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第42話 アルバートVSビリー


「うっりゃよぉ!」

 アルバートは傀儡(強)を倒し、先へと進んでいた。


 扉の破壊ができない以上扉の前に止まっていても仕方がなく、進むしかなかった。もしかしたらどこかでみんなが居る道とつながるかもしれない。


「お?」


 しばらく進んでいたら部屋へ着いた。

 部屋は広いが傀儡が一体も居ない静かな部屋であった。しかし、油断をしてはならない。正面には扉があり、そこを開ければ傀儡達が大量に出てくるかもしれないのだ。


「ここでも傀儡を相手しなくちゃならんのか…?」

 そう愚痴をこぼしていると、




「安心しろ。ここは私が相手しよう」




 と、向かい側の扉から声がした。

 アルバートは身構える。すると、


ガーン!


 と、扉を蹴って出てきた人物にアルバートは目を見張った。


「『ビリー・ライアン』准将!?」


 ルグニア王国の第七師団師団長ビリー・ライアン准将の姿がそこにはあった。

 アルバートは幼い頃から王都へ連れてこられた時、何度か会っている。


 ビリー・ライアン准将はルグニア王国でも有数の実力者だ。

 彼の剣の腕は大岩をも切り裂くと言われている。


「ん?タリックの息子じゃないか!まだ十五位だった気がするが…連合軍に参加していたんだな」


「え?あ、あぁそうだよ!なんであんた程の人物がゲルベックの味方なんてするんだ!」

 怒りを露わにしたアルバートは剣を向け問いただした。


「目的か?ペインルージ陛下の演説の通りだが、見ていなかったのか?全都町村に流れたと思ったが…」


「見ていたさ。古代技術の復活?兵器ばかりじゃないか!」


「なるほど。確かに今まで復活させてきた古代技術は殆ど兵器ばかりだった。だが、この戦争が終わればすぐに様々な古代技術を復活させてみせる。どうだ?タリックの息子。古代の技術を見てみたくはないか?この先の町を見れば考えは変わると思うぞ?」

 そう言ってライアンは手を差しのべる。


「この先の町…?」

 アルバートが不思議そうにそう言うと、


「古代人が隠れ住んでいた町だ。このような山の中にどうやって築いたか分からぬが、素晴らしい構築技術だ。そのような技術を今の世に広めたくはないか?」

 と、ライアンが言った。


「…」

 しばらく沈黙したアルバートは、


「嫌だね」

 と、断った。


「こんな戦争をおこしてまで手に入らない古代技術なんて必要ない。古代技術を手に入れたければ大人しく復活させていればよかっただろ?戦争なんておこす必要なかったんじゃないか?」


「そうか…。確かにその方法もあっただろう。だが、それでは完全に"復活"できなかった。我々が古代技術を復活させたとしても今の世界は古代技術の存在を許さなかっただろう…」

 ライアンは手を降ろし、残念そうに首を振りながら答えた。


「たとえ世界に認められなくても、戦争をおこす必要はなかった…」

 アルバートが声を震わせながら言うと、


「なら、古代技術を使ったものは一生逃げて暮らせと?一生罪だの罰だのと言う狂信者の追っ手から怯えて暮らせというのか?」

 ライアンは声を荒らげて言った。


「それは…そんな…」

 アルバートは一瞬言葉に詰まったが、


「ならば訴え続ければいい。もし古代技術が兵器ではなく安全なものであれば、その安全性と必要性を訴え続ければよかった…。この戦争で何人死んだか分からない…。多分数万単位だ」


 アルバートのその答えに、


「フハハハハハ」

 と、ライアンは笑った。


「な、何がおかしい!」

 アルバートは急に笑い出したライアンを不快に感じ、声を荒らげたが、


「いや、すまない。私もそこまで素直に生きてこられたなら。と思ってな…。だが、私の考えは変わる事はない。たとえ今何万人死のうが、今後の未来を考えていけば"何十万人"を助ける事になる。私の友人のように助からなかった人が助かるかもしれない!」

 ライアンはそう言うと、刀を抜いて構えた。


「友人?なんのことかはわからんが、やるってんならやってやる!」

 アルバートも戦闘態勢に入った。


「うおぉぉぉぉお!」

 先に仕掛けたのはアルバートだ。


ガキーン。


 しかし、あっさり払われてしまった。


「いい腕だな。確かにここまで来ただけはある」

 そう感心して言ったライアンは、交えた時の振動で今だ震える剣を見ながらニヤリと笑った。

 明らかに余裕そうな態度を見せるライアンにアルバートは頭に血が登りそうになったが、慌てて冷静さを取り戻そうとする。目の前に居る敵、『ビリー・ライアン』は、オーラックの洞窟で戦った『バルケット・ジンクス』の親玉だ。バルケットにダメージを与えられたが代償に左目をもっていかれた。もし今ここであの時のようにただ力任せに戦っていては命がいくつあっても足りない。そもそも目的はライアンではなくゲルベックなのだ。


「ん?話に聞いていたのとちょっと違うな。バルケットから聞いた話ではただがむしゃらに突っ込んでくるような子供と言っていたのにな…。この短期間で成長でもしたのか?」

 そう言って剣を構え直すライアンに、フンッと鼻で笑ったアルバートは左目の眼帯を外した。


「目は潰したとも聞いていたが…。タリックと同じく龍の目を入れたか」

 冷静に分析するライアンは気を剣に溜め出す。


「あぁ。その通りだよ、ライアン准将」

 アルバートも左目と剣に気を溜める。


「アルバート・クローゼ。行くぞ!」

 アルバートは全神経をライアンに集中させ攻撃を仕掛けようとする。


「ふふ。ペインルージ帝国軍大将ビリー・ライアン。参る!」

 お互いの剣が交わろうとしたその矢先、


「お?んん???」

 アルバートの視界がグンニャリと曲がった。剣に纏っていた気も不規則に回転しだす。


「あれ?え、なに??」

 更に視界が赤くなる。


「?」

 ライアンも不振に思い剣を少し下げる。


「あ…れ?」

 途端にアルバートからとてつもない量の気が溢れ出す。


「!?」

 それに驚いたアルバートの気は更に乱れる。気は固まり、床をどんどん傷つけていく。


「落ち着いて剣に送っている気だけに集中しろ。目はもう気を送らなくても『龍の目』を維持できる!」


「え?お、おう」

 ライアンの助言に素直に従うアルバートは、剣のみに力集中させる。すると、乱れていた気は全て剣に収まりとてつもない量の力が剣に備わる。


「すげぇ…。あ…」

 アルバートはライアンの方を見てなんとも言えない表情をする。敵であるはずのライアンに助言をされたが、お礼をした方がいいのかわからない。というかそもそもなぜライアンは自分に助言をしたのだろうか…。

 アルバートの考えている事にに気が付いたライアンは、


「今の力は確実にこの部屋を破壊していただろう。そうなれば二人とも瓦礫の中に生き埋めだ…」

 と、言った。どうやらライアンはアルバートが起した現象について何か知っているようであった。

 そしてライアンは険しい顔を緩め、

「ふっ。まったく…奴と一緒に居るような気がするよ…。流石は奴の息子だ。アルバート、だったな?お前を見ているとタリックを思い出す…。気をつけろ、タリックには適正はなかったが、お前にはとてつもない力が備わっている…」

 ライアンはそう言うと改めて剣を構え直す。


「とてつもない力?」

 アルバートがそう尋ねると、

「その答えは、もしここから生きて出ることができたらタリックにでも聞いてみるといい」

 と、ライアンは言った。


「ちっ、分かったよ」

 アルバートは不満そうな口ぶりでそう言い、

「ま、どっちにしろ助けてくれてあんがとよ」

 と、礼を言った。そして、


「んじゃ仕切り直しだ!」


 そう言ってアルバートも剣を構え直す。


「もちろんだ。アルバート」

 そう言ってライアンはニヤリと笑い、再び剣に気を込める。


 二人はジリジリと近付き、同時に仕掛けた。

「「うおぉぉぉおおお!」」

 二人は同時に剣を交え、アルバートは今までになかった気の量でライアンの剣を叩き割り、ライアンの胴に剣が入った。


 ライアンにはアルバートがまるで巨大な龍に見え、かつてタリックや友人達と共に倒したはずの巨大な古龍が、自分を引き裂いたような感覚に見舞われた。


「ぐ、ぐおぉぉぉおおお!?」

 ライアンは鎧の胴の部分に気を込め、破壊されないようにしながら折れた剣をアルバートに向ける。


「こ…れ…でぇ…」

 ライアンは折れた剣の先をアルバートに向け力いっぱい振り下ろす。


「ふ…ククッ」

 ライアンはあまりの出来事についつい笑ってしまう。アルバートが覆う気が硬すぎて剣が突き刺さらないのだ。


「まさか…ここまでとはな…」


 ライアンはそう言うと、気を込めていた鎧の胴部分がヒビが入り、完全に壊される前に吹き飛んだ。


「うりゃぁぁあああ!」


 アルバートは剣を振り切り、飛んでいくライアンを見た。














「はぁ…はぁ…」

 息を整えたアルバートは、ライアンに近寄った。

 鎧は完全に破壊され、切り口(切ったと言うよりは叩き割ったような壊れ方だが)からは血が絶え間なく流れ出ている。


「ビリー・ライアン…」

 アルバートは対峙した敵は死んでいると思ったので開いた目を静かに閉じた。


「は…やく、行け…」

「おふほぅ!?」


 いきなりライアンがしゃべったので驚いた。生きていたのでびっくりしたのだ。

 ちょっと気恥ずかしい。


「ククッ…。父親といい…息子といい…本当に甘い奴らだよ。この先にお前が…倒したい者はい…る…早く、行け…」

 ライアンは息絶え絶えにそう言った。


「あぁ、わかってるよ。んじゃな」

 アルバートは立ち上がり、扉へ向って歩き出す。本当だったら治療したいが自分にはそんな能力は無い。そもそも治癒術が使えたとしてもそんなことは許されないだろう。


「ちぃ…」

 勝ったとしてもあまり気分が良くない。それは自分が人を殺したからか?だがこの城へ入ってくる前に人は何人も殺した。ではなぜこんな気持ちになる?


「奴らは奴らなりの目的があった…」

 そう呟きながら開けた扉から先へと進むアルバート。


 オーラックの洞窟で出会ったバルケットやキャリーがどうかは知らないが、ライアンやゲルベックには目的があった。ライアンは救えなかった友人と同じ境遇の人々を救いたいと言っていた。確かに昔親父からそんな話を聞いたことがある。持病で倒れた友人を救いたかったと親父は言っていた。

 ライアンは古代技術で病気の人々を救いたいと言っていた。だが、なぜこんな戦争が必要だったか分からない。ライアンと対峙し終わってもそれはわからなかった。

 ライアンは古代技術を使った者は逃げ隠れしなくてはいけない。と言っていたが、ルグニア王国では古代技術を使用しても罪には問われないはずである。そもそもルグニア王国は古代の超文明をみとめていないからだ。

 疑問がいくつも浮かぶ中、話し合いをする気がなかったライアンが、もし話に応じていれば状況は変わったのか…。と考えたが、


「わっけわかんねぇよ!」

 だんだんとイライラしてきたアルバートは壁を殴り、気持ちを落ち着けようとした。


「わかんねぇよ…」

 いくら気持ちを落ち着けようとも落ち着かない。気が乱れ少しずつ溢れてくる。それでもアルバートはただひたすら前に進んでいった。





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