第55話 戦いの終わりに
「やったのか…!?」
避けきれなかったゲルベックの魔法弾により満身創痍となった一行はの中で、ゲルベックを二つにしたアルバートが言った。
「終わった…のかな?」
カインもそう言った。誰に尋ねていいのか分からず。ただゲルベックを見ながら言った。構えは崩さず、ゲルベックの方を見る。まだ立ち上がってくるのではないかと恐れながら…。
ファルゼンはゲルベックに近づき、
「医学的には死んでいるようですね…」
と言う。
まぁ、あれだけ頭に矢を食らっても死ななかったゲルベックは心臓が動いていない位では警戒が解けなかった。
「魔力の反応も消えているようだ」
ガルゼニスも息を荒くしながら言った。
「やっと終わったかぁ…」
リリヤがヘタッと座り込む。
「気を抜かない方が良いんじゃないか?」
ルージュは辺りを見回しそう言ったが、他に敵が居る気配は無い。
「ん?あれは…!?」
ガルゼニスはそこにあるはずもない紋章を目にする。
「なんですか?…ほう」
ファルゼンもそれに気付く。
「あれがなんだよ」
リリヤは不思議そうに尋ねると、
「あれは魔界国国王一人一人に与えられる紋章。ですよね?」
ファルゼンの問いにガルゼニスが、
「えぇ。それぞれ個性的な紋章を持っています。しかしあれは歴代最強と言われた四代前の魔王の紋章…。なぜここに?」
そう言って首を傾げるガルゼニス。
「力の誇示。ってか目標だったんじゃね?」
リリヤはそう言うが、ファルゼンやガルゼニスは納得していないようだった。
「うぐ…」
皆が一斉にゲルベックの方を見る。
一瞬ゲルベックから声が出たかと思ったが、
「うぅ…」
アルバートから声がしていた。
「なんだ…驚かすなよ…、ってか左目抑えているが大丈夫か?」
と、リリヤが言った。
「どれ?見せてください」
ファルゼンはそう言うとアルバートに近付き左目を見た。
「聞いたことがありますね。聖龍の目を移植し気を目に込めると目がその状態になる。と…」
アルバートの左目はまだ龍の目になっていた。
「じゃぁ、もう目に気を送らなくていいんじゃないか?どうしてその状態にしている?」
ルージュが不思議そうにそう言ったが、
「戻らない…」
研ぎ澄まされた感覚がアルバートはまだ継続している。
気を注ぎ込むのをやめても龍の目は継続していた。
「戻らないって…」
不思議そうに目を覗き込むルージュは首をかしげる。
「う~ん。とりあえず全員に怪我は無いようですし、とりあえず詳しいことはアルバートの父君に聞いてみる事にしましょう」
ファルゼンの意見で一行はその場を後にしようとしたが、
「大丈夫ですか!?」
と、アランが大勢の連合軍の兵士達を連れてやってきた。どうやらアランは大部隊と合流できたようで、兵士達の中にはロージ将軍もいた。
「うわぁ!」
ゲルベックの変わり果てた姿を見てアランは驚いたが、
「う…ん。流石です、これはお手柄ですよ」
と、アルバート達に顔を引つらせながら言った。
「戦況はどうなっている?」
ガルゼニスがアランにそう尋ねると、
「こちらが有利に進んでおります。味方の聖獣、魔獣、獣、モンスター達が奮闘してくれているおかげで、巨大な傀儡も敵にはなりません。しかも誘拐されていた魔法使い達も加勢してくれました」
「そうか、では私もすぐに行こう。もう一仕事だ」
ガルゼニスがそう言うと、
「そうだな…。とりあえずまだ戦争は終わっていないな…。アランさん。ここは任せてもいいかい?」
アルバートに言われアランは、
「え?は、はい。お前たち、ゲルベックの処理をしろ!」
と、部下に命令し、アランは、
「私も行きます!」
そう言って、アランはアルバートの一行に加わった。
一緒に居たロージ将軍はゲルベックの遺体の傍まで来た。
悲しそうな顔を一瞬見せたが、すぐに元の不機嫌そうな顔に戻り、左手をゲルベックの目元に降ろし、見開かれた目をゆっくりと閉じて、
「己の妻のような者を出さない為とはいえ、馬鹿な事をしたな…。後は王子達が貴様の夢を叶えてくれるだろう…」
と、他の者には聞こえない程小さな声でゲルベックに語りかけた。
ピーッピーッピーッ!!
「なんだ!?」
リリヤは驚いて部屋の中を見回した。
他の者も急に部屋中になりだした音に驚く一行。




