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第30話 広がる誘拐の被害者


「どうだ?目の調子は…」


 朝早くタリックはアルバートの病室に来てアルバートの目を見る。


「あぁ。痛みも無くなってスッキリした感じだ。もうとってもいいか?」

 アルバートはそう言うと、チョンチョンと目に巻かれている包帯を指でつつく。


「医者からはもう大丈夫と言われているから外しても平気だ。早速外してみよう」

 タリックはワクワクしながらアルバートの包帯をとっていく。


「さて、どうだ?おぉ…おぉお?」

 タリックは目を輝かせまじまじとアルバートの左目を見つめる。


「どうやらうまくつながったようだな」

 タリックが言う通り、アルバートは左目で父親の顔を見ることができた。


「ちょっと左目に気を流し込んでみなさい」


「え?なんで??」


「ちょっとした実験だ。やってみればわかる」

 タリックの言葉に従い、アルバートは左目に気を入れ込むように集中する。


「あ!」

 とたんに左目の視界が良くなり、少し離れた場所にある物たちが鮮明に映し出される。壁のシミ一つ一つが把握できるのだ。そして何より体から気が溢れる感覚にもなった。


「おぉ!蛇の目だ蛇。もしくは猫!」

 タリックがそう喜ぶと、

「ちょっとまて、今俺どんな目をしていたんだ!?」

 アルバートは慌てて父親に尋ねる。


「こんな感じになる」

 タリックは右目に力を込めるとタリックの瞳孔がキュッと細くなる。


「うわぁ!」

 アルバートは驚く。それは恐怖を感じたのではなく、ちょっとかっこいいからだ。

 ちなみにアルバートは父の目の変化を見たのは今回が初めてである。


「え?俺の目そうなるの?鏡はどこだ!」

 慌てて鏡を探し、手元に無いことがわかると洗面台の鏡まで駆け寄りさっきのように左目に気を込める。すると父と同じく目が蛇や猫の瞳孔のように細くなる。これは明らかにドラゴンの目、見慣れたミミちゃんの目であった。


「すげぇ…。ミミちゃんみたい」

 アルバートは感心していると、


「その目の状態になると、身体能力や気が上がる。更にミミちゃん達ドラゴンとも言葉、もしくは思念で会話をすることが可能だ」


「おぉ~」

 アルバートは感心する。しかし、特典だらけのこの目に対し疑問も生まれ、


「親父、もしかしてミミちゃんはいつもこうやって目を他の人に分け与えているのか?」

 毎回このようにして目を取り出されるミミちゃんを想像するとアルバートは顔が引つる。


「実は目の移植は全員ができる訳ではない。適性をもってなくてはならないのだ。ルグニア王国民の0.1%が適正者だと言われている。だが、親が適正者でその子が適正を持つ確率は30%だったから実はお前が生まれてすぐ検査をしたんだ。すると『適合』と結果が出たから今回検査をせず、すぐに手術をすることが出来たんだ」


「ふ~ん」

 ミミちゃんが頻繁に目を取られていないという事に安心するアルバート。


「そうそう。まぁ、まだ目が慣れていないようだったら、傷を隠す為にもこれ」

 と、タリックはアルバートに眼帯を渡た。色は黒く、海賊のような眼帯だ。


「おぉ。ありがとう!」

 アルバートが喜んで眼帯を装着する。

 鏡で見ると完全に悪人面だ。

 それでも喜ぶアルバート。感性がちょっとおかしくなっている。


 アルバートが鏡を見て喜んでいると、


トントン。


 と、アルバートの病室のドアを叩く音がした。

 アルバートはカイン達が来たのかと思ったが、


「どうぞ」

 とタリックの返事で入ってきた人物は、


「タリック総隊長!」


 親衛隊の兵士であった。かなり慌てている様子である。


「隊長。至急国王陛下から集まるようにと連絡が」

 そう言う親衛隊員は青ざめた顔であり、その表情からただならぬ事が起きていると感じ取れる。


「国王陛下から集まるように?何かあったのか?」

 タリックがそう言うと、親衛隊員が言いにくそうに口をもごもごさせている。


「…わかった。すぐ行く」

 その様子を見たタリックは支度を始め、


「アルバート、目の調子に慣れてきたらもう退院してもいいぞ。私とはしばらく会えないかもしれない。あまり無茶はするなよ」

 そうタリックは言い、部屋を出ていった。

 一瞬の出来事で唖然としたアルバートだが、

「まずは目になれる事が先だな」

 と言い、眼帯を外し再び目に気を送る練習をした。








 午後になると、アルバートは退院し、カインやルージュの所へ向かうことにした。

 リハビリの結果、医者からも順調に回復したと判断されたからだ。


「さ~て、行くかぁ」

 病院から出て伸びをしながら言うアルバートに、

「もう退院してもよかったのか?」

 と、声をかけられた。

 声のする方を向くとそこに居たのはルージュであった。


「お?ルージュか、カインも。ん?リリヤやファルゼンまでそれにガルちゃん!」

 アルバートは自分に声をかけたルージュ以外にもリリヤやファルゼン、ガルゼニスがいた事に驚く。


「はは。まぁ、ちょっと観光目的で王都にいたんだ。ついでだよ、ついで。ってか悪そうな人相になったなぁ。眼帯のせいか?」

 リリヤはそう言い笑う。

 だが、人相が悪いと言われた本人はどこか得意気な表情である。


「私も元々ペガサスを取り戻す仕事が終わったので長期休暇をもらえるよう申請していたのです」

 ファルゼンもそう言うとニヤリと笑う。見るといくつか土産物を持っている。完全な観光気分である。


「お見舞いとして持ってきたが、退院祝になってしまったな。とりあえず受け取ってくれ」

 ガルゼニスはそう言うと手にもっていた大きな手提げ袋を手渡す。


「マジか!おぉ、ガルちゃんありがとう」

 アルバートは中身を確認する。


「ガルちゃんって…」

 あだ名で魔界国王子を呼ぶアルバートに冷や汗をかくカイン。


「お?マントかぁ~、ありがとよ!…って龍のマント!?」

 アルバートは目を見開く。


「こ、龍のマントって龍の皮膚から作り出したっていうマント!?」

 カインは驚きマントを見る。


「これは…確かに龍の皮膚を材料としていますね…」

 ファルゼンも興味津々でマントを見る。


「ちょっと待て、私も知っているぞ。かなり高い物だったような…」

 リリヤの額から汗が出ている。


「ん?そんなに高い物じゃないぞ?確か三十万リズ(『リズ』はこの世界のお金の単位)だったと思う。隣にあった古龍のマントは七百万リズだったからそんなに高くないんじゃないか?」

 ガルゼニスはそう言った。

 アルバートの手は震えていたが、とりあえず着てみることにした。そして着ている最中、



「ん?カインか」



 と、カインの父魔法省副大臣『ザイン・アルゼリン』が息子の名前を呼んだ。隣にはルージュの父親である第一師団団長『カザル・ダーウィン』がいる。


「お父さん?なんでこんな所にいるの?」

 カインがそう尋ねると、


「ん?いや、ちょっとな…」

 ザインは明らかに何かを隠している。直感で誘拐事件の事ではないかと感じる。


「何があったのお父さん!教えてよ!」

 カインの質問に、


「いや…、その…」

 と、たどたどしい態度を見せるザイック。明らかに何かあったと判る態度だ。


「この国の魔法騎士団団長『ゲルベック・ペインルージ』が行方不明になった。大規模な部隊で探しているが見つからない。もしかしたら誘拐されたかもしれないのだよ」

 ザイックの代わりにルージュの父カザルが答える。


「ペインルージ団長が!?」

 カインは目を丸くして驚く。ゲルベック・ペインルージといえばルグニア王国内で五本の指に入る魔法使いとして有名である。


「ダーウィン殿…」

 ザイックはカザルがまだ未公開の情報を話した事に驚いた。それにカザルは、


「すぐに発表される事ですよ。今まで彼らが行なった功績を考えればこのくらいの情報を与えなくてはバチが当たります」

 そう言ってはにかむカザルは続けて、


「皆政府から発表が有るまでこのことは内密にな」

 カザルがそう言うとアルバート達は一斉に頷いた。アルバートの父タリックが王の所へ行ったのはこの件であろう。


「それに魔法騎士団の団員も三十人ほど姿が見えないとのことだ。今までにない誘拐の規模だ…。既に安全なところなどないのかもしれないな」

 カザルはハァとため息をつき去っていった。


「絶対に誰にも言うんじゃないぞ」

 ザインは念を押してアルバート達に言い聞かせカザルの後を追った。


「なんだか大変な事になってきましたねぇ…。私も個人的にこの事件に首を突っ込みたいのですが、情報がいまいち入ってきませんし…」

 ファルゼンがそう嘆くと、

「ちっ。お前は人が不幸な事になっているとすぐそうやって調べようとする。そんなに人の不幸が楽しいのか?」

 と、リリヤはファルゼンに向って憎まれ口を叩く。


「嫌ですねぇ、リリヤ。私はただ人々が安心して暮らせるよう早く事件を解決するために協力したいだけですよ」

 ファルゼンはそう言ってにっこりと笑うがとてもそうは見えない笑い方をする。


「確かに動きたいのはやまやまだが、情報が圧倒的に少なすぎる。これでは自警団に入っても変わりはしないな…」

 ルージュがそう言うと、マントを着け終わって上機嫌なアルバートが、


「え、お前も自警団に入ったのか??」

 と驚く。


「ん?あぁ、カインとリリヤも自警団に入ったぞ。確かアルバートも入っていたな」

 ルージュはアルバートが自警団に入っていた事を知っていたようだ。せっかく自警団に入ったことを自慢しようとしていたアルバートは、その事実を告げられつまらなそうにした。


「とりあえず今私達に与えられた任務は、王都近くのハルト村に出没している傀儡(小)の処理ということだが…アルバート、一緒に行くか?」

 そうルージュが言うと、


「もちろんだぜ!この目を試すのにはもってこいだ!」

 と、アルバートは意気揚々に答えた。


「もう神経が馴染んだのですか?早いですねぇ」

 アルバートの目に興味を持ったファルゼンがアルバートに近寄り、


「是非ともその目を頂きたい」

 と言い出した。


「な、なんだと!!?」

 アルバートは驚いたが、

「ふざけんな!これはミミちゃんが俺のためにくれた目だ!」

 と、怒りをあらわにした。


「ははは。冗談ですよ、じょーだん」

「ぐぬぬ…」

 ファルゼンはそう笑い飛ばしたがアルバートは気に入らない表情をしていた。


「とりあえず明日に備えて休んでおきましょう」

 ガルゼニスの言葉で一同はそれぞれの家に帰ろうとするが、


「ガルちゃんは王子だがら明日はここで留守番なんだろ?」

 と、アルバートが言った。


「え?うん。そだよ」

 そう言ったガルゼニスの目は異常に泳いでいる。

 アルバートは不振に思ったが特に追求すること無く、その場を離れ、他の仲間もそれぞれの宿へ帰っていった。




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