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第44話 カインVS裏切りの将


「ここは!?」

 カインは広く明るい場所へと出た。


 中央には大きな箱がいくも並んでおり、空中に板が浮いていた。驚いたことに板には城外で連合軍とペインルージ帝国軍が戦っている様子や北ルグニア平原の戦場の様子が映し出されていた。

 更にそれを操作している人物にカインは驚愕した。


「ハウィンラック准将!?」

 自身の名を呼ばれ振り返ったのはまさしく魔界国軍ヴァトラックの町駐留軍総司令官『ロイネ・ハウィンラック』准将であった。


「あら?どこかで見た顔だと思ったら、オーラックの洞窟の傀儡達を一緒に倒した子じゃない。あなた一人?」

 と、言った。


「は、はい。しかし、どうしてハウィンラックさんがこんな所に?先に潜入していたんですか?」

 カインがそう尋ねると、絶望的な答えが返ってきた。


「どうしてって…。私はペインルージ帝国軍の中将よ?城の中で指揮していたって不思議じゃないでしょ」

 そう答えたハウィンラックの表情は何も変わることなくカインを見つめている。

 まさかハウィンラック准将までもゲルベックの手下になっていたとは思わなく、憧れの人物だっただけにカインの絶望感は大きい。


「あなた達だよね?魔力注入前の傀儡を燃やしたり連れてきた魔法使い達を逃がしたりしたのは…。私達大損害なのよ」

 そう言って、ふぅ。とため息をつくハウィンラック。


「な…なんで?」

 ようやくカインの口から出た言葉はそれだけであった。


「理由?簡単よ。ペインルージ皇帝の考えに賛同したの。まぁ、これをチャンスに古代技術を悪用しようとしている人もいるけど、私は基本的に善良な使い方をしようとしているわ」

 誇らしげにそういうハウィンラックに、

「な…。戦争を起こしているのに善良な使い方なんて!」

 と、カインは怒りを含み言葉を放つ。


「過程よ、過程。簡単に言うとそうね…破壊と創造?新しく制度や世界を作るのであれば、今までの制度の崩壊やそれを認めたい連中を抑える必要がある。今回その方法がたまたま戦争だったというだけ。今まで古代人は我々よりも一部進んだ文明を持っていたなんて嘘はもう通用しない。これからは古代技術を多用し我々人はさらなる繁栄を築くのよ」

 当然のことだと言わんばかりの表情で答えたハウィンラックの考えにカインはついていけない。


 新しく世界を造るために戦争が必要?あたらしい世界というのは古代技術をなんの制限もなく使用できる世界の事だろう。なぜそれを造るために戦争が必要なのか?


 古代人は我々よりも一部進んだ技術を持っていた。それは嘘?いや、それは本当だろう。今まで発見され安全と判断された技術は多く使用されてきたようだ。例えば『電気』という存在だ。これは非常に便利なものだった。風や水の力を使い、効率よくエネルギーを生産する方法。今まで古代技術として発表されてきた中でこれに勝るものは無いが、おそらく他の様々なものが古代技術の可能性はある。


 認めない連中…。おそらく王族や政治家達だろう。認めないのはそれなりの理由があるからであるはずだ。ゲルベックは演説で国の上層部は古代技術で私腹を肥やしているというような話をしていた。だけどそれは本当か?先程例えた電気を再度例とすると、確かに実験的に都市部で初めに使用される事が多い。それは技術者や材料、使用できる判断をする人物が都市部中心に居るからであり、決して地方の村々は退け者にされているというわけではない。今では王都から一番離れた村ですら電気を使用できていると聞く。


 そもそもハウィンラックは言っていた。古代技術を悪用している奴がペインルージ帝国側に居るという事を。

 つまりルグニア王国やエルフ国、魔界国はそういう者達から古代技術を守るために今まで隠してきたのではないか?だったら現在の体制を崩壊させて危険な奴らが野放しにされているペインルージ帝国に古代技術を任せてもよいのだろうか。


「あ、あなたが言っている事はメチャクチャです!古代技術を使いたければ今まで通り安全な方法で使用していけばいい!」

 カインはそういうと、


「立場や境遇が違うとこれほどまでに考えの差が出てくるか…。見ての通り私達は現在戦争に利用できるものしか技術を復活させていない。だが、この戦いが終われば私達は平和利用を目的とする技術を多く復活させよう」

 と、ハウィンラックは宣言するが、


「そんな!なら今傷ついている人たちはどうするんです?今泣いている人はどうなるんです!?戦争を引き起こさなくては手に入らない技術なんて、僕はいらない!」


「君はいらないだろうけど、我々には必要なことなの。必要になってくる人もこれから続々と生まれてくる。君は勘違いしているかもしれないけど、これは戦争という名の革命。ただ人の命を奪い領土を獲得するだけが目的じゃない。私達はその先の未来を目指して行動しているの」


「やり方が間違っているっていってんだ!戦争を起こせるだけの行動力があるのならば、なんでもっと他のやり方を考えないの!?」


「戦争をやらなくては変わらない事だってあるの。私達の先祖は今までそうやってきたじゃない?幾度も侵略戦争を行い、最終的に平和を目的とし、願う三大国が力を強めた。他の小国はそれに従いお互いの国々と共存関係にいる。だけど、その中はまだまだ汚点だらけ。今回はその一つ。過去を見ず触れず、人々の安全安心を願うはずの国のトップが弱者を切り捨てている現実が君には分からないでしょう?反戦ばかり唱えていて、君には何ができる?結局君も戦争に参加しているではない?」


「参加するさ!家族を、友達を守る為ならば。それにあなた達は今立派に古代技術を悪用している!ならば戦うさ。古代技術を未来まで悪用されないためにも!」

 カインは力強くそう言うと、

「悪用…ね。どうやら、口で言ってもどうしようもないわね。もうお互いの正義のぶつかり合い。戦いに来たんでしょ?なら私が相手してあげるわ」

 と、ハウィンラックは諦め口調で言った。


「ぐ…」

 カインが戸惑っていると、


「来ないの?じゃぁ、こっちから…『ダークボウレイン』」

 ハウィンラックは球体を掌に作り出し、かなりの高さがある天井へ撃ち上げる。

 撃ち上がった球体は途中で止まり、突如紫色をした闇魔力で出来た大量の矢がカインに、カインに降り注ぐ。


「『ガーディアン・シールド』」

 カインは防御術を展開する。

 そして、シールド中央部から光りの魔力砲を撃つ。


「ちぃ…」

 ハウィンラックはそれをかわし、新たな術を唱える。


「『エリアフレイム』」

 カインが立っている場所とその回りが赤く熱を発し出す。

 慌ててそこから離れると、ドロッと地面が溶け、溶岩のような地面になってしまった。


「『ガーディアン・シールド』」

 防御術を展開してあった場所から離れてしまったため、再度防御術を展開する。最初に展開した防御魔法は魔力供給源を無くしたため消えてしまう。


「『クロスサイレン』!」

 カインはまだ来る闇属性矢の攻撃をシールドで防ぎながら、別の魔法を唱える。

 すると、シールドの手前から十字のエネルギー体が現われ、回転しながらハウィンラックの方向へ向かっていった。


「『ウインドネット』」

 ハウィンラックは風属性の魔法を使い、カインが放った魔法を止めようとした。

 ハウィンラックが放った魔法は風の力で相手が飛ばした魔法の威力を落とす。もしくは軌道を外らす魔法だ。

 だが、カインの放った十字のエネルギー体はハウィンラックの魔法を絡み取り、更に強大な魔法となりハウィンラックに襲いかかる。


「くぅ…。『ダークゲート』」

 ハウィンラックは漆黒の塊と出し、その中にカインの魔法を吸い込んだ。


「う!?」

 回転によって絡んでいた風の魔法がダークゲートをすり抜け一部がハウィンラックに当たる。


「くぅ…」

 顔を歪めるハウィンラックにカインは疑問を感じた。


「なぜ最初からダークゲートを使わないんだ?というか、あなたほどの魔法使いならば、あの風の魔法で押し返す事も可能だった。手を抜いているのか…?」

 そう言ったカインに対し、ハウィンラックは目を見開き驚いた表情をした後、笑いながら、


「あははは、私も甘く見られたものだ。大量の兵力を削ぎ、魔力の供給源を絶つ原因を作った一味に私が本気を出していないだと?子供だからと言って私が手加減していると?」

 大笑いするハウィンラックは、ニヤけながら、


「嘗めるなよ小僧…」

 ハウィンラックの笑顔からはただならぬ気迫が満ちていた。


「私はこの戦争には女子供年寄りですら手を抜くことはしないつもりだ」

 そう言うと、ハウィンラックは手をカインの方向へかざし呪文を唱えた。


「『呪万じゅばん・グリアリア』」

 ハウィンラックの手から巨大な蛇のような長い物体が飛び出る。まるでファルゼンのレインボーテイルのような動きでカインに迫ってくる。

 しかし、カインはとある事に気がつきハウィンラックが放った魔法に向け自身の魔法をぶつける事にした。


「『エレキエナジーロードォォオオオオオ』!!!」

 カインはハウィンラックの魔法の一点に自身の魔法をぶつけた。


「馬鹿な!?」

 ハウィンラックの魔力よりも濃密な光り属性の弾を電気の力も加え撃ち出したカインの魔法はハウィンラックの魔法を消し飛ばしハウィンラックの腹に命中した。


 そう。ハウィンラックの魔法は広範囲に攻撃できるが、一箇所一箇所の魔力は薄くなってしまっていたのだ。

 カインはそこをつき、強力な魔法で貫通させたのだ。


「グ…ハァ!」

 腹に穴が開いたハウィンラックは傷口を抑え倒れ込む。

 慌ててハウィンラックのところへ駆け寄るカインはなぜかハウィンラックに回復魔法をかけた。とっさのことで自分自身もわからなかったが、憧れだった人物が死に瀕し、敵ということを認めたくない気持ちも重なりこのような行動に出てしまったのか。いや、ただ単に人を殺すという事実を認めたくないのかもしれない。

「回復魔法が間に合わない…」


「やめろ。情けをかけるな…」

 ハウィンラックはカインの手を払い除ける。ハウィンラックから流れ出す血は止まらない。

「でも!」


「敵だよ、私は!」

 つい叱り飛ばしてしまったハウィンラックは思わず、

「ク、クフフ…」

 笑ってしまった。

「ここへ来た目的は私ではないはず…」


「!?」

 ハウィンラックにそう言われカインは慌てて立ち上がり、今度はハウィンラックが操作していた古代の装置に駆け寄る。


「いったい何をしていたんだ…」

 カインは光るパネルに手を置く。とりあえずハウィンラックがこれで何かをしていた事は確かである。もし厄介な事ならばこの装置を止めなくてはならない。カイン自身古代技術が使えるわけではないので問題があるならば破壊するしかないが…。


「!?」

 思わずカインは発行しているパネルから手を離した。魔力が吸収される感覚だ。だが大量に魔力が吸収されるのではなくほんの少しだ。


「これは…?」

「それは…魔力で傀儡に司令を送るための装置よ…」

「じゃぁこれで傀儡達を止められる?」


「無駄よ。それは私の魔力でしか反応しない。それに傀儡はそれで動力を入れたり切ったりはしていない。ただ命令するだけ…。命令が途絶えても現場の兵達が命令すれば意味はないわ…」


「なるほど。これで指示を出していたから魔力切れになっていたのか?それで僕と戦っていたのか。だから魔法にブレが…」


「くふふ…。まさか。いや、少し当たりね…。その装置で命令を出すだけならば、その装置の魔力消費量と自分の魔力回復量が同じである私にとってはなんの枷にもならない…」


「それじゃぁどうして…そんなに魔力を消費しているの?」

「……」

 ハウィンラックはしばらく黙った後、


「ふぅ。私は貯蔵されていた傀儡達を動かす為に大量の魔法を注入した。しかし、起動せず終わった…。それにビリー・ライアン大将の思考にリンクさせて、この装置でライアン大将の作戦通り動かしていた。その術はこの機械に付属する能力じゃないから私のオリジナルの魔法…。同時にやっていると結構魔力必要になるのよ。というか、さっきからライアン大将から指示が無いようだけど…。もしかして城内に侵入してきた他の敵と戦っているのかしら?」


「なんで僕にそこまで教えてくれるんだ?」


「ふふ。私に勝ったんもの。ちょっとしたご褒美よ…」


「ってか、自分でも治そうとしないの!?」


「生憎回復魔法は心得ていないのよ…」

 と言い、自嘲気味に笑を浮かべるハウィンラック。

「行きなさい。行かなくちゃならないんでしょ?」


 ハウィンラックがそう言うと、カインはハウィンラックに背を向ける。


「く…。さようならです…」

 そう言ってカインは走り去っていった。


「甘いって言うか、ちょっと情けないわね…。だけど、君みたいな子が上に立つのなら。私は"天"から…見守っていましょう…」

 カインを見送った後既にそこには居ないカインに向けそう言った。


「っていうか私もだ…。本当、何してるんだろうな。私…」

 ハウィンラックは自身の体が冷たくなっていくのを感じながらゆっくりと目を閉じた。

 ほんの少しだけゲルベックの理想郷を見てみたかったが、カインのような若い世代に任せておけなかった自身の焦りにも愛想が尽きる。

 これほどの事に関わっておいて、これで終わるとは思わなかった。未練はあるがカインのような存在に賭けてみるのは悪くない。

 彼自身が歪まず道を進んでくれる事を願う。ハウィンラックは手から炎を出し、回りにばらまいた。


「仕上げね…」

 ハウィンラックは悲しそうに自身の回りに広がる炎を見つめていた。




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