勇者と魔王
「勇者よ、魔王を討伐するのじゃ。そして再び、この地に平和をもたらすのじゃ!」
「はい、わかりました」
そうして勇者は王城を発ち、魔王城へ向かうことになった。
王城から魔王城までは、走っても三日は掛かるほどの距離がある。
勇者はその道中で、魔物に襲われている一人の男を見つけた。
「ファイア!」
勇者が呪文を唱えると、その手のひらから灼熱の火球が飛び出す。
火球は見事命中し、魔物は焼け焦げて死んでしまう。
「大丈夫か?」
「ああ、君のおかげで助かった。あのまま誰の助けもなかったら、僕は魔物に食い殺されてしまっていただろう。なにか一つ恩返しがしたいのだが」
「俺はいま魔王を討伐に行くところなんだが、良かったら手伝ってくれないか?」
「ああ、喜んでお供するよ」
こうして勇者は、一人の仲間を手に入れた。彼は槍を人並み以上にうまく扱えるということだ。
山あり谷あり、二人の旅は長かったが、ようやく魔王城の手前までたどり着く。
二人は決意を固めると、この悪魔の城に乗り込んだ。
目標の魔王は、城の奥の広間にいる。
「勇者よ、よくここまで来たな。だがお前の命運もここで終わりだ」
勇者と魔王、善と悪との戦いの火蓋が、ここに切って落とされた。
両者の力は互角。だが勇者には槍使いの男が仲間にいたので、僅差で魔王に対して勝利を収める。
「わしが負けるなど、ありえぬ……」
魔王は倒れた。
こうして世界に、平和が戻った。
勇者と槍使いの名は、この国の歴史に深く刻み付けられることになった。