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第22話 リリヤ、自分のペガサスと再会




 アルバート達はついに魔界国の王都『ベルパン』に到着した。



「やっと着いた…。フィーナ…フィーナを返せェエエ!」

 リリヤはテンションが上がり叫んでいた。


「ささ。我々はあのような人と知り合いと思われては困りますから、他人の振りをしましょう」

 と、ファルゼンは言った。


「聞こえてんだよ。クソ外道エルフ」

 リリヤはそう毒を吐く。


「とりあえずリリヤのペガサスを返してもらいに行こう。それが目的だからね」

 と、カインの意見に対し、


「おぉ!カインは分かってくれるか」

 そう言って上機嫌にリリヤはクルクル回った。







 そして、現在魔界国軍が管理する馬小屋。


「フィーナァアア!」

「ヒヒーン!!」

 リリヤとペガサスのフィーナは感動的な対面をしていた。


「会いたかったよぉ、フィーナぁ。ごめんよぉ少し目を離した隙に馬鹿どもに連れていかれちゃってこんな所に…」

 と、リリヤは言いながらペガサスに頬ずりしている。

 フィーナと呼ばれたペガサス。

 このペガサスはリリヤが自慢したくなるのもわかるほど毛並みが立派で綺麗なペガサスであった。

「ヒヒーン」

「なぁに?リリヤは世界一素晴らしい人格者?もぅ、お世辞はよしてよぉ」

「ヒヒン?」



「はは。リリヤペガサスと会話してるぜ…」

 と、アルバートは目に涙を浮かべながら言った。どうやらこの状況に感動しているようだ。


「まるで命話使いだなぁ」

 カインがそう言うと、


「命話使い?なんだそりゃ?」

 と、アルバートが聞いた。


「えっと、本来言葉を話せない生物の心の声を聞いて会話できる人の事だよ。主に聖術使いやエルフに多いかな」

 カインの説明に対し、


「へぇ。じゃぁリリヤは命話使いなのかぁ~」

 と言ったアルバートに対し、


「そりゃないんじゃないかなぁ?」

 カインは腕を組み首を傾げて言った。

 元来命話使いというのはかなりの修行を積み、尚且つ心が清らかで誠実な人物が多い。

 つまりカインはリリヤはそんな高尚な人物だとは思えないと言っているようなもので、結構失礼な感想を今行ったのだ。


「リリヤは命話使いですよ」

 と、ファルゼンが言った。

 その表情は苦笑いである。


「うっそ。でもあれ、かなり修行を積んだ人じゃないとできないんじゃ…」

 カインが驚きそう言う。あえて、心が清らかな人という言葉は使わない。

 するとファルゼンが、

「リリヤは生まれた時から、らしいですよ。もっとも、先ほどリリヤが自分に対し言っていたペガサスの言葉は嘘でしょうが…」

 そう言ったファルゼンに対し、

「聞こえてんだよ雑草ロン毛」

 と、リリヤはファルゼンを汚く罵った。

 その様子を見て、やはりリリヤが命話使いという事を信じられないカインであった。



「可愛い…」

 一方会話に参加していなかったルージュは、ペガサスのフィーナを触る作業を夢中で行なっていた。

 完全に一人の世界である。



ヤッベーヨ。マジヤッベーヨ!

オイ、ドウスンダヨ!

ワーワー!



「ん?なんか周りが慌ただしいな…」

 アルバートは魔界国軍の施設内で慌ただしい事に気が付く。

 魔界国の兵士達がザワザワとしている。



「壊滅!?どういう事だ!」

「壊滅かはわからん。ただ、隊が二分され一方の部隊がほとんどやられたらしい…」

「王子は!ガルゼニス王子は!?」

「それもわからん…、分断され命からがら報告に来た伝令兵の話では、分断されたもう一方の部隊に居るらしいが…」

「早く国王陛下に報告を!」




「なんかすごい事になっているね…」

 カインも聞き耳を立てている。

 どうやら魔界国の王子が部隊を率いて行動中に傀儡達に襲われたらしい。

「とりあえず犯人探しには役に立ちそうな情報だな…」

 アルバートは目を光らせるが、

「また傀儡だけって場合もあるよ?」

 カインがそう言うと、中央でやたら声が大きい人物が指示を始めた。




「アネリー大佐だ!」

「親衛隊のアネリー大佐が出るだと!?」

「そりゃそうさ。ガルゼニス王子の危機なんだ」

 と、兵士達が口々にそう声が大きい人物の名前を言っていた。



「これより部隊を再編し、王子の救出に向かう。報告によれば敵は大規模部隊だが九十九%は傀儡で編成された部隊である。これはルグニア王国からの情報提供だが、傀儡は魔法も聖術も効く相手である。よって出し惜しみは無しだ!我魔界国が誇る優秀な魔法部隊をもって奴らを徹底的に叩き潰す!ゼキュール、ガンリューお前達の隊も救援部隊として来るんだ」

 アネリー大佐は二名の親衛隊隊員に声をかけ、一緒に行くこととなった。

 兵力は正規軍千人。アネリー大佐が率いる親衛隊三百人。戦争が長年なかったこの時代にしてはかなり大規模な編成であった。



「アネリー大佐ですか…」

 アルバートとカインが眺めていた後ろでいきなり声を出すファルゼン。

「おぉう、お前か…。脅かすなよ…」

 アルバートは文句を言っていたが、

「ファルゼン、あの人有名なの?」

 と、カインが尋ねた。それにファルゼンは答え、

「えぇ。彼は魔界国王室親衛隊のコネット・アネリー大佐。高い魔術を持ち、尚且つ槍術の腕前もかなりのものだそうです。魔力はカインの父君と同等らしいですよ」

 アルバートはカイン父親程の魔力を持った槍使いという事にも驚いたが、ファルゼンの知識にも驚いた。


「へぇ~。で、なんでファルゼンは知っているんだ?大佐クラスの人物は全て把握しているわけなんてないよなぁ」

 ファルゼンはフフッ。と笑い、

「簡単な話です。エルフ国に現在救援を待っているガルゼニス王子が来訪する際、護衛長として一緒に居るのです」

 と、話した。しかしそうだとしても他国の護衛長まで把握しているのはやはりアルバートには考えられなかった。










「は?魔界国の王子を助けに行く?」

 ようやく自分の世界から戻ってきたリリヤがキョトンとした表情でそう言う。


「おう!俺達は誘拐犯を探すっていう目的もあるからな!魔界国の兵士達に付いて行くんだ!」

 と、アルバートは言った。


「…おいおい。本気かよ…」

 リリヤはアルバートがここまで危険な事に首を突っ込むとは思っておらず驚く。


「はぁ…僕も止めたんだけどね…。だけど全然聞かない上にルージュまで魔界国の王子を助けるとか言い出したんだ…」


「はぁ!?ルージュもだと!?」

 リリヤはカインの言葉を疑いルージュを見る。

 ルージュはリリヤの視線に気付き、


「人助けは当然のことだ!それが急務を要するのであれば尚更な!」

 と、自信満々に言った。


「マジかよ…」

 これにはリリヤは呆れた。ブレーキ役で理性の塊かと思っていたルージュは実はアルバートと殆ど変わらない無鉄砲さだ。

 まぁ、リリヤも人の事は言えないので口には出さない。


「リリヤとペガサスは先にリース村に帰って下さい。今日は晴れですし、そのペガサスならば半日とかからずにリース村へ着くでしょう」

 と、ファルゼンが言った。


「そんなに早いのか?このペガサス…」

 ルージュはリリヤのペガサスの性能に驚く。


「う~ん。私の目的は済んだことだし、別に帰ってもいいが…。乗りかかった船だしなぁ~。フィーナ、一人で帰れるか?」

 リリヤはアルバートやルージュ達の事が心配になり、付いていこうかと考えそうペガサスに言った。

 リリヤは意外と面倒見が良い人物のようだ。


「ヒヒーン!」

 リリヤの問いかけのペガサスが答える。すると、

「な、なんだって!?フィーナがこれ以上危険な目に遭わなくてもいいんだぞ」

 と、リリヤは目を丸くして言った。


「ヒヒーン!ヒヒヒヒーン!!」


「う~ん…。そこまで言うのならば…」

 リリヤが困惑しているようだったので、ルージュが、

「フィーナはいったい何を言っているのだ?」

 と、質問をする。

「ん?あぁ、フィーナはどうやら自分も魔界国の王子を一緒に探したいらしい…。正義感が強い奴だからなぁ~…」

 リリヤはそう言うと困った顔をしてペガサスの頭を撫でる。

 そして自身の家族であるペガサスもアルバートやルージュと同等の無鉄砲さだと知って苦笑いになる。


「いいのではないですか?もし戦闘が起きた場合、ペガサス達には後方で待ってもらい我々が戦いに参加する。ということでも」

 ファルゼンがそう提案すると、

「う~ん。それでもいいかなぁ…。フィーナ、いい子にできるか?」

「ヒヒーン!」

 リリヤが問いかけると、元気良く返事をする返事をするペガサスのフィーナであった。


「はは、大丈夫ですよ。少なくともリリヤよりはいい子にできますから」

「あ?」

 ファルゼンの言葉にリリヤは反応し睨む。



 一方アルバートとルージュは、

「よし、これで魔界国軍よりも先に誘拐犯と戦えるぜ!」

「それよりも先に救助が優先だろ!馬鹿なのか?」

「あ!?敵を倒せば救助もできるだろうが!お前の方こそ馬鹿だろう!」

「なんだと!?敵を倒す前にアルバートから痛い目に遭ってもらった方が良さそうだなぁ!」

「お?やるのか!?」

 と、言い争いをしていた。



「このメンバーで本当に大丈夫なのだろうか…」

 カインはこれから皆で連携をとっていかなくてはならないというのに、皆の仲の悪さに不安になってきてしまった…。



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