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第49話 エレベーター



 ひたすら歩き続けるなか、アルバートはライアンと戦った後に感じた疑問をファルゼンになげかけてみることにした。

「なぁ。ゲルベック達は正しい事をしているのか?」

 アルバートの発言にファルゼンは首をかしげて、

「なぜそう思うんです?」

 と、聞き返した。


「いや、ゲルベックは古代の技術を世間に公開しようとしているじゃん。俺が戦ったライアン准将も医学方面の技術を公表しようとしていたみたいだ。ただそれだけなのに俺たちはなんで争わなくちゃいけないんだろうなって…」

 アルバートがそう言うと、


「決まっているではありませんか。彼らが戦争を仕掛けてきたんですよ?何も罪もない人々を誘拐したり、殺したりしています。なら軍が動かない訳がない」

 と、ファルゼンが言った。


「奴らはなんで別の方法を選ばなかったのだろうか…。いや、戦いたくないってわけじゃないんだぜ?こんな戦争早く終わらせたいしな。まぁ、こんなこと言ったって仕方がないことは分かっているが、ただ疑問に思うだけだ」

 アルバートがそう言うと、


「これは予想ですが、ゲルベックは焦っていたのでは?」

「え?」

 どういう事か分からないと言う顔をするアルバート。


「焦っていた原因はわかりません。ただ、これ程の行動を起した経緯をまとめて私なりに考えた結果です…」




 ファルゼンの考えはこうだ。




 ゲルベックは古代技術に執着し、それを復活させようと行動をしている。空に映し出されたあの演説、城としている今いる古代遺跡、次々と復活している古代兵器がその証拠だ。

 ただ、古代技術を復活させたいだけだったら、地道に研究、公表を繰り返していけばいい。

 しかし、エルフ国でもそうだが世界の国々は古代技術に対してあまり積極的ではない。自身も経験してきたが、むしろ隠しておきたいという感じである。

 エルフ国の古代技術に対する法律では、発見して使用しても特に処罰は無い。(昔はあったようだが)ただし人を傷つけるようなものは復活(主に古代に使用されていたとされる刀剣類)が認められず、処罰はある。

 では、ゲルベックは自らが処罰されないように戦争を仕掛け、自由に古代兵器の復活を望むのか?

 だとしたら、おかしな点がある。この戦争が終わり世界はゲルベックのものになって、彼は古代兵器を望むのか?敵がいないのに。

 古代兵器を使い恐怖政治を行おうとしたとしてもおかしな話だ。第一あの演説で民間人に説得し、気遣うような発言を多々した。明らかに民衆に理解をしてもらおうとしている。もしゲルベックが己の欲望だけを求める冷酷な殺人者ならば、民衆は必要なく傀儡だけを相手にしていればいい。それにゲルベックの配下に付いた人間はゲルベックの『古代技術の平和利用』という考えに賛同した者達が殆どではないのか。もし嘘だとしたら、帝国内でも分裂騒動が起きるだろう。

 そして、なぜ民間人も多数含めた魔法使いの誘拐を行うのか?傀儡のエネルギー源である魔力はおそらく誘拐した魔法使い達の魔力で動いている。そんなことをすれば民衆から理解を得られる訳がない。

民衆を助けようとしているような演説をしながら民衆を虐げている。

 そこまでの矛盾を作りながらゲルベックが世界を手に入れて行いたいものは。ただ世界の王となり一生遊んで暮らすつもりなのか。

 だとしたら尚更これ以上の古代技術の復活は必要ない。

 ゲルベックが目的とする古代技術は本当に古代兵器だけでないのなら、一体なんの技術を復活させようとしているのか?


「じゃぁなんだ。結論から言うとゲルベックは世界中の人間の未来の為に、今生きている人間を傷つけているのか?」

 アルバートは首を傾げ納得できないという素振りを見せる。


「極端に言えばそうなりますね。一体なぜそこまで未来の人間にこだわるのやら…。とにかくアルバートが戦う理由は、今生きる人達を助けるって事でいいんじゃないですか?それに本当の事だってゲルベック本人に聞いてみた方が早いですよ」

 ファルゼンは、ハハッと笑いながら言った。


「そりゃそうだけど…」

 そう言うアルバートは難しい顔をしていた。









 それからしばらく歩くと一行は足跡の先に扉を見つける。


「ようやくそれらしい出入口を見つけたってところか?」

 リリヤは一息ついてそう言った。


「だが、扉が固くて開かないぞ…」

 ルージュが扉を押したり引いたりしたが、びくともしなかった。


「う~ん。隣に古代技術の塊がある…」

 カインが困った顔をする。隣には扉がもう一つ有り、更にその扉の横にはいくつか光るボタンがあった。


「これは面白いものを見つけましたね。しかも要人用のエレベーターとは…」

 と、ファルゼンは得意げにボタンをカチカチと押していった。

 ファルゼンがボタンを押し終わった後、扉の方を見たが、

「…なにも起こらないが?」


 ガルゼニスは静まり返った辺を見回して言った。唯一変わった事といえば扉の上部にある光る板に数字が浮かびその数字がだんだんと少なくなってきている。


「なんのカウントダウンだ?」

 アルバートも不思議そうに眺める。


 20、19、18、―――3、2、1…。


チーンッ!


「「「「「!!?」」」」」

 いきなり鳴った音に一同は驚き身構える。ファルゼン以外。


ガーッ。


 扉が開いた。

「さぁ、皆さん乗りますよ?」

 ファルゼンは何事もなかったかのように扉の先の小部屋に入り込んだ。


「ん?あ、あぁ…」

 アルバートは言われるままに小部屋に入った。


ガーッ。


 全員が小部屋に入ると扉は閉まった。

「おいおい。扉が閉まってしまったぞ!?これ出られるのか?」

 ルージュが心配そうに尋ねる。


「出られると思いますよ。ただしいきなりゲルベックの目の前に出るかもしれませんので注意してください」

 と、ファルゼンは得意そうに笑を浮かべながら言った。


「マジかよ!?」

 リリヤは驚き弓を構えようとするが、狭い場所なので上手く手を動かせない。


「痛っ!」

「あ、すまない」

 こんな会話を繰り返す。

 不思議なことにファルゼンが小部屋の中にある光る板を触った後、妙に体が浮いた感覚になる。


チーン!


 先ほどと同じ音がして扉が開いた。


「さて、どこに着いたでしょうか…」

 ファルゼンがそう言うと、扉が開いた。





「「「「「「!!」」」」」」





 扉の先は先程の街ではなかった。だがそんなことはどうでもよくなる光景が目の前に広がっていた。

 外に待ち構えていたのはペインルージ帝国軍の兵士達であった。傀儡兵ではなく人間の…。


パシュッ!

「ゲヌッ!?」

 リリヤが思わず放った矢は一人のペインルージ帝国軍の兵士の眉間に当たり、矢が当たったペインルージ帝国軍の兵士はゆっくりと倒れていった。



「て、ててて敵襲ぅぅぅうううう!!!」

 一人のペインルージ帝国軍の兵士が慌てて叫ぶ。どうやら彼らにとっても想定外の事態だったらしい。


「連合軍の兵は古代技術のエレベーターは使えないんじゃなかったのか!?」

 と、一人の帝国軍兵士が言っていた。

 最初に身構えていたアルバート達は一気に小部屋からでて帝国軍を倒しまくる。


「ライアン大将に連絡しろぉ!連合軍が入り込んでいる!」


「大将とは先ほどから連絡がつきません!」


 混乱しまくる帝国軍を次々と倒し、守りが厳重な方向へと進んでいく。


「ゲルベックはどこだぁぁあ!」

 アルバートはそう叫びながら帝国軍を吹き飛ばしていく。


「傀儡の増援部隊はまだか?」


「傀儡を保管してある魔力注入室から火災が!」


「な、なにぃいい!?」

 既に城内の帝国軍の戦力は殆ど残っていないようだった。





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