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第52話 古代人の願い



「こんな事がこの星で起こっていたのか…」


 ゲルベックは今見た映像で呆気にとられていた。


「ここは…?」

 ゲルベックはここが先程まで子供達と戦っていた場所ではないことに気付く。

 夜空の中にいるような状態。いや、宇宙空間で立っているのであった。



「ここは古代遺跡のデータの中。わかりやすく言うとそうね…、古代人の記憶の中で、あなたは夢の中にいるような状態かしら…」

 ゲルベックが声のする方を見ると、カトリーヌが立っていた。



「夢…?お前も夢なのか?」

「うぅ~ん。ちょっと違うな。夢って表現が悪かったわね、忘れて頂戴。訂正すると、古代人達の記録…いえ、記憶の中にいる状態だけでいいわ」


「元の世界は…?」


「あぁ、今私達だけ高速で事が進んでいる状態だから、今の会話だけでもコンマ1秒もあっちは進んでいないわ」


「そうなのか…」

 ゲルベックは納得してそう言うと、顔を横へそらす。だが、ハッと気がつきカトリーヌに問いかける。


「今見た記憶が過去の記録?だとすればおかしな点がいくつもあるぞ」

 その問いかけにカトリーヌはニヤリと微笑み、


「あら?どんな点かしら?」

 と、逆に問う。


「我々の先祖、移民船団の視点が映し出されるのはわかる。だが、本国である宇宙連邦やソドネス、エセルの視点は移民船団側が知る由も無い話ではないか?」


「よく気がついたわぁ。今見た映像、私が知っている歴史も映像に埋め込んだの」

 誰でも気がつきそうなことなのにカトリーヌは大げさに驚いてみせる。


「過去の記憶にお前の記憶を入れるだと!?そんな事ができるのか?」

 今度はゲルベックが驚く。ゲルベックの驚きは大げさではなく本物だ。


「出来るわよ。だって私はあなたより数段上の魔法使いよ?」

 と、半分馬鹿にしたような口調でカトリーヌは言った。

 確かに何度か直接合った際、異様な魔力と共に強大な魔力を感じた。普通ではない、自分とは何倍も何十倍も力があると思われるカトリーヌは、初期の傀儡達を動かすための魔力、そして今いる古代遺跡のエネルギーとなっている魔力の提供、遺跡の壊れた箇所を修復するための魔法。それら全て行なっても顔色一つ変えずにやってのけた人物なのだ。ゲルベックもそんな人物であるカトリーヌを警戒していた。


 ゲルベックはDr.ジュパーソンを含め、彼女らが異星人であることは知っていた。目的はこの星の資源。そして古代の施設。

 資源は過去の映像で、古代の戦争で掘り尽くしたような感じだ。施設はDr.ジュパーソンは前々から宇宙であって欲しいと思っていたようだ。


 実は誘拐してきた人々の魔力を使用したのはこれが二回目。一回目はこの惑星近辺の古代遺跡を探索する目的で使用した。


 遺跡探索は成功し、Dr.ジュパーソンの願い通り宇宙に、それも月に巨大な施設があることがわかった。しかし、軍事施設であったため、ゲルベック自身が求めていたものは無かった。


 月に異星人達が求めるものがあったのは好都合だった。彼らがこの星に降り立ち悪さをしなければどうでもいい。今の文明力では自分達が宇宙まで行くのに後何百年もかかるだろう。


 自分達はこれから地上の遺跡を探索し、目的のものを見つける。





 だが、見つかりそうもない…。




 映像の中で燃えて滅びていく古代技術を見たからだ。




「これでこの国の古代遺跡の殆どが軍事的な物しか残っていない理由がわかったよ…。家具で使われている鉄などの資源は全て戦争の兵器製造の為回収されたんだな…。医薬品も最低限の物しか民間には広がらなかったんだな…」

 ゲルベックは寂しそうな顔で言った。


「残念ながらこの星は資源を掘り尽くしてしまったようだぞ?」

 異星人達の目的のもう一つ。この星の資源は、先ほどの映像で乏しい事が分かる。


「あら?戦争中に全ての資源を見つけることなんてできると思う?」

 クスクスと笑うカトリーヌは続けて、


「安心して、この星の限られた資源はあなた達で存分に使うといいわ。私達は宇宙に浮いている小惑星や月に眠っている大量の資源を使わせてもらうから。それよりあなたはどうするの?」

 と、カトリーヌはゲルベックに問いかける。


「あなたはこの戦争に勝って世界を統一し、古代技術を発展させていく目的。もう難しいのではなくて?」


「あぁ。確かに必要だった古代技術は見つかりそうもない…」

 ゲルベックは首を振ってこたえた。


「だったら、意地を張らずに私達が提供する技を使えばいいじゃない。この戦争だって私達の兵器を使えば簡単に勝てるわよ?」

 呆れた口調でカトリーヌがそう言うと、


「前にも言ったと思うが、あれは使い物にならんよ…。たとえ使用できる物を貰えたとしても、私は虐殺をしたいわけではないのだ…」

 そしてゲルベックはカトリーヌの方を向き、微笑みながら言った。


「『闇の悪意』などというおぞましい産物までも使ってなぁ…」

 口元は笑っているが目は笑っていない。ゲルベックは明らかにカトリーヌ達異星人に敵意を見せた。


「あら、気が付いていたの?ただのパワーアップの元だって言っただけなのに…。まさか『闇の悪意』自体も知ってもいたなんてね」

 カトリーヌは悪びれずに言う。


「あれは人にも物にも悪影響を及ぼす存在。使いたければこの星の外で使ってくれ」


「あらあら、怒っちゃったのかしら?悪かったわよ」

 と、全く反省の色を見せないカトリーヌがそう言った。


「でもこれからどうするの?隠してあった大量の傀儡は何故かパスワードが解った子供たちに燃やされた。城内で指揮をとっていた優秀な将軍達は死亡…。勝ち目ないじゃない」


「あぁ…、そうだな。全く…勝たせてくれると言ったのに全然ダメではないか…」

 ゲルベックは馬鹿にしたような目付きでカトリーヌに言った。


「力はあげると言っているのよ」

 少しムッとした表情でカトリーヌは言った。


「お前たちの文明の戦力などいらん」


「あなた達の旧文明の力では勝てないと言っているの」

 カトリーヌは少しキツめに言葉を放つ。


「ではこうしよう」

 と、ゲルベックは今までよりも大声で言った。


「最期に俺の願いを聞いてくれ…」

 突然の申し入れに目を丸くするカトリーヌ。カトリーヌ達の文明の力を使わず勝つことは難しい。わざわざ文明を二千年以上前まで落として与えるのは面倒なのだ。

 そう伝えてなお、ゲルベックはカトリーヌ達に何かを求める。


「一応言ってみて。可能ならば叶えてあげる…」

 警戒したカトリーヌがそう言うと、


「そうか。可能なら叶えるか。なぁに、お前達になら簡単にできそうな話だ…」

 そう言ってゲルベックはカトリーヌに自身の願いを伝えた。






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