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第37話 暗殺




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 時を同じく、ペインルージ帝国の皇帝となったゲルベック・ペインルージの潜伏場所では戦いに向けて準備が進められていた。


 また、情報収集も徹底されており、ルグニア王国、エルフ王国、魔界国の情報も常にペインルージ帝国の下へと入ってきていた。


「三国連合軍に動きあり。先遣隊と思わしき部隊がルグニア大平原を北進し真っ直ぐ我々の所へ向って来ています」

 初老の体格のいい兵士がゲルベックの前で報告した。


「ご苦労、ライアン准将…いや、ライアン大将。すぐに傀儡兵をまとめてくれ。こちらも総攻撃に出る」

「はっ」

 ゲルベックの命令で下がって行ったライアン大将と呼ばれた『ビリー・ライアン』は、オーラックの洞窟で戦った『キャリー・マックナー』中尉と『バルケット・ジンクス』中尉が所属した第七師団の団長である。現在はペインルージ帝国軍の大将という立場だ。


「順調だ…順調すぎる。ここまで計画に狂いは無い。フィル、君が私を導いてくれるのか?」

 ゲルベックはそう独り言を言った後、フフっと笑い、


「いや、そんなはずは無いか…。君は今私がやろうとしている行為を嫌っていた。だが、私はこのまま続けたい。世界の遺跡を見つけ出し起動し、奴らに隠しきれなくして、全ての技術を手にれてみせる。そのためなら化物に島を売ってもいい。悪魔に空に浮かぶ星達も売ってもいい。私達には必要の無いものだ。私達に必要なのは…」

 と己の妻に許しを乞いつつ戦いに向け決心を固めゲルベックは王の間で涙を流し呟いた。





「ふん。そう安々我が国の領土を化物や悪魔に売られては困るなぁ」




 突然ゲルベックの近くから声がした。



「お前は…」

 ゲルベックは声がする方向を見ると、そこにはルグニア王国文部副大臣カム・ネ・リスアンが居た。そしてリスアンの他にも四人の文部省専属の戦士達の姿が見える。


「なぜここに?」

 ゲルベックがそう尋ねると、


「ふふ…。くはははは!貴様も今まで使っていた術だよ。いや、正確には術ではなく"科学"だがな。しかし、やはり貴様古代技術の存在を知っていたか。共に遺跡で調査していた時からおかしいとは思っていたよ…。本来であればほんの一時期貴様の亡き奥方様の手助けの為に遺跡に入っただけなはずなのに、貴様は妙に古代文明の事について詳しかった。あの時殺しておくべきでしたかなぁ?」

 リスアンは愉快そうに笑いながら言った。


「なるほど。まさか私以外で科学での転送術を使える者がいたとはな。で、なんの用だ?」

 ゲルべックは落ち着いた態度で再度尋ねる。それが気に入らなかったのかリスアンは顔をしかめ、


「決まっているだろう、貴様を始末しにきたんだよ!古代技術。その中で兵器に分類される物を使用した場合は容赦なく消しているのだよぉ」

 リスアンはそう言うと懐から銃を取り出す。それを見たゲルベックは眉を上げ、

「ほぅ、そのような決まりがあったとは知らなかった。古代兵器か…。自分は良いのかね?」


「いいんだよぉ。我々は古代の忌まわしき記憶を封じ込める者だからなぁ」

 そう力強く言ったリスアンに続き、リスアンの部下達も懐に手を入れる。それに気が付いたリスアンは、


「私がやる、お前たちは手を出すな!」

 と、指示を出す。


「古代技術を封じ込める存在と言いつつ、自分達のみその栄光にすがる…。ふっ。なんて独善的なんだ…」

 ゲルベックはそう言うと、


「それは貴様だろう!反逆者ペインルージ!」


パシュッ!


 リスアンはそう言い、軽い音をたてて発射された銃弾はゲルベックの右肩を打ち抜いた。


「な!?」

 驚くゲルベックに、


「ふはは!魔法防御壁を展開させていたようだが無意味だぁぁ!発射された銃弾には対術加工が施されてある。これが古代兵器だぁ。貴様にはぁ、これを扱いきれるわきゃねぇ~んですよぉ!」

 悪意に満ちたような顔をしながらリスアンは笑う。


「だが、貫通後には特にその効果は作用されないらしいな…」


「なに?」

 ゲルベックに言われリスアンは打ち抜いた右肩を見る。なんと傷がふさがっているではないか。


「治癒術かぁ…」

 悔しそうにするリスアンに、


「今度はこっちの番だ」

 と、ゲルベックは闇の魔術弾をリスアンに向けて飛ばす。

 だが、リスアンの手前で魔術弾ははじけた。


「貴様が優秀な魔術師だって事は、それに備えた装備をしてくるのは当然だろぉ?」

 小馬鹿にしたように言うリスアンに対しゲルベックは、


「それはそうだな。だが、これは?」

 と、近くにあった置物、机、剣などを空中に浮かしリスアンに向けて投げる。


「んおう?」

 一瞬リスアンは驚いた顔をした。そしてリスアンへ向かって行く物達はリスアンにぶつかる。と思いきや、


バシン!ドガッ!


 と、リスアンの目の前の何かにぶつかりリスアンの周囲に転がった。


「あっはっはっはっは!これが古代の力、ブゥゥワァァルィィィアどぅぁぁぁ…(バリアだ)!ひゃーっはっはっは!」

 リスアンは狂ったように笑い出す。なんでもお見通しと言わんばかりにゲルベックを馬鹿にして笑う。


「くふふ」


「ははは」

 リスアンにつられリスアンの部下達も笑い出す。


「バリア…か」


 そう呟いたゲルベックは自身の懐からも銃を取り出す。


「え?」

 それには流石に驚いたリスアンは、ゲルベックの銃から出たパシュパシュっという音と同時に胸の痛みを感じた。


「あれ…?バリアは?」

 リスアンは胸を抑えた手を確認し真っ赤に染まっているのを見て慌てる。流れ出る血の量が尋常ではない。

 そして持っていた銃も破壊されていた。


「こっちには対エネルギー防壁専用銃弾があったからな。数はそれほど無いがね…」

 そう言ったゲルベックは続けて、

「リスアン。君の古代技術のバリアも貰っておこう。まぁ、旧式だから使えるところも限られていそうだがね」

 と言った。


「ふ、ふざけるなぁぁあああ!貴様にぃぃ、貴様にやるくらいならぁぁああ!相打ちを選ぶわぁあああ!!」

 リスアンはそう言うと二本の光り輝く剣を取り出しゲルベックに向って走り出す。しかし、


パシュッ!

パシュッ!

パシュッ!


 両足、左腕を撃ち抜かれたリスアンは両膝を地面に付け、それ以上進めなくなる。


「リ、リスアン様!?」

 流石にこの事態に驚いたリスアンの部下達がリスアンへ駆け寄ろうとしたが、


「手を出すなと言っただろう!」

 と、リスアン本人に一喝される。


「まだだぁ…、これで貴様も道連れだぁぁ…」

 死を悟ったリスアンは、ズボンのポケットからボタンを取り出し押す。


「!?」

 とっさにゲルベックは魔術防壁を作る。すると、


ドガン!!


 リスアンの体は爆散し、辺りにバラバラとリスアンが散らばる。

 爆発の威力はさほどなかった。リスアンはゲルベックを含め自爆する程の爆弾を持っていると思っていたらしい。


「さて、君達はどうするかね?数は無いと言ったが、君達を殺せる分の弾はあるぞ?」

 と、ゲルベックが言うとリスアンの部下達はお互いの顔を見合って、


「くぅ…ここは引くぞ」

 リスアンの部下の一人がそう言い、次々とゲルベックの前から消えていった。


「ふぅ…。片付けろ」

 ゲルベックは溜息をつき、リスアンの部下が居なくなった事を確認すると、自分の席に座って傀儡達にリスアンだったものを掃除させた。





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 リスアンの部下達は転送装置にて所定の場所へ戻って来た。


「クソッ。リスアン様がやられるとは…」

「次の転送までどうする?エネルギー充填まで丸一日かかるぞ」

「待機するしかない。次の暗殺計画は俺達が立てなくてはならんからな」


 リスアンの部下たちは慌てながら互いに次の行動を模索する。





「ゲルベックの所へ行っていたのか?」





 入口付近から声がし、その方向を見ると文部大臣のアンドレイ・フューリーがそこに立っていた。そして続々とルグニア王国軍の兵士達が部屋へ入ってくる。


「お前達だったのか。過去を知りすぎた古代学者の暗殺を行なっていたのは…」

 アンドレイは寂しそうな顔をして言った。


「あ…あ…」

 驚きのあまり言葉にならないリスアンの部下達は呆然と自分達が囲まれていくその光景を見ているしかなかった。


「先ほどリスアンはやられたと言っていたな…。詳しく話を聞きたい。同行してもらおう」


「そんな!我々はこの国、いや、この世界の秩序を守ろうとして…。やめろ!離せ!」


 騒いでいたリスアンの部下達は囲まれ、古代技術の装備を外されて兵士達に連れて行かれた。



「馬鹿者共が…」

 アンドレイはその光景を見ながらそう呟いた。



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