第41話 殉職
「階段かよ!」
アルバートが扉を開けた先には長い上りの階段が続いていた。
「文句を言っていないで、さっさと行け!」
ルージュに尻を叩かれ、アルバートは慌てて階段をかけ登る。
ガチャガチャと無言で追いかけてくる傀儡(強)は正直恐ろしい。
「や、野郎!矢を飛ばしてきやがる」
リリヤは飛んできた矢をキャッチして打ち返すが、階段を登りながら飛んでくる矢をさばくのはとてつもない労力だ。
「結構上りましたね…カイン。一斉攻撃を仕掛けますよ」
「え?」
ファルゼンと突然の提案に驚くカイン。
「下に向って火や雷の攻撃を撃ち込むのです!」
「わ、わかった」
ファルゼンに言われたとおりカインは魔法を唱え、巨大な火の玉を落とす。
ファルゼンも続けて聖術攻撃を行なった。
「おぉ」
アネリー大佐はその光景を見て驚嘆した。狭い場所で逃げ場がない傀儡(強)達が火を体中に纏わせながら落ちていったのだ。
「まだ安心は出来ないぜ…」
リリヤは階段の一番下でまだワラワラと動く傀儡達を見ながら言った。
「さっさと上まで登るぜ!」
アルバートはそう言って一気に上までかけ登った。
「早く扉を閉めろ!」
ようやく階段を登りきり、登った先の部屋の扉を締めた。
「鍵がある!?」
カインは扉に鍵があることに気付き、鍵をかけた。
「ふぅ。少し休む…」
カインはドサッと座り込む。
「なんとかここまで来たが、これからどうするか…」
ルージュはそう言って首を傾げ考え込む。
「こうなったら道沿いに行くしかないと思うのですが…この部屋、とてつもない数の出入口がありますね」
ファルゼンが苦笑いをしながらそういうので、アルバートは改めて部屋の中を見回す。
広い部屋だが変わっている点は八方に出入口があるという点だ。
「なんだこの部屋…」
アルバートはついついそんな言葉を口に出す。ここまで来るのに変わった部屋をいくつも見てきたが、今度のは一通り見ただけではどのような部屋か分からない。
「ファルゼン。これ遺跡なんだろ?どんな部屋なんだ?」
と、アルバートはファルゼンに尋ねたが、
「う~ん。このような形状の部屋を見たのは初めてですね…。案内板も無いような不便な作りは今まで見てきたどの遺跡よりも非効率な作りです」
と、言った。
「どこへ進めばいいのやら…」
アルバートがそう嘆いていると、
「父上?父上!」
と、アランが叫び出した。
「なんだ?どうした!」
ルージュが慌ててかけよる。
「うぅ…」
一同がアネリー大佐の顔をのぞき込むと、苦しそうに表情を歪めるアネリー大佐がそこに居た。
「ど、どうしたのだアネリー!?」
ガルゼニスはパニック状態だ。
「背中!」
リリヤがそう叫ぶので壁に背を向けていたアネリー大佐を無理矢理こちらへ向かせる。
「矢が…」
カインは息を飲んだ。矢が五本アネリー大佐の背中に深々と刺さっていたのだ。
「そんな…。父上!」
アランは涙を流しながら必死に父を呼び続ける。
「治癒術を行います」
ファルゼンはそう言うとアネリー大佐に治癒術をかける。
「うぅ…。アラン…」
アネリー大佐は息子の名前を呼ぶ。
「父上、しゃべらないで下さい。今治療を…」
アランはそう言ったが、
「いいから…聞け。敵は誰だ?」
「…。主犯はルグニア王国のゲルベック・ペインルージ。我が国からも多数の反逆者が出ています」
「そうか…。あのルグニア王国魔法騎士団のペインルージか…。あいつは頭の切れるやつだ。そいつの本拠地に王子を連れてきて無事とはな…。お前はよくやったよ…。これからも王子を…守って…いくんだぞ」
アネリー大佐はそう言うと、虚ろになった目をゆっくりと閉じていった。
「父上?父上!父上ぇぇええ!」
アランは息絶えた父を抱きしめ叫ぶ。
「くそ!」
アルバートやそこに居たものは全員悔しそうに顔を歪ます。
「アネリー大佐…。嘘だろ…?私の…私のせいで…」
ガルゼニスも放心状態だ。
「悲しんでいる暇はないようですよ…」
ファルゼンの発言にここは敵の本拠地ということを改めて気付かされる。ここ一箇所にとどまればいずれ下の階から傀儡(強)達が登ってくるだろう。そう思い、視線を複数ある扉の方に向ける。
ここでファルゼンの言っていた「悲しんでいる暇は無い」という本当の意味を理解する。
「そんな…」
カインは目を丸くしながら驚いた。今先ほど自分達が来た出入口以外の七つの扉が開いており、そこから傀儡達の姿があるではないか。
傀儡(小)や傀儡(大)の中にそれぞれの扉から一体ずつ傀儡(強)が居る。
「こりゃまずいな」
リリヤは顔をひきつらせながら弓を構える。
カチャ。
中央に居た傀儡(強)が合図を送ると同時に傀儡部隊が一斉に動いた。
「やってやるよ!」
アルバートはそう言うと、真っ先に傀儡部隊と応戦した。
「!?」
数体の傀儡と戦ったがどうもおかしい。傀儡の多くは自分達が来た方向へ向かっているようだ。
「扉の鍵を壊して仲間を増やす気か!?」
アルバートは引き返し扉を守ろうとしたが、どうも傀儡達の動きがおかしい。傀儡達はアルバート達が来た扉に集まるのではなく、部屋中に広がっていくようであった。
「しまった!奴ら、我々を分断させるつもりです!」
ファルゼンが傀儡達の目的に気がついたが、時すでに遅し。味方は分断されアルバート達ば全員分断されてしまった。
ジリジリとアルバート、ルージュ、カイン、リリヤ、ファルゼン、ガルゼニスは"全員別々"の出入口まで押され、次第に見えなくなっていく。
「うりゃぁ!!」
唯一陣形を保っていたアランと連合軍兵士数名は効率よく傀儡達を倒していった。そして、傀儡(強)すらも倒していく。
「早く王子達を助け出さないと…」
アランは焦り、ガルゼニスの入っていった出入口へと急ぐ。
すると、これ以上行かせまいと、傀儡(強)達がそれぞれ天井に掌を向け、魔法を放った。
ズドォン。
と大きな音を立てて、上から天井の破片が落ちてくる。
「んな?」
これでアランは王子達の所へ行けなくなった。そしてアルバート達も元の部屋まで戻ることはできなくなった。
アルバート達も驚いたが、自分達が押し込められた通路には傀儡達が残っているので、倒しながら奥へ進んでいくしかなくなった。
「王子ぃぃぃいい!!」
部屋に残されてしまったアランと数名の部下達は傀儡(強)以外の傀儡達を相手にしなくてはならなくなった。
「父上に守れと言われたばかりなのに…」
悔しさで手に握る剣を締め付ける。
「このおもちゃ共がぁぁぁああああ!」
怒りでアランは傀儡達を蹴散らしていった。
「アラン!アラン!?」
ガルゼニスはいきなり現れた石の壁の向に居るアランを必死に呼んだ。アランが居るはずの部屋からは何も聞こえない。
「このぉ!」
槍の先に魔力を纏わせ力いっぱい壁を攻撃するが。
「そんな!?」
瓦礫の壁に当たる前に魔力が拡散し、槍だけの状態で壁を突いた。
「対魔力壁??」
魔界国にも上質な魔力拡散石は存在するが、これは明らかに魔力拡散石の他に何かの術がかけてある。そうでなければ魔力が壁に着くまでに何も残らないなど今までなかったからだ。
ガルゼニスの所にはアラン達のおかげで傀儡は全くいない。
「先に進むしかないのか…」
ガルゼニスは一呼吸置いた後、
「皆…どうか無事で…」
とアルバート達の事も心配して言い、先へと進むことにした。




