第20話 『エンキュー村』攻防戦
『エンキュー村』
魔界国と最も近い村として、最初の交易場所としても栄た村である。
更に国境から近い為防衛力も大きく、国境にあるルグニア王国側の砦からも近いため、砦の兵士達も非番の日に酒屋に来るなどしており、村としては戦力や発展の規模が町とも言えるものであった。
そんな防衛力が大きい村『エンキュー村』は、今未曾有の危機に直面していた。
村の中は大混乱であった。
逃げ惑う人々はどこに逃げていいのかわからない状態で右往左往している。
アルバート達が救援に駆けつけた際は既にこの状態でった。
「きゃぁ!」
アルバート達のすぐ近くに女の子が倒れ込む。
「キャッシー!」
祖父母だろうか、キャッシーと呼ばれた女の子の傍まで来て、かばうように囲む。そこに傀儡達が一斉に襲いかかった。
「「やぁぁあああ!」」
アルバートとルージュが傀儡達に切りかかり、一瞬でバラバラにした。
「ははは!やったぜ!」
「気を抜くんじゃない!まだ傀儡は居るぞ!」
女の子を助けてガッツポーズをするアルバートと、それに対し叱るルージュ。異なる性格な二人だが、連携プレーは息が合っていた。
周りにはまだ傀儡達がいたが、カイン、リリヤ、ファルゼンがそれぞれの技で倒していく。
「なんだ、あの子達は…」
この村を警備していた王国軍の兵士は突然の援軍に戸惑うも、意外な強さに感化され自分たちの士気も上がる。
「よし、人形共は体制が崩れている。これはチャンスだ、一気に倒すぞ!」
王国軍の隊長らしき人物は、これを期に傀儡達を次々と圧倒していった。
「ようやく片付いたか…」
と、アルバートは一息ついた。
アルバート達が加勢して間もなく傀儡達は一掃され、被害は少なく済んだ。
「案外少なかったな…。誘拐していく像もこれ一体だけだったし」
ルージュはそう言うと、二つに割れている像を剣先でコツンッと叩く。
「案外少ないって…それでも結構な数がいたよ…」
そうルージュの発言に苦笑いをしながらいうカイン。
カインが視線を村一帯に移すとそこにはそこら中に倒れている傀儡達の残骸があった。200体以上は絶対にいたはずである。
「おいおい…まさかここ一帯こいつらが居るんじゃないよな…」
アルバートは不安そうに傀儡の腕を掴み、ぷらぷらとさせて遊ぶ。
「わかりません。しかし、ここ一帯にこれだけ居るならば、本拠地を割り出せそうですね」
と、ファルゼンは分析する。
「とにかくここはルグニア王国軍に任せて魔界国へ行くか?」
ルージュがそう言った時、トトト、と先ほど助けた少女がアルバート達の方へ来る。
「私キャッシー・ペインルージ。さっきは助けてくれてありがと!」
「可愛い…」
思わずルージュは抱きしめてしまう。
「あっはっは。気にするなお嬢ちゃん、私たちは当然の事をしたまでさ。あっはっはっは!」
リリヤは少し天狗になっているようだ。
「ん?ペインルージってどっかで聞いたことあるな」
アルバートがそう言うと、
「ん?もしかしてキャッシーはルグニア王国魔法騎士団団長のゲルベック・ペインルージ団長の娘さんなのか?」
ルージュがそう尋ねる。それにキャッシーは、
「おとーさんの事知ってるのぉ?」
キャッシーは首を傾げて不思議そうに聞き返した。その仕草に更に心奪われたルージュは目がトロンとなってしまっている。
「あらあら、キャッシー。ここに居たの?探しちゃったじゃない。あ!」
先ほどキャッシーと一緒に居た祖母らしき人物が近寄ってくる。
「あなた達は!私はこの子の祖母でして…、お爺さん!こっちです。早く、こっち!あの、先ほどはありがとうございました!」
キャッシーの祖母は頭を下げ、礼を言う。
「あぁ、あなた達は先程のぉぉ!私はモルティガと申す者です!」
祖父の方はなぜか緊張していた。
「いえいえ、当然の事をしたまでです」
カインがそう言うと、
「キャッシーちゃん?ちゃんとお礼言えた?」
そう祖母がキャッシーに聞くと、
「うん!」
と、キャッシーは元気よく答えた。
「うん?この子、もしかしたら…」
カインは何かに気付く。
キャッシーと呼ばれた女の子の魔力に。
「カインも気付きましたか?」
と、ファルゼンがカインに話しかける。
「この子、やっぱりペインルージ団長の娘だからかもしれないけど、かなり魔力が高いよ…」
「そのようですね」
「もしや、この子が目的でこの傀儡達は…」
カインの顔が一瞬強ばる。ここにこの子を置いておいたら危険だ。と…。
「ふむ、その線は薄いかもしれませんね…。しかし今までの誘拐されてきた人間で、子供はいませんでした。ですので、おそらく傀儡達の目標はここに駐留していたルグニア王国軍の魔術師だったのかと…」
ファルゼンが総分析すると、
「だけど念の為に…」
と、不安そうにカインが言った。
「それはもちろんです」
そう言うと、ファルゼンはモルティガ夫妻に、
「現在世界中で問題になっている誘拐事件ですが、高い魔力を持っている者が狙われているようです。今まで子供が狙われる事はなかったですが、念のため王都へ避難した方が良いでしょう」
と、助言をする。
「え、ええ。実は一昨日からこの子の父のゲルベック・ペインルージに王都へ避難してくるよう言われていたのです。今日出発しようとしていたのですが…」
祖父の方がそう言うと、
「なるほど。で、出発しようとした矢先に襲われてしまったのですか…」
ファルゼンは納得する。
「もしまだ馬車が出るようであるなら、事情を説明して王都まで行こうかと思います…。自分達だけ、と思われるかもしれませんが…」
祖父がそう不安そうに言うと、
「いえ、そのほうがいいでしょう。では、我々はこれで失礼します。王国軍の援軍が来たようですしね」
ファルゼンがそう言うと、王国軍が大勢やってくる。
おそらく砦からの救援部隊であろう。
「すごい数だな…」
意外と多かった王国軍にアルバートは驚く。
その後、アルバート達は援軍に来た王国軍に事情を説明し、魔界国へと向かった。
「お兄ちゃん達、お姉ちゃん達ありがとぉ!」
キャッシーと彼女の祖父母は笑顔で彼らを見送った。




