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第40話 分断


「おいおい、なんだこの部屋は…」


 アルバートは辺りを見回しながらそう言った。

 先ほどの動かない傀儡が大量に居た部屋の中央よりは小さいが、かなりの大きさの部屋だ。来た場所の扉も大きかったが、中央の右側の壁には更に大きい扉がある。そして遠くだが、おそらくこちらと同規模の扉が見える。

 だが、そんなことよりも部屋の中には大量のカプセルが置いてあり、その中には人が入っていた。


「誘拐されてきた魔法使い達ですか…」

 ファルゼンがそう言うと、カインは一つのカプセルに駆け寄った。


「先生!ミサネ先生!」

 ガンガンとカプセルと叩きミサネの名を呼ぶカイン。


「魔法使い達をこの中に入れて何をしようというのだ…」

 ガルゼニスは一面広がる人入りのカプセルを見て硬直した。


「魔力が吸い取られている…のか?」

 アランはカプセルから伸びる柔らかなパイプを見ながら言った。

 魔法を使える者や生まれながらにして魔力を持つ魔人達は、パイプに流れているエネルギーは魔力であることがわった。

「な…なら早くしないと!」

 カインはガンガンと杖で叩く。だが、思った以上に頑丈で割れそうもない。


「ならこいつで!」

 アルバートが剣に気を込め振り上げると、


「ちょっと待て。もし割れた場合人に当たったらどうする!?」

 と、ルージュが静止する。


「ならどうするんだよぉ…」

 アルバートがそう言いながら剣を振り上げたまま止まっていると、


「形状は異なりますが仕組みは一緒でしょう…」

 と、ファルゼンが横に付いていたボタンを押す。

 すると、カプセルが開き魔力の吸い上げが止まった。


「えぇ~…、そんな簡単に??」

 アルバートそう言って呆れていた。


「ふふ。まぁ、古代技術なんてこんなものですよ」

 と、ファルゼンは笑ってみせた。


「う、うぅ…」

 ミサネが目を開ける。


「ミ、ミサネ先生!よかった~」

 カインが笑顔になる。


「え?カイン!?どうしてここへ!?」

 ミサネは驚いた顔をする。


「僕達助けに来たんです!」

 カインがそう言って説明すると、事態を把握したのかミサネは納得し、周りを見回した。


「よし、全員でカプセルを開けまくるぞ!」

 アランは兵士達に指示を出し、次々とカプセルを開けていった。





「うぅ…」

「一体俺達は…」

「ここは?どこだ?」

「ん?」

「う~ん。よく寝た!」




 次々と目覚める魔法使い達。ここはどこだ?とパニックになりそうになったが、殆どの者が誘拐された記憶があり、助かったと安堵していた。


「どうやら誘拐された記憶が無い人もいるようですね。記憶を消されたか、いきなり転送されたと同時にここのカプセルに飛ばされたか…」

 ファルゼンもカプセルの開閉ボタンを押し回りながら呟いた。


「そこまでだ」

 場にそぐわぬ台詞にその場に居た者が一斉に声のした方を向く。

 声が聞こえた大きな扉の方向には数名の兵士達と傀儡兵達が居た。

「貴様ら…勝手に抜け出しやがって」

 怒りの表情を見せるこの兵士達はおそらくゲルベックの部下であろう。つまりペインルージ帝国の兵士や指揮官である。

「捕えろ!」

 中央に居た兵士の命令で他の兵士や傀儡達が動いた。


「させるかよ!」

 アルバート達も動き、その場で戦闘となった。


「傀儡ごときが!」

 アルバートは軽々と傀儡達を切り捨てる。しかし、次から次へと出てくる傀儡達はアルバート達の横をすり抜け、助け出した魔法使い達に迫る。

 だが、いきなり大量に傀儡達が吹き飛びだした。


「ミサネ先生!」

 カインは後ろを振り返り、攻撃した人物の名を叫ぶ。

 ミサネ先生や助け出した魔法使い達が魔法を使い傀儡達を倒したのだ。


「借りは返すぞ、傀儡共!」

 カプセルの中から救出されたアネリー大佐も戦列に加わっていた。


「父う…大佐!」

 アランも父親が無事な姿を確認でき喜びの声を上げる。


「アネリー大尉、こんな所へなぜ!?王子のお世話はどうした!」

「いや…あそこに…」

 アランの指さす方向にはガルゼニスが傀儡達相手に奮闘している様子が見られた。


「アラン…」

 アランの名を静かに呼び睨みつけるアネリー大佐。


「いや…その…」

 しどろもどろになり目が泳ぐアランに「はぁ…」とため息をついたアネリー大佐は、


「王子を前線に連れてくるとは…。後で始末書だ…」

 と、つぶやき攻撃を再開した。


「こっちです!」

 連合軍の兵士が非戦闘員の魔法使い達を自分達が来た安全なルートで脱出さる。


「おい、あっちだ傀儡共!魔法使い達を逃がすんじゃない!」

 それを見た帝国軍の指揮官はあわてて傀儡達に指示を出す。

「おふぅ?」

 だが、ペインルージ帝国軍の指揮官は指示を出したとたん頭に矢が刺さり倒れ込む。


「戦闘の指揮官を先に殺しておくのは定石だからな…」

 そういうと冷たい視線をしたリリヤは、今度は聖術で作った矢を放っていった。


「くぅ…助け出した魔法使い達を味方に加えていくとは…」

 救出した魔法使い達の戦列が整い、守るべき非戦闘員の魔法使い達が居なくなった連合軍プラス魔法使いの部隊は帝国軍に対して有利に戦闘を行っていた。


「増援!増援だ!」

 すると帝国軍側の兵士の一人が叫び出した。


「ん?あ、あれは!?」

 ルージュが目を見開いて驚く。


「強い傀儡だ!洞窟で戦ったあの傀儡だ!」

 と、慌てて全員に伝える。

 そこにはハーロックの洞窟で戦った傀儡(強)の姿があった。しかも一体だけではなく三十体近くは居る。城の外で行われている決戦では数体ほどしか見かけなかったのでおそらく親衛隊的な立場でこの城を守っていたのだろう。


「おいおい…嘘だろ?」

 アルバートはそう驚いていると、


「奴は魔法が使える。みんな気をつけろ!」

 と、ガルゼニスは連合軍の兵士や救出した魔法使い達に大声で教えた。

 一斉に動き出す傀儡(強)達は以前見た時よりも迫力がある。明らかに通常の傀儡達と格が違うのだ。


「バトルグリフォン!」

 傀儡(強)に向かって救出された魔法学校校長が全力の魔法を唱える。すると、魔力で形成された幻獣グリフォンを模った光が傀儡達を包み込む。十体は取り込んだだろうか。

 バラバラと崩れていく傀儡(強)。しかし、それでも攻撃が当たった半分だけが倒れた。

 攻撃が当たって倒れなかった傀儡(強)は体中に魔法で防御陣を形成していた。


「くぅ…」

 たじろぐ魔法学校校長に向け傀儡(強)の一体は持っていた槍を投げた。投げられた槍は綺麗な放物線を描き校長へ向かっていったが、校長はそれに対し防御の魔法陣を作った。

が、いきなり槍が倍近いスピードで加速し、槍の先端には魔法陣が出現していた。


「なん…!?」

 校長を貫通し、近くにあったカプセルに刺さって止まる槍。校長の腹には穴が開いていた。


「んぐふぅ…」

 校長は吐血してその場に倒れ込む。


「「「「こ、校長ーーー!?」」」」


 その場に居た学校関係者は全員校長の所へ駆け寄ろうとしたが、


「隊列を崩すな!治癒術が使える者と一名この場から運び出す役として校長の所へ行け!」

 と、アネリー大佐が素早く指示を出す。


「くぅ…」

 カインは悔しそうに攻撃を続けた。

 魔法学校校長の所へは医療魔法を専門とする医者が付いた。


「くそぉ!」


「うひゃぁ」


「グベ!」


 次々と倒れていく味方の兵士や魔法使い達。傀儡(強)のせいで既に隊列は乱れ陣形も作れない状態だ。


「なんという事だ。まさかあれ程の傀儡が居るとは…」

 アネリー大佐はそう呟くと、


「おい、非戦闘員達の脱出はどうなった?」

 と、近くの連合軍兵士に尋ねた。


「ぶ、無事完了しましたぁ!グヘ!」

 答えたと同時に傀儡(強)が放った矢により倒れる兵士。


「そうか…、ありがとう。全員これより撤退!」


「て、撤退するのですか!父上!?」

 アランは驚きそういうと。


「このままでは全滅だ!一度大勢を立て直し、再度攻撃を仕掛ける」


「そんな。ここは敵の本拠地で、あと少しなのですよ?」

 アランは今の状況を説明したが、


「それならなおさらだ。このようなバラバラな状態では倒せる敵も倒せない。特に兵士でも無い民間人を見方につけ、さらに敵の陣地ではな…」

「わかりました…」

 納得したアランは兵たちを引かせるが、


「王子!?」

 アネリー大佐は慌てる。アルバート達と一緒にガルゼニスは自分達からどんどん離れていく。

 傀儡(強)と一緒に現れた傀儡(大)がワラワラと湧き、アルバート達とアネリー大佐達を分断しているのだ。


「まずい!」

 アネリー大佐はすぐさまガルゼニスの所へ向かう。


「大佐!?くっ、中尉!すぐに民間人を連れて撤退するんだ!」

 アランは近くに居た連合軍中尉に指示を出しアネリーを追った。


「王子ぃぃぃぃいいいい!!」


「ん?なっ!?アネリー大佐!?」

 アネリー大佐の迫力に驚くガルゼニス。

「早くここから撤退しなくては…」

 アランはそう言い、周りを見回すと、既に味方の部隊と分断されていた。


「大佐ぁぁあ」

 アランと数名の兵士達が後からついてきた。


「とにかくここを抜けなくてはいけませんね。反対側ですが、あっち側はどうでしょう?」

 ファルゼンがそう提案すると、


「行き止まりかもしれないが…。今は賭けるしかないか…」

 アネリー大佐はそう言うと、ついてきた兵士たちにも指示を出し、反対側の扉を目指し急いで向かって行った。


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