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第29話 魔界国の王子と友達になる


 アルバートは手術後の静養として丸一日寝ていた。


 手術は無事成功し、アルバートの左目は聖古龍の目となっていた。




 左目には包帯をグルグル巻にされ、バランス間隔が両目の時より悪い。だが、運動神経が良い方であるアルバートには出歩くことは難しい事ではない。


「暇だ…」

 王都に付いてからカイン達とはバラバラになった。それぞれの親達が迎えに来たからだ。午前中は見舞いに来てくれたが、午後になると皆帰ってしまい暇でしょうがない。


「あ~。あぁあああ~!」


 暇なのでとりあえず奇声を発してみる。一人部屋の為自由がきき、声もよく響く。


 誰か来ないかなぁ。とアルバートが思っていると、

 コンコン。と扉を叩く音がする。


「ん?どうぞぉ~」


 待っていましたと言わんばかりの表情で声を出すアルバート。だが、扉が開かれた場所に居たのは意外な人物であった。




「!?お、お前は…」



 目の前に立っていたのは魔界国の王子ガルゼニスであった。


「今変な声が聞こえたが…。何かあったのかい?」

 ガルゼニスは部屋へ入ってきてアルバートに尋ねる。


「え?あぁ…いや、目の調子はどうかなぁ~と思って触ったら切られた箇所が痛くて悲鳴を上げただけだ」

 本当の事は言えない。頭がおかしいと思われてしまう。


「そうだったのか。あまり触らない方がいいぞ。傷口が開いては元も子もない」


「あはははは。そうだよな~」

 と、棒読みで笑うアルバート。


「そ、そういえばなんでここに?てっきり魔界国から援軍が来てそのまま帰ったかと思ったが」

「あぁ。それは…」

 ガルゼニスは途端に暗い雰囲気を漂わせ、口を開いた。


 どうやらガルゼニスを迎えに来た援軍は途中傀儡の大部隊に遭遇し、大きな被害が出たらしく、死亡した者も多いが魔力強い者はあらかた連れ去られてしまったらしい。中にはアラン・アネリー大尉の父親、アネリー大佐も誘拐されてしまったとのこと。


 今度は万単位で援軍を出すため、しばらくの間安全な近くにあったルグニア王国で保護してもらい、更に安全な王都へ移動してきた。


 どうやら魔界国よりルグニア王国の方が傀儡達の活動を見かけないらしい。

 おそらく傀儡達は、動力である魔力が多く必要なため自然魔力が多い土地の魔界国に多く居た。と予想される。そのため、傀儡が少ないルグニア王国が安全であると魔王は考えたのだ。

 それに一番悪い話として、王宮警備を任されている親衛隊隊員の中に裏切り者が大量に居たということだ。

 王宮警備隊内の掃除が終わらない限り安心して戻れないらしい。一緒に居たアネリー大尉も親衛隊だが、優秀で一番信頼できるアネリー大佐の息子ということで、一緒に居るという話だ。


 しかし、実際ルグニア王国内も裏切り者が居たと言うことで軍内は疑心暗鬼になっていた。

 そんな中に魔界国の王子をよく受け入れたと思う。




「なるほど、この国の王都に…。ってかなんで俺の部屋にいるんだ?」

 アルバートはこの国に魔界国の王子が居ることには納得したが、なぜ自分が入院している部屋にいるのかわからなかった。この病院に自国の兵士が入院していたため、間違えて入ってきたのだろうか…。


「私は礼を言いに来んだ」

 ガルゼニスから意外な言葉が出てきた。


「わざわざ他国の援軍に駆けつけてきたあなた達に礼を言いたかった。わたしのわがままで多くの戦場に付き合わせてしまった。なにせ状況が状況だ。私をかまってゆったりとしていたら犯人達に逃げられてしまうと思ってな…。結局逃げられてしまったが…」

 ガルゼニスはそう言った後、

「その目もすまなかった。私が民間人を巻き込んでしまった」

 と言って頭を下げる。それを見たアルバートは慌ててガルゼニスの頭をかなり失礼なことだろうが持ち上げた。


「それはないぜ。なんせ俺は自分からあんたらの援護をしたんだ。王子に罪はないぜ?」

 そして、アルバートはニカッと笑い、

「それになぁ。言わせてもらうが、この眼の傷は俺が未熟なせいだ。誰かに自分のせいだと言われると俺が守ってもらっていたみたいでなんか情けなくなるぜ」


「そ、そのようなつもりで言った訳ではない。すまない」

 ガルゼニスは驚き、慌てる。その必死な様子に何となく笑ってしまう。


「な!?なぜ笑うのだ」

 ガルゼニスは顔を赤くさせる。


「ははは、いや悪かった。いや~あんたとはいい友達になれそうだが、王子とじゃ身分違いか?」


「そんな!身分は関係ない。共に戦った仲。戦友だろう!」

 ガルゼニスはそう言い、目に炎を宿す。魔界国で見てきても感じたが、かなり熱い性格の持ち主らしい。更に変なところで堅物なんだろう。しかしルージュとは違う堅さだ。


「はは。んじゃ友達の握手だ」

 アルバートは手を差し出すと、


「ん?あぁ」

 ガルゼニスも手を差し出し握手をする。

 握手をした後ガルゼニスはニカッと笑い、

「これからしばらく一緒に活動する事になるだろうからよろしく!」

 と、言った。


「あぁ。こっちこそこれからもよろし…ん?これからしばらくって?」

 アルバートは疑問に思う。これからというのはこの国に居る間だろうが、一緒に活動という言葉が気になる。


「うん、これはまだ未発表されていないのだが、エルフ国、ルグニア王国、魔界国は共同で誘拐犯及び傀儡部隊を倒すため同盟を組み動いている。君も戦うのだろう?」


「はは。王子も一緒に戦ってくれるのかよ」

「そうだ」

 と、誇らしげに胸を張るガルゼニス。


「それはそうと、友人となったんだ。王子ではなく名前で呼んでほしい。私の名前はガルゼニス。ガルゼニス・ブライグ・ゼブルだ」


「そうか。わかったガルちゃん。俺の名前はアルバート・クローゼだ!よろしく」

 いきなりあだ名を作り呼ぶアルバート。


「うむ。よろしく頼むぞアルちゃん」

 ガルゼニスも早速あだ名でアルバートを呼んだ。







 つい最近アルバートは、(カインやルージュもだが)これほどゆっくりと休んだ時間がなかった。


「なんだか最近起こったことが嘘みたいだなぁ…」

 ガルゼニスが泊まっている宿へ帰った後、一人で窓の外を眺め黄昏ていた。

 もうそろそろ夕方になろうとしている時刻。病院の外では子供達が帰り支度をしていた。


「また戦いが始まるのか…」

 そう、まだ戦いは終わっていない。アルバート達が逃がしたルグニア王国軍のバルケットとキャリーは逃げたままだ。

 自分達はとんでもない事件に関わっているのかもしれない。だが、だからといって今更引くことはできない。


「明日またカイン達と旅支度でもするのかな…」

 とりあえずアルバートは寝ることにした。ゆっくり休んで戦いに備えるために…。








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