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第6話 王都『ビグラン』



 アルバート達を乗せた馬車は王都ビグランへと着いた。

 ペガサス便と呼ばれる馬車はかなり早かった。


「予定よりも遅く着いちゃったなぁ」

 カインは馬車を降りながらそうつぶやいた。


 陸路であれば迂回したり山道を超えなくては行けなかったが、空路であればまっすぐと王都『ビグラン』へたどり着くことができる。

 かかった時間は僅か2日であった。

 途中にあった町で泊まりこのビルランへと着くことができた。


「んじゃ、親父達の所へ行くか…」

 アルバートがそう言ってペガサスの馬車から離れようとした時、


「そこの人達止まって!ペガサス便に乗って来た人達全員です!」

 声のする方向を見ると5人の兵士達がこちらへ走って向かってきた。


「なんだ?あの鎧に書かれた紋章は親衛隊?」

 ルージュは兵士たちの鎧の胸に描かれた紋章をすぐに判別した。


「一人ずつ身分証明証と渡航目的を教えてもらいたい」


 この国には一人ずつ規定の身分証が与えられる。(エルフ国や魔界国も同様だが)基本は持ち歩く事が常識とされる。

 ちなみに馬車や術動車(魔法や聖法で動く車)の運転手は免許証を持ち歩けばよい。(と言っても大抵は免許証と合せ2枚持っている)つまり、自分がなにものであるかが判る証を持つことがこの国の常識なのだ。


「身分証…」


 カインは自分の胸ポケットを探る。

 リリヤは早速身分証を渡しペガサスを返せと要求している。


「やべ!」


 アルバートが突如大きな声を出す。


「身分証忘れた。」

 カイン、ルージュがまたか…という顔でアルバートを見る。


「すまないが身分を証明できない者はこの都市へ入ることは認められない。また馬車で帰っていただく」

 と、1人の兵士が言った。


「そんなぁ!」

 アルバートが不満の声を上げる。これには流石にカインやルージュも焦り、

「アルバートの身は保証します。僕の友人なんです!」

 と、カインが、


「私も保証します。あまり親の権力を使いたくはないですが、私の父ルグニア王国軍第1師団団長『カザル・ダーウィン』に問い合わせていただければ…」


「あのダーウィン団長の娘さんでしたか。しかし、ここにダーウィン師団長を連れてくる訳には…」

 と、兵士達が悩んでいると、


「では、私が証明しよう。そこにいるのは私の息子だ」


 兵士たちの後ろから声がし、皆がその方向を一斉に向いた。


「親父!」


 まっ先に反応したアルバートが見た人物は何人もの兵士と一緒にやって来たアルバートの父『タリック・クローゼ』であった。


「そ、総隊長!?敬礼!」

 最初に来ていた兵士たちが一斉に敬礼をする。


「クローゼ総隊長の御子息であらせられましたか。無礼をお許しください…」

 最初に来ていた兵士の中の隊長らしき人物が口を開きそういったが、


「いや、元々はこの愚息が起した件だ。身分を証明できない者を特別扱いしてしまう私にそれを咎める権利などある訳がない」

「いえ、流石に総隊長直々に証明していただければ問題はないはずです。現在は門番でも認めれば入れる状態ですから」


「そうか。まだそこまで厳戒態勢では無いのか?自分の事を棚に上げるが、それは少し問題だな。カンタクロス元帥に進言してみよう」


 そう言ったタリックはアルバートの方へ近づき、

「まさか今来るとは思わなかった。よくお母さんが許したな…。だが、たまには王都に来てみないかと誘ったのは私だから追い返す訳にはいかないな…」

 と言った。


「おし、お久しぶりです!クローゼさん」

 ルージュは緊張した面持ちで舌を噛みながらタリックに挨拶をする。


「お久しぶりです。タリックさん」

 カインはルージュよりは緊張せず、挨拶をする。


「はは、そこまで堅くなる必要はないよルージュさん。カイン君もいつも家のアルバートがお世話になっているね」

 と、タリックは笑顔で二人に話しかけた。そして最初に来た兵士達に、


「では警備ご苦労、私はこれからこの子達を軍の施設へ連れていく」

 その言葉にアルバートが、


「親父ちょっと待って、この人も一緒に頼める?」

 アルバートはリリヤの紹介をし、リリヤの事情も説明する。それに対しタリックは、


「なるほど、ペガサスを返して欲しいのか。わかった、では一緒に行こう」

 こうして5人はタリックが乗ってきた馬車へと乗った。


「アルバート、お母さんはやっぱり来なかったのか?」

 馬車の中でタリックはアルバートに尋ねた。


「ん?あぁ、母ちゃんは『あっはっは、やっぱり王都は堅苦しくて性に合わなねぇんだよな。ま、今回は花の収穫時期が重なっちまったから、また今度親子3人でゆっくり見て回ろうや』だって」


 アルバートの回答にタリックは少し寂しそうな表情を見せ、


「そうか。まぁ、『ナイラ』の性格上そう言うとは思っていた。しかし今回の連続誘拐事件があったから解決するまで一緒に王都に居て欲しかったんだ…」

 タリックはそう言って馬車の窓の外を見た。

 ちなみに『ナイラ』とはアルバートの母でありタリックの妻である『ナイラ・クローゼ』のことである。


「なぁ、ルージュ何かアルバートの父ちゃん顔は似ているが性格が全然似てないぞ。さっきの会話から考えると母ちゃん似?」

 リリヤがこっそりとルージュに聞く。


「ん?あぁその通りだ。アルバートの性格は母親似だ。しかし、アルバートの母君は豪快な性格だが才女だったらし…。なぜアルバートは…」

「おい、聞こえてるぞ」


 アルバートの抗議の声にタリックは苦笑いで、

「アルバートの成績は私に似たのだろう」

 と言った。


 これにはルージュやカインも驚いた様子であった。ルグニア王国の親衛隊総隊長は名軍師として知られているからだ。


「いや、元々勉強ができなくてな…。結構頑張ったんだよ。妻は頭が良く学校で習ったことは全て覚えていてね。予習復習をしなくても出来てしまったんだ。だが、家に帰って勉強するという努力は嫌いな人だったんだ。お互いの悪いところが似てしまったのだろうな」

 タリックは終始苦笑いであった。




そんな話をしている内に軍の施設に着いた一行は、馬車降りた。

「カイン!来たか」


 その声にカインが振り向くと、

「お父さん!」


 そこにはカインの父、『ザイン・アルゼリン』が居た。


「ちょうど良かった。お前もかなりの実力を持った魔法使いだからな。王都へなんとしてでも連れてこようとしたんだ。本当ならばお母さんも連れてきたかったんだが…」

 ザインはかなり焦っているようだった。


「ザイン、どうした?かなり慌てているようだが…」

「あぁ、タリック。至急君にも伝えなくてはいけない話があるんだ」

 ザインはチラッとアルバート達を見る。どうやらあまり話を聞かれたくないらしいが、


「特殊図書が10数冊無くなっていたらしい」

 と、小声でザインが話した。


「特殊図書?文部省の管轄か。それが?」

 そうタリックが聞き返すと、


「どうやら魔術系の書物らしい」

「なるほど、今回の連続誘拐事件関係の可能性があるな」

「それの他にもっとまずいものが…」

「なんだ?」

 再度チラッとアルバート達の方を見るザイン。そして後ろ向きになり、

「古代特殊天文関係の書物だ…。中には魔術に関係しないものも」


 ザインは興奮しているせいか、少し声が大きくアルバート達にも聞こえてしまった。


「ば、馬鹿な!あの『リスアン』が管理しているあの古代特殊天文の書物を?しかし、噂ではあんなもの常人が読んでも理解できないものだ。しかも魔術関係では無いものなど今となっては全く役に立たないのでは??」

 タリックも興奮し声が大きくなった。


「よくわからないが、古代特殊天文関係は厳重に保管されている書物。そんなものが盗まれるなど前代未聞の事件だ」

「我々には何か指令は?」

「まだ…特には無い」

「うむ、わかった。とりあえず文部大臣から何か連絡があるだろう。それまで待つしかない。息子たちの前だ、少し落ち着こう」

 タリックの一言で冷静さを取り戻したザインは、


「あぁ。そうだな…。皆すまない、しばらく軍の施設内にある宿で泊まっていくと良い。カインは私の家でいいかな?」

「え?あぁ、うんわかった」

 カインがそう答えた。


「さて、では私はゲルベック団長の所に…おや?その子は?」

 ザインは見慣れぬ緑色の髪をした少女に気付く。


「あぁ、こちらのお嬢さんは文部大臣の娘さんだ。私の命令で集めたペガサスの中に間違って別のペガサスを連れてきてしまったようでな。返さなくてはならないのだが…」

 タリックがそう答えると、


「フューリー大臣の?それは大変だ…。あ、では私は行かなくては。失礼するよ」

 と言い、行ってしまった。


「相変わらず忙しいみたいだなぁ、お父さん…」

 カインは父の背中を見ながらそう言った。




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