第50話 古代の記憶
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―ペインルージ帝国皇帝の間―
広く明るい部屋にはゲルベックが一人座っていた。
すると、
「ゲルベック様!奴らが来ました」
と、セテノラックがゲルベックの元へと駆けつけた。
「奴らは…」
セテノラックはゲルベックが座っている玉座の周りにを見回した。先ほどまで居たカトリーヌとDr.ジュパーソンを探した。
「帰ったよ…。奴らの目的は果たした。私のもな」
と、疲れきった顔でゲルベックは微笑んだ。その笑顔はとても寂しく見える。
「くぅ…奴らはやはり信用なりません」
「仕方あるまい。だが、逆に連邦ではなく奴らでよかった。今我々がやっていることは"連邦"でも犯罪だろうからなぁ…。それより、侵入者は?」
「ライアン将軍達が止めようとしましたが…やられました」
「そうか。なら、できるだけ遺体を回収しあの島へ行け。私は奴らを止める」
ゲルベックがそう言うと、
「へ、陛下は…?」
と、心配そうにセテノラックが尋ねる。
「どのみち私は二回目の術をこの場所で行わなければならない。ついでに侵入者を倒すよ。結果は向の島で確認してくれ」
ゲルベックは優しい笑を浮かべると、
「……わかりました」
セテノラックはそう言うと、駆け足でその場を出ていった。
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「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
アルバートはドアを蹴破り広く明るい部屋へ出た。
他の者達も後から続く。
「うぉぉぉおおぉぉ…お?」
アルバートは雄叫びを止め、部屋の中にいる一人の人物を見た・
奥には一人の男が佇んでいる。
「お前たちが私を倒しに来た子供達か?」
その男は後ろを振り向かずアルバート達に話しかけた。
「てめぇがゲルベック・ペインルージか!いったいこんな事をして何が目的だ!」
アルバートが剣を向けそう問いかる。
「私はこれから二回目の開放術を行う。それによりこの星にある全ての遺跡を私は発見する。そこには私の求めるものが必ずある」
アルバートが望んでいる答えではなく、抽象的で訳がわからない。
そしてその男は振り向いた。
その男の顔を見てカインは、
「や、やっぱりゲルベック。ペインルージ…」
と、呟いた。
その顔はやはりアルバート達がハルト村で見たゲルベック・ペインルージだった。
「二回目?既に一回目は発動しているということですか?」
今度はファルゼンが尋ねる。
だが、なんの術かはファルゼンにもわからない。
「一度目に探索した星の遺跡には私が求めるものは存在しなかった。今度は見つけるよ…」
ゲルベックはそう言った後、再び背を向け両手を上げながら、
「来るなら来い。ついでに倒してあげよう」
重々しい魔力の渦を体中に纏わせながらゲルベックがそう言うと、途端に辺の空気が変わった。
「なん…だ?この魔力は…」
ガルゼニスの体中から汗が噴き出す。
「ゲルベックの魔力が上昇していく??」
カインはゲルベックから溢れる魔力に驚愕する。明らかに父の倍程の魔力を持っている。それよりも問題なのはゲルベックがこちらに背を向けている状態で、明らかにこちらを攻撃できる魔法陣を出している事だ。あれで狙えているのだろうか。
「月がよく見える…。さて、始めよう。始まるぞ!我々の魔法が!聖法が!科学が!」
ゲルベックは正面にある巨大な窓を見ながらそう言うと、真上に巨大な魔方陣を出した。
「ちょっと待て、今昼間だよな?なぜ月が出ている??」
ルージュは誰に対してではなく、そう言った。
揺れだす地面、薄赤く染まる夜空、輝きを増す月。全てが異常であった。
「な、何が起きていやがるんだ!?」
慌てるアルバート。
「このままにはしておけねぇ!」
リリヤはそう言うと弓を構えゲルベックに向けて連続で聖法エネルギーのみの矢を十発射ったが、
「んな!?」
リリヤは息を呑む。十発ともゲルベックの目の前で浮いている魔法陣の所で止まっているのだ。
「レインボーテイル!」
今度はファルゼンが聖法を、
「ライトニングアロー!」
続いてカインが魔法を放ったが、
「まさか…全部止まったとはな…」
ルージュがそういった通りやはりリリヤの聖法でできた矢と一緒で、ゲルベックの目の前で止まってしまう。ファルゼンのレインボーテイルのみはそこから先に進めないという様子で、グネグネと動いているだけだ。
「あの魔法陣は攻撃を止めるためのものですか…」
ファルゼンはそう分析したが、いきなり魔法陣から何十発もの魔法弾が飛び出す。
ガルゼニスは槍を回転させながら攻撃をガードし、カイン、ファルゼンはそれぞれの術で防御術を展開し、アルバートとルージュはリリヤを守りながら剣で魔法弾をはじき飛ばす。
「くっそぅ!これじゃゲルベックの所に行けねぇ!」
アルバートがそう悪態をを吐いていると、
「うおぉぉぉおおおお!」
いきなりゲルベックが叫んだ。
「すごい。すごいぞぉ!古代人。まさか…いや、やはりこの星にあったとは…。月とは比べ物にならないじゃないかぁぁ…」
先ほど言っていた術でこの古代遺跡を覗いているのだろうか。おそらく古代遺跡の中にある技術を見て歓喜しているのだろう。
「くぅ。攻撃を続けるぞ!」
アルバートの一声で守りに徹していた一行は攻勢にも出る。が、
「おや、なんだこれは?映像?古代の映像か…。どうやら古代人が記録したものを術で開放したのだろう…おぉ、船が空を飛んでいるだと?船が宇宙を飛び回る?すごい技術だぁ。だが、私が求めているのはこれではないな…、もっと別の…ん、なんだ?光りが船を貫き…船が燃えている!?宇宙に浮く巨大な岩から光がでて地上の人々を焼いている…。傀儡かこれは?私が操っている傀儡の何倍も大きい傀儡同士が剣を交えている?人々が煙に包まれ死んでいく…。これがこの星の記憶なのか?これがこの星の人々の歴史なのか!これは私が求めていたものとは違う、違う!モンスターの解剖の映像など私には必要無い、余計なものを見せるな!月は関係ない!この星の医療だ、耕作の効率を上げる技術だ!なんだこれは。戦争ばかりしているんじゃない!ま、町が…破壊される。何万人も一瞬で死んでいく…。なんだこれは。この歴史は…。やめろ…やめろ…私に助けを求めるな…。私はお前たちよりずっと未来にいるのだ…」
突如ゲルベックはもがき苦しみだした。
ゲルベックの脳内に魔法で古代遺跡とリンクさせた影響で、古代人が記録した戦争の映像が一気に流れ込んだのだ。
「なんだ?どうしたんだ?」
ルージュは攻撃が弱まった事を不思議に思うのと同時に、ゲルベックの異変に気が付く。
「魔法陣が!」
カインも別の異変に気が付く。カインが言った魔法陣の方向を一同が見ると、魔法陣が明らかに先程のような綺麗な形を保っていなかった。
「チャンスかもだぜ!」
そう言ったアルバートに続き、
「アルちゃんが言ったとおり、魔法陣の形成が不完全だ!」
ガルゼニスがそう言い、確証がとれ、それぞれが一斉に攻撃を行なった。
バズゥン!
奇妙な音を立ててゲルベックの魔法陣が破壊された。
「これでぇ、終わりだ!」
アルバートはそう言うと、剣にためた気を開放させ、ゲルベックに向け放った。
が、
「そんな、俺の攻撃を…。あいつ、まだ魔法陣を?」
アルバートの攻撃はゲルベックの次ぐ近くで拡散された。ゲルベックは手をかざして何らかの魔法を使ったのだろう。そしてやはりゲルベックはこちらを見ていない。ブツブツと呟いている。
「んな馬鹿な。アルバートの気攻撃を魔力だけで弾いた??」
と、カインは驚いている。どうやらゲルベックの防御はアルバートが予想した魔方陣ではなく、単純に魔力の塊であったらしい。
「え?どういうこと?」
リリヤがそう言うと、
「私の槍攻撃のように単純に魔力をためて防御に転用したんだ。だが普通はそこからある程度魔法として発展させ魔力を固める必要がある」
と、ガルゼニスが説明した。
「その原理は聖術と同じですね。もしそれが本当だとしたら、彼は単純な魔力放出でもアルバートの攻撃を弾けるだけの力を持っているということです。デタラメな力だ…」
ファルゼンは呆れたように言った。
「ふ…ふふふ…」
いきなりゲルベックは不気味に笑い出す。
「私が求めるものを見るためにはあの地獄を見続けなければならないのか…」
明らかにゲルベックの様子がおかしい。
「おいおい、何を言ってんだあいつ…」
リリヤは矢を取り出し構えながら様子を見ている。
「魔力放出は止まらないようだが…」
ガルゼニスも槍の先に魔力を再びためる。
そんなアルバート一行の疑問など知らないとばかりにゲルベックは独り言と続ける。
「私がやっていることは過去にやっている事と変わらない?いや、お前たち過去の人間達は愚かな為政者の下で国を分断させ戦いを激化させていっただけではないか?それは文明が崩壊しても繰り返されていた。終わらせてやる…今度こそ、終わらせてやるぅぅううう!」
ゲルベックがそう叫び終わると、ゲルベックの体中から大量の魔力が放出された。




