プロローグ
お久しぶりです。もしくは初めまして!
ルミネと申します。
今回は二作目の投稿をさせていただきます。
前作『世界戦史の中で~異星転生~』よりもかなーり前に完成していた作品ですが、適当に書いていた作品だったため、投稿するにあたり修正がかなり必要でした。
この作品は一応初めて完成させた作品でもあるので、設定が矛盾した点が多々あるかもしれません。
拙い文章ですが、温かい目で見てください。
よろしくお願い致します。
※不定期更新となります。
ある満点の星が輝く日の夜、一人の女性の命が尽きようとしていた。
王都にある一軒の家。かなりの大邸宅で、その規模からこの家の主の地位の高さがよくわかる。
「申し訳ありません…。手は尽くしたのですが、現代医療ではこれが限界で…」
医者はそう言って首を振ると後ろへ下がった。
医者はベッドに横たわる女性と、その夫を交互に見た。夫はこの家の家主である。
その判断を聞いた夫は悔しそうに唇を噛み締めている。
「はぁ…はぁ…あなた…あの子の事…を…よろしくね…」
命の灯火が消えようとしているのはこの家の主の妻であり、妻は息絶え絶えに夫に自分達の子供の事を頼むと言う。
夫は慌てて妻の口元に耳を寄せ、妻のか細い声を必死に聞き取った。
「フィル!何を言っているんだ。もう少し、もう少しで新しい魔術が完成する!だからまだ耐えるんだ!」
力強く、そしてゆっくりと夫は妻にそう言った。
実際の所、新しい魔術の完成はまだ先だ。まだ実験段階にも入っていない。しかし主はそう励ますしかなかった。
「ふふ。ダメよ…あなたがやろうとしていることは…禁忌の…古代技術なんでしょ?」
「なぜそれを!?」
夫は驚き妻の口元から耳を離し、妻の顔を見つめる。
たまたま話が聞こえてしまった医者もハッとした表情になった。
"禁忌の古代技術"。遥か昔、この世界を繁栄させた古代文明はその進んだ技術の高さから逆に滅んでしまったと聞く。
この大陸の様々な箇所で古代文明の遺跡は発見せれるが、その遺跡は政府が管理し、再び文明の崩壊という結果につながらないように世間には古代文明の技術については明かされてない。
本来であれば古代文明の技術研究など政府お抱えの学者以外が行うと法に触れ罪に問われる為、この医者は先程の家主の発言をあえて聞かなかった事にした。
なぜならばこの医者はこの家の家主に恩義を感じる者の一人であったからだ。
「あなたが考えている事なんて…お見通しよ…。それに…私はこれでも古代遺跡の研究者…だったのよ?」
妻の方はニコリと笑顔を見せる。妻の額には汗が滲み目は虚ろだ。それでも夫の顔を必死に捉えている。
「あぁ。分かっている!だが禁忌という程危険なものではないぞ?奴らはそれを理解せず全てをひた隠しにしているだけだ!それに古代の医療技術の研究は罪だが、世間に出すのはなんの罪も問われる法はない。つまり、研究はフィルがやったことにして、資金は私が出したことにすればいい!だから、だから…!?フィル?おいフィル!?」
妻の額の汗を拭き取りながら語りかけていた夫は妻が目を閉じ、息をしていない事に気が付く。
それからいくら妻の名前を呼んでも妻からの返事はなかった。
「…」
夫は言葉が出ず、ただ妻の手を握り続けた。
近くに居た医者が黙ってベッドの反対側へ回り、横たわるフィルという女性の首と手首から脈を測った。
「20時41分。残念ですが…奥様は天に旅立たれました…」
医者はそう言うと静かにフィルの腕を元の位置に戻した。
「そんな…」
「奥様…」
後ろに控えていた従者達はその報告に愕然としてる。
「嘘だ…嘘だぁああ…」
夫は明け方まで泣き続けた。
その表情は悲しみの他に怒りと憎しみが含まれていた。
雲一つない満天の星空はこの悲劇を見ているかのようであった。