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第23話 魔界国王子救出作戦


 一行は魔界国軍の部隊が分断された場所へと向かい、魔界国の王子『ガルゼニス』の居る部隊を見つけようとする。

 アルバート達はアネリー大佐の部隊とは一緒に行動していない。アネリー大佐の部隊が集結している間にアルバート達は先行して、ガルゼニス王子を捜索していたのだ。当然である。一緒に探すと名乗り出たとしても国外の者を一緒に行動させるなどさせてはくれる訳が無い。



 早速乗ってきたペガサス馬車に再び乗り込んだアルバート達は魔界国王子のガルゼニスを捜索していた。


 痕跡をたどるのは案外簡単であった。行く先々で傀儡が切り刻まれている。おそらく王子ガルゼニスの部隊の隊員が撤退する際、追って来た傀儡を倒していったのだろう。残念ながら隊員が倒れている姿も所々で見つかる。


「この先に『ヴァトラック』という大きな町があります。そこには魔界国軍も大勢配置されているので、おそらく王子の部隊はそこに向かっているのではないでしょうか…」

 ファルゼンは魔界国の地図を見ながらそう言うと、馬車の御者リリヤに向かうべき方角の指示をする。


 リリヤのペガサス『フィーナ』には他のペガサスは自らが持つ聖力が平均のペガサスの四倍程ある。さらに特殊な力があり、放出され自身の力で仲間のペガサスの力を高め、馬車の速度が上がる。そのため魔界国軍より早く目的地にたどり着ける。


「見つけたぞ!」

 リリヤがそう言ったので皆がリリヤの指さす方向を見るが、まだ小さすぎてよく見えない。ワラワラと動き回る物体はわかるが、それが魔界国軍と判断できたのにはリリヤの視力の良さが関係する。

 リリヤの目は元々目の良さが優れているエルフ族の中でも優秀な部類なのだ。


「ヴァトラックの町が近くにあります。我々は魔界国軍の状況を確認し、ヴァトラックに居る軍へ事を知らせて軍を向かわせましょう!」

 ファルゼンがそう言うと、

「俺は王子の援護をするぜ!町の軍に知らせるならばここに居る全員じゃなくてもいいだろ」

 アルバートはそう言うと、ファルゼンはその案に賛同し、

「わかりました。では、私が町に知らせに行ってきましょう。一人で十分です」

 と、提案してきた。

「あぁ、わかった。頼んだぜ!」

 アルバートはファルゼンにそう言って、自身は降りて戦う準備を始める。


 一行は更に魔界国王子が居る部隊に近付く。するとヴァトラックの町も見えてきた。本当にすぐ近くだったようだ。


「あれ?あんなに近けりゃ流石に町の連中は気付いているんじゃねぇか?」

 と、アルバートが。


「確かに…なんで町から援軍が来ていないんだ!?」

 と、カインも不思議がっている。


 しかし、その答えは直ぐにリリヤによって判明した。

「おい、あれはなんだ…?」

 と、リリヤが訝しげる。

 町の城壁に何かが蠢いているからだ。

「あ、あれは!?傀儡だ!傀儡達が町を襲っている!」

 リリヤがそう言うと、


「先回りされたの??」

 そうカインが驚くが、


「だが奴らは先回りできる程足は早くないと思うが…」

 と、ルージュが不思議そうな顔をして言った。


「そうですね…。傀儡が先回りできるとは思えません。別動隊が既にヴァトラックの町を襲っていたのでしょう」

 そうファルゼンは言い、続けて、

「しかしこれでは町へこの事を知らせても王子の所へ援軍は出せないでしょう。全員で王子達が居る部隊を援護し、王子を救出しましょう」

 と言った。ファルゼンの提案に皆が頷き、一行は魔界国王子ガルゼニスの援護を行うことになった。




「くぅ…。アラン、大丈夫か!?」

「申し訳ありません王子。ですが片腕を少し切られただけです!」

 ガルゼニス王子が率いる部隊は傀儡達の猛攻にあっていた。

 優秀な魔術師は皆堅い人形に吸い込まれてしまい、魔力の高い王子を守ろうと一般兵が王子の周りを囲むも今度は一般兵を引き剥がそうと傀儡の攻撃がくる。明らかに魔力の高い者を狙っている。


「ヴァトラックの町に援軍申請は届いたのか?」

 と、ガルゼニス王子は親衛隊員のアランに尋ねる。アラン・アネリーは、親衛隊大佐であるアネリー大佐の息子である。

「はい、連絡はつきましたがヴァトラックの町も傀儡に襲われているそうで…」

 アネリーは傀儡達と剣を交えながら必死に答える。


「そうか…。では通信兵に伝え、ヴァトラックの兵は町を守る事に専念しろと伝えてくれ。これから行く避難所が無くなってしまってはかなわない!」

「王子…。ご自身の身が危うい時に民の心配を…。私感激です!」

 アネリーは感動し涙を流す。


「そういうの後でいいから!早く通信術が使える兵に伝えてくれ!」

 ガルゼニスはそう悲痛な叫びを上げるが、


「術が使える通信兵は皆やられてしまいました…」

 と、アネリーは表情を暗くし言った。


「うぅぅ…」

 ガルゼニスはそれ以上何も言えなかった。


 援軍も呼べず。更に自分が居る部隊も少ない。敵は弱いが数は多い。絶望的だ…。

 だが、



「上空からエルフ王国の馬車が接近!」

 と、ひとりの兵士が叫ぶ。


「援軍か!?」

 ガルゼニスは期待を胸に空を見て馬車を確認するが、明らかに軍用のものではない。綺麗な装飾がされている。エルフ国の民はスプーン一本にも模様を入れるような種族だ。軍用車にもそれなりの装飾をするが、上空の馬車は軍用にしては装飾が過剰であった。


 しかし、この時魔界国軍の兵士達は認識を間違えていた。

 接近してきた馬車は確かにエルフ達が所有する馬車であるが、この馬車を所有するエルフが住む国はルグニア王国である。

 つまりエルフ王国の馬車ではなく、ルグニア王国の馬車である。



「あれは、援軍ではない…」

 ガルゼニスはそう言うと肩を落とす。たとえ援軍であったとしても馬車一台に乗っている兵の数は限られる。あの馬車はおそらく観光用の物だろう。

 だが、


グサグサ!


 十本程の矢が馬車から降り、傀儡達を串刺しにする。


「な…」


 その場に居た兵士たちは突然の出来事に驚く。

 上を見ると馬車から次々と魔法や聖法、矢が攻撃してくる。

 雷や炎の魔法に撃たれ激しく燃える傀儡。光線系の聖法が貫き、立つことができなくなる傀儡。関節に矢が刺さり動きが鈍くなる傀儡。優勢だった傀儡の部隊の陣形が徐々に崩されていった。

 完全に爆撃機のような役割である。


 更に、

「「うりゃぁああ!」」

 と、雄叫びを上げ、二人の剣士が馬車から降ってきた。


「援軍だったのか!?」

 ガルゼニスの顔から絶望の色が消えた。


「豪弾斬!」

 アルバートは着地すると同時に傀儡が密集する場所に気の弾丸を剣先から飛ばす。それによりバラバラと吹きとばされて粉々になる傀儡。


「エアライン」

 ルージュは己の気を足に纏わせ目にもとまらぬ速さで傀儡を切り刻む。アルバートの一撃で倒す数よりも倍以上の数を倒していく。


「ちぃ、対多数じゃルージュの方が上かよ!」

 アルバートは悔しそうにする。


「倒した数を競っている場合か!?」

 アルバートの言葉に呆れるルージュは、そう一喝して再び傀儡達を倒す事に専念する。


「なんだ、この者たちは…」

 ガルゼニスは目の前で起きている自体を把握する。突如現れた戦士がこの状況を打開している。見たところエルフ国の兵士ではないようだ。だが一人一人が猛者である。数は少ないが力強い援軍だ。

 ガルゼニスは失いかけていた士気を取り戻し、大声で、


「わ、我々も彼らに続け!」

 と言った。


「「「「オーーー!!」」」」

 兵士達も後に続き大声を出して士気を高めた。




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