュウジン族〈伯琅はくろう種〉

[ガウ・ビャクト]

龍人ドラゴニュート

[ウェン・リィンツゥ]

耳長ダークエルフ族〈褐色種〉

[テレス・パスミラ]

巨人キョジン

[ギイダラ・ポルネロ]

彼らもまた、勇者に並び称される英雄達。

その彼らだからこそ、種族を束ね族長となることが出来ていた……。


「—————話を続けるよ。僕の力の根底はみんなも知ってる通り『魔族』に絶大な抵抗力を持つ聖属性だ。」

「魔王には私たち他の属性魔法では全く傷を負わずことが出来なかったぐらいだものねぇ」

「ああ、テレスが今言ったように聖属性でなければ魔王は倒せない。」


実際に魔王と対峙した九人にとって、その言葉は己らを無能と貶めるには十分すぎるほどの言葉だった。彼らは決して弱くはないのだ。弱くはないが魔王との戦いでは魔王に自分らの攻撃は通じず勇者に頼りっきりとなってしまった、苦渋を味わっている。


「……だが、もし皆が聖属性、勇者の力を持っていたとしたら?」


その一言により皆は一同にして顔を上げた。


「人種族である僕がこれだけの力を手に入れたんだ、その力を『固有魔法』を持つ君らが手にすれば魔王だって倒せるさ……!」

「しかし、ユア...勇者殿よ、分け与え小さくなる力……。対抗せんとし使い方を学ぶ時間があったとて得る力、それは雀の涙ほどではないのだろうか……。」

「こらウェンよ、今は勇者様であろう? 間違えるでないぞ」

「申し訳ない、軽率であったすまぬ勇者殿、ギイダラ殿」

「ウェン、気にないでくれよ、僕はむしろそっちの方が嬉しいんだよ?」


十名で囲む木製の机に両手をつけ伏しているウェンに対し、勇者は優しい目をしながらやや困り顔で隣に座るウェンの頭に軽く手を置いた。


「んーとどこまで話したかな……。そうだ、ウェンの心配は杞憂だとおもってくれていいよ。確かに最初は与えた力は馴染まず本来の力を発揮することはない。だけど力は所有者の中で微かに馴染み、徐々に成長していくんだ。そしていつかは所有者の潜在的能力まで引き出してくれる。そして遠い未来、魔王が復活をしてしまう頃、『新たな勇者』が誕生しているのさ」

そう言い終わると座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、向かいにある両開きの大きな扉まで駆けていき、扉を開いてから歩みを止め九人が座る机へと振り返り、背に日光を一身に受け吹き込んだ風に白くなった髪を揺らされながら、笑顔を見せた……。勇者はこの時既に、齢六十を過ぎている。だがこの時、この瞬間だけは、この笑顔は出会った頃の青年、[ユアン・ネリウス]そのものだった––––。


「––––じゃ、早速継承者を探しに行こうか!」


感想、質問なんでも受けつけています、

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