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第36話 連れて行かれた魔界国王子



 リリヤのペガサス、フィーナのおかげで早くに王都へ戻ってくることが出来た一行は、すぐにタリックに会うことにした。ゲルベックの演説の後の為、すぐに会うことは難しいと思われたが、意外と簡単に会うことができた。


 アルバートは直ぐに父タリックへと駆け寄り、

「親父、一体何が起きているんだ?」

 と、質問した。

「すまないが、私達も情報収集の途中でな。わからない事だらけなのだ。先ほど私も緊急会議に参加して現状を把握したが、まさかゲルベックが…」

 タリックは眉間にシワを寄せ難しい顔をしながら申し訳なさそうにそう言う。


「あの映像からも分かる通り、ゲルベックは誘拐されていたわけではなかった…。ということですね」

 ファルゼンはそう言うと、タリックに提案した。


「ゲルベックは明らかに古代技術を使用し今回の事件をお越しています。誘拐事件の実行犯とも言うべき転送用の像。エルフ国での防衛人形、ロイドの銃、空中に映し出された映像。そしておそらく傀儡兵ですが、現在の技術でも作成可能ですがあの数は明らかに古代技術で大量生産しています。奴がそれほどの生産拠点を持っているとすれば古代遺跡でしょう。ここは各国協力して隠している遺跡の調査を本格的に行なってみては?」

 その発言にタリックは驚き、

「なぜそこまで古代技術の事を…、いやその前に君は知っていたのか?我々の先祖が現在の技術レベルのはるか上を行っていた事を」


「ここにいる皆さんには話しましたが、私は個人的に古代遺跡や古代技術を調べていて少し詳しいんですよ」


「そうか。私はつい最近古代の真実について知ったばかりでな。噂では聞いていたが本当だとは思わなかった…」

 タリックは目を閉じ少し考えた後、

「わかった。国王陛下に伝えておこう」

 と言い、タリックはファルゼンの提案を受け入れた。


「とにかく今の君たちは待機だ。それと、ガルゼニス王子。お待ちしている方がいらっしゃいますよ」

 突然名前を呼ばれたガルゼニスは、タリックの言葉で『?』を頭に浮かべたが、すぐに「あ!」と気が付く。



「王子、どこへ行っておられたのですかぁぁぁあああ!」



 アランはガルゼニスを見つけると走って近づいてきた。おぞましい顔をしている。まるで積年の恨みがつまった宿敵を見つけたかのような顔だ。


「アラン、ここは自分の国の王宮ではないのだ。もう少し落ち着いたらどうだ?それに置き手紙をしてきたと思うが…」


 ガルゼニスのその言葉にギチギチと歯を食いしばり、怒りを見せるアラン。本当にお疲れ様だ。これでアランが処罰されればとてつもなく理不尽な結果であるだろう。


「もう勝手なことしないで頂きたいのですがねぇ」

 アランは怒りを混ぜながらそう言うが、ツーンと横を向いてしまうガルゼニス。


「グギギ、グギギギギ」

 顔を真っ赤にさせているアランから奇妙な音(声?)が聞こえる。ガルゼニスの勇猛果敢な姿には感動し褒め称えるアランであるが、ふざけた真似にはとことん怒る。どう考えてもふざけた真似が多いガルゼニスに対し、アランはいつか怒りで魔界国を裏切るのではないだろうか…。


「とにかくここ最近のお行儀の悪さは目にあまります!これではお妃になられる予定のゼナ様があまりに不憫です」


 アランの言葉にアルバート達は驚く。


「え?お前嫁さんいるの?」

 アルバートがそう聞くと、


「いや、まだ正式に結婚していない。結婚するのはこの事件が終わってからと決めている」

 と、ガルゼニスは説明した。


「まじかぁ~。ってか、もしかしてガルちゃん、すぐにでも結婚したいからこの事件を早く終わらせようとして自分から率先して首を突っ込んでいったんじゃないのか?」

 アルバートがそう言うと、ガルゼニスの目が泳ぐ。それを見たアランは、

「ま、まさかそのような理由であんな無茶を!?努力する方向間違っていますよ王子!王子の身に何かあれば結婚どころの話ではなくなるんですよ!?」

 アランが再び興奮する。いつもこんな調子なのだろうか。


「好きになった相手とすぐに結婚したいという気持ちはわからないでもないが、確かに変な方向へ努力が向いているな…」

 と、ルージュが言うと、

「王族であるならば、幼い頃から既に相手が決まっているでしょうね。勝ち組にはいつも黒い感情が出て困ります」

 と、ファルゼンは全く関係ない事を冷静に言った。


「そんなものなのか?なんか決まった相手と結婚ってつまらなそう。愛があるのかなぁ」

 そうリリヤが言うと、ファルゼンが肩を震わし、


「ククッ。リリヤが愛って…」

 と、笑うのを我慢していた。


「何がおかしいんだ。あ?コラ」

 リリヤは目をつり上げファルゼンの胸ぐらをつかむ。


「ひぃぃぃぃ…」

 そんな二人の様子を見てカインはビビっている。


「はい、終わりぃ。この話終わりね」

 アルバートはそう言って、ルージュと一緒にリリヤとファルゼンの間に入った。


「ふぅ…。そんなことより王子、魔王陛下よりお伝えされたことがありまして…」

 アランも冷静さを取り戻し、続けて、

「現在ルグニア国王陛下の提案で、魔界国、エルフ国と共に三国同盟を結ぼうという話が来ています魔王陛下は既にこれを承認し、ガルゼニス王子にルグニア王国で動いてもらいたいとのことです」

 と、アランが伝えると、


「うん。知ってるよ」

 と、ガルゼニスが言った。


 その言葉にアランは目を丸くし、知っていたならなぜ大人しく待っていられなかった。と言う顔でガルゼニスを睨む。


「とにかく、王子はこれから外交のお仕事です!」

 アランがそう言うと、ガルゼニスはソワソワとしだす。


「何をなされているので?」

 アランがそう尋ねると、


「三国で連合軍を組めばこの戦いはすぐに終わるだろう。早く行動に移そう!」

 と、ガルゼニスは意気込みを伝える。どうやら先立って戦いをしたいらしい。


「重要な事は今国王陛下同士、導派通信で決めいている最中です。まだ王子の出番はありませんよ」

 アランは溜息をつき言った。


「とにかく今は待機です!宿に帰りますよ」

 と、アランはガルゼニスを連れていこうとする。


「チッ」


「あ、王子!今舌打ちしましたね?しましたよね?王子がそのようなはしたない真似しても良いと思っているのですか?」


「ふん。私はこれからアルちゃん達と行動を共にする!」


「え?」


 いきなり自分達の事を言われたアルバートは驚いた。それに対しアランはニヤリと笑顔を作り、


「フフ…国王陛下からまた抵抗しようものなら、無理矢理にでも連れ戻せと申し付けられております」


 そう言うとアランは指をパチンと鳴らすと、数人の屈強な魔界国軍兵士が近寄って来た。そして屈強な兵士達はガルゼニスの両腕を掴み引きずって行った。

「な!?や、やめろぉぉ~!?余を誰だと思っておるぅぅぅぅ…」

 ガルゼニスの声が虚しく響きわたった。


「「「「「………」」」」」

 その様子をアルバート達は皆呆然と見ていた。


「それでは皆様、ご迷惑をおかけしました」

 と、アランはお辞儀をしながら言い、ガルゼニスの後を追っていった。


「王族の付き人も苦労しているんですねぇ」

 その光景を楽しそうにファルゼンは見ていた。




 その後、皆バラバラに宿に向かっていった。




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