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第28話 アルバートの眼


 ガルゼニスとアランが話していた場所より少し離れた所でアルバート達が休んでいた。


「アルバート、大丈夫か!?」

 ルージュが心配そうに岩に寄りかかって座るアルバートの手を握る。


「はは、大丈夫だ。ちょっとドジっちまっただけだよ…」

 アルバートはそう言うが、左目がスッパリと縦に切られている。


「ちぃ…。目は厳しいぜ、目は…」

 リリヤはルージュとは反対側のアルバートの横で聖法治療を行う。

 治療はしているが、繊細な部分である目の修復はかなり苦労している。


「まさに両手に花ですね」

 ファルゼンがにこやかにそう言うと、


「こんな時に冗談やめようよ…」

 と、カインがファルゼンを弱々しく叱った。

 死ぬわけではない傷なので冗談を言ったのであろうが、不謹慎すぎる。


「さて、とりあえず応急処置が済んだらルグニア王国の首都ビグランへ戻りましょう」

 と、ファルゼンが提案した。

 アルバートの目の治療もあるので、その方が良いだろう。誰も反対せずファルゼンの意見に従った。








 フィーナ達ペガサスのおかげで通常よりも速くルグニア王国首都ビグランへと戻った一行は、すぐにアルバートを医者へと連れて行かれ、すぐさま検査が行われた。


 検査の様子を見ていたルージュは、検査が終わるのを確認すると、


「先生!アルバートの目はどうなんですか!?元に戻るのですか!?」

 と、検査医師を問い詰めた。


 あまりの剣幕に驚いた検査医師は、

「落ち着いてください」

 と、ルージュを宥めた後、

「左目をかなり深く切られていますね…。聖法の治療ならば傷は修復できますが、視力がかなり落ちるかもしれません…。応急処置がすぐに受けられたのが不幸中の幸いでしょう」

 そう検査結果を伝えた。


 医者にそう言われたアルバートはショックを受けたが、失明すると考えていたため、完全に失明しないとわかり、少しだけ冷静さを保つことができた。応急処置をしてくれたリリヤに感謝しなくてはいけない。


「今2.0以上なんだが…、どのくらい落ちる?」

 アルバートがそう尋ねると、


「おそらくですが、0.01程になるかと…」

 と、医者は言った。


「すぐに聖術師を呼び集中治療しましょう」

 医者がそう言うと、


「アルバート!」


 と、アルバートの名を呼ぶ一人の男が診察室へと入ってきた。


「親父!?」


 アルバートは驚き診療室へ入ってきた父、タリックを見た。


「馬鹿者がぁぁぁあああああ!!!!」


「ぐへぇ!?」


 アルバートは殴られて椅子から転げ落ちた。


「し、親衛隊長!?お止めください!怪我人ですよ!?」

 医者は慌ててタリックを止める。


「!!?!??」

 アルバートも転がりながら父の怒りの表情に驚愕していた。

 普段から何をしてもこれほど感情を爆発させて怒る事は無い親衛隊隊長タリック・クローゼ。

 ルグニア王国軍兵士の中でもトップクラスの紳士と噂されていた人物の怒声である。

 病院に居た誰もが驚いた。


 タリックはアルバートを一発殴って冷静さを取り戻したのか、

「馬鹿が…こんな目に遭ってなお戦いに出る気か?」

 そう言い、優しくアルバートの頭をクシャクシャと撫でた。


 そんな涙を浮かべる父の顔を見たアルバートは、

「ごめん…親父、でも誘拐犯はルグニア王国軍の人間だ。親父はこの国の戦士だろ?俺は親父の役に立ちたいんだ!」

 そう言って立ち上がりタリックに力強く訴えた。


「なにもアルバートが責任を背負う必要は無い。犯人と思われる人物がこの国の第七師団のメンバーだったという事実だけでも裏切り者がどういう連中か見つけやすくなった」

 と、タリックが言った。


「ルージュ達から犯人の名前を聞いたのか…。だけど、俺だってこの国の住人だ!この国を守りたいんだ!」

「お前は軍人では無い、民間人だ。確かにお前は剣を持つ資格を持っている。だがその剣を使用する目的はあくまで自衛であって戦争では無い。もはやこれは戦争だぞ?」

 タリックは、今度は怒鳴りはしなかったがとても落ち着いた声でアルバートを圧迫させる。アルバートもその気迫に圧されそうになるが、




「それでも…俺は一緒に戦いたい!」

 アルバートは一歩も引かない決意を固めた。




「…はぁ、誰に似たのかなぁ。あぁナイラか…分かった。そこまで言うならこれを」

 そう言うと、アルバートに一枚の紙を差し出した。


「ルグニア王国立自警団に所属する為の書類だ。これ以上戦いに参加すると言うならばこれにサインしなさい」

 と、懐から筒状にした書類を取り出しアルバートに渡す。これを準備しているあたりこの展開を予想していたと思われる。


「親父…いいのか?」


「良くない。だが、これで私は直接お前に命令することができるからな。戦いは何も前線に立つばかりでは無い。作戦内容は少し危険だが、今までよりは規律ある行動がとれるため安心安全だろう。今できる任務は、地方にばらまかれているあの傀儡の処理だな」

 タリックがそう言うと、アルバートは、

「ありがとう」

 と、父に礼を言い書類にサインを始める。


「ふぅ…。それとお前の目の事だが」


「目?」

 アルバートがそう言うと、


「私の相棒の聖古龍は知っているだろ?」


「知ってるも何も、いつも親父と一緒に物凄い速さで飛ぶ『ミミ』ちゃんだろ?ミミちゃんが聖古龍だって事ぐらい知ってるさ」


「そうだ。アルバート、お前そのミミちゃんの目を移植しないか?」

 アルバートはその言葉に、



「えぇえ!?」



 と、驚く。


「ミミちゃんは良いと言っている。大丈夫、昔話したと思うが、聖古龍の目は人間にすごく合うんだ。それに聖古龍の目はすぐに回復する。ちなみに私も片方ミミちゃんの目だ。アルバートが産まれる少し前に目を悪くしてな、それでミミちゃんが私に片方目をくれたんだ。ちなみに龍の目は片方しか入れてはいけない。なぜか両側を入れてしまうと逆に極端に視力が低くなってしまうらしいのだ」


「そうなのか。わかった!ありがとう親父」


「ふむ。お礼ならミミちゃんに言いなさい」


「ってか、なんで親父ミミちゃんが片目をくれるってわかったんだ?親父がドラゴンの言葉をわかるようになったのは確かミミの目を移植してからだよな?もしかして親父って元々命話使い?」


「ん?よく命話使いを知っていたなぁ。目を悪くする前は親衛隊内の騎馬部隊の中に命話使いが居てな…、たまにミミちゃんと会話をするためにその隊員に依頼していたんだが、今はこの右目のおかげでドラゴンだけ会話ができるんだ」

「へぇ~。そうだったんだ。だけど不思議だな目を移植するとドラゴンの言葉がわかるようになるなんて」


「ふむ。これは仮説の域だが、おそらくドラゴンとの間に絆ができるのだろうな…。アルバートもミミちゃんと会話ができるかもしれないぞ?」


 タリックの説明でアルバートは納得し、今度は自分もミミちゃんと会話をしてみたいと思ったのだった。



 こうしてアルバートは目の移植手術をすることになった。








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