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第12話 リリヤとファルゼンの幼少期その2

ガガガガガガッ!


 急に壁から音が聞こえた。

 透明な壁ではなく左右の壁からだ。


「あ?」


 何もなかった壁が開きそこから何かが出てくる。


「今度はなんなんだよ!」

 明らかに浮いて移動するそれは、頭と腕が付いている。足は無いがどのように浮いているかわからない。聖術の気配は感じられなかった。


「うわぁ。すげぇ…人形?」

 思わず見上げてしまうそれは、180cm程の高さがあった。子供にしてみればとてつもなく高いだろう。


 すると、急に人形の目が光り、


「<異常確認!索敵開始。不審人物発見>」


 いきなりそれが話し出した。人形はリリヤの方を見て続けて、

「<顔認証開始。認証出来マセン。バイタル値ドノ職員トモ合致シマセン。武装無シ。個人証明ヲ求メマス>」


「なな…なんだお前は!」

 いきなり話しだした人形に対し尻込みしてしまうリリヤ。


「<防衛ロボットデス>」

「は?てめぇふざけてんのか!」

 リリヤはだんだんとイラついてきた。


「〈イイエ〉」

「こ…このぉ!痛い目に会いたくなければ消えろ!」


「<暴力的ナ発言ヲ確認。個人証明ガデキルマデ保安部ニ居テモライマス>」

 防衛システムと名乗る人形がリリヤの腕を掴む。


「は、離せ!」

 掴まれた腕を無理矢理振りほどいたリリヤは、

「こいつでも喰らえ!」

 リリヤは背中に背負っていた折りたたみ式の弓を取り出す。そして、同じく背中に数本ある先が丸い練習用の矢を取り出し人形の顔に向け弓を引いた。


カンッ!


 金属に当たる高い音がした。




 当てられた方の人形は、




「<クフフ。ソノ程度カ?>」



 と、今までと違って挑発的な言葉を放つ人形。しかし、


「ザンウッド!」

 リリヤが聖術を唱えた。そして、人形に当たった後転がっていた矢が急激に成長し、木となって人形に絡みつく。


「はっはっは!これで動けないだろう!ざまぁ見ろ」

 高らかに笑うリリヤであったが、



「<デ?>」



 と、人形はリリヤに疑問を投げかける。


「は?」

 リリヤはその言葉に理解できず人形をじっと見つめると、人形はバキバキと無理矢理絡まっていた木をちぎっていく。


「え…あ…」

 リリヤはその光景にただ恐怖を感じるのみであり、



「<コレデ私ノ動キヲ止メラレルト思ッテイタトハ…。頭ガズイブント愉快ナ子供デスネ>」

 と、人形は言った。



 そして、

バキッ。


 と、リリヤを下から殴り、リリヤは宙に浮いた。

 早すぎて避けきれなかった。


「ぐはっ、げほっ!」

 地面へ叩きつけられたリリヤは息ができなかった。

 だが、近づいて来る人形にリリヤは睨み続ける。


「<ナンダ?ソノ目ハ>」


ガッ!


 人形はリリヤの足を勢いよく掴む。

「あぁあああ!」

 リリヤの悲鳴が部屋中に響きわたる。

「<ウルサイ>」

 そう言った人形はリリヤの頬を叩く。綺麗なパーンという音ではなく、濁ったバシッという音であった。

 リリヤの頬には二本の長い傷ができ、血が流れる。


「うぅ…」

 リリヤは力なくうなだれる。


「<少シヤリスギテシマッタカナ?ダガ、コレデ大人シクナッタ…>」

 人形は目を光らせ、今度はリリヤの髪を持ち、彼女を引っ張って行こうとする。

「うぁ…」

 痛みで顔が歪むリリヤ。もうだめか…そう思ったが、





「お楽しみの所、失礼致しますよ?」





 突然ファルゼンの声が部屋に響いた。見ると閉じていた壁は開き、そこにはファルゼンの姿がある。



「<ナ、ナンダオ前ハ!?>」

 人形が突然現れた人物に驚き、リリヤを離しファルゼンの方を向く。


「ライア・グリフィン」


 それを見計らったかのようにファルゼンが風系聖法を唱える。


「<グヒョ!?>」


 ファルゼンの聖法により、リリヤの髪を掴んでいた人形の手がはじかれる。そして、リリヤの髪が解放された。


「フィア・グリフィン」


「<ゲビョ!?>」


 人形は今度はリリヤより3m程離れた辺まで吹き飛ぶ。



「ゼグ・カルロット」

「バーナーウインドテイル」

「コールアチャーズリング」

 連続で聖法を唱えるファルゼン。次々と人形に攻撃が当たる。



「<ギャァァァァアアア、痛イ、熱イ、寒イィィィィイイイ>」

 人形がコロゴロ転がり悲鳴を上げる。


「おや?お人形が痛がるなんて不思議ですねぇ?」

 ファルゼンが見下したような笑を浮かべながら人形に近付く。


「<ワ、私ハ最新型警備ロボット…、痛覚ガアルンダ!感情ダッテアルンダヨ!>」


「ほぅ。そうでしたか。しかし…いつまで最新型でいる気ですか?何千年前のお人形さん?」

 ファルゼンはそう言うと、


「アルア・セイナングリース・カタ・ガタル」

 連続呪文を唱え出した。その手には光り輝く斧が握られる。

「そりゃ!」

 ファルゼンが呪文で出した斧を振り下ろす。その先には人形の腕があった。


「<グギャァァアアア>」


 人形の腕が分断され油が勢いよく流れ出す。


「本当に痛覚があるみたいですね。うひゃひゃ、…おっと」


 一瞬気が触れたような笑い声を上げたと思ったら、それを隠すように手で口元を塞ぐファルゼン。


「ふむ。興味深い素材ですので、少しずつ分解していきましょう」


「<ヒィィィイイ>」

 ファルゼンの言葉に恐怖の感情が頂点に達する人形は必死に逃げようとするが、ファルゼンの聖術や持参していた工具によって押さえつけられ分解されていった。





 数分という時間で、意外と早く終わった分解。いや、分解というほどバラバラになっていない。どうやら人形にトドメを刺したようだ。ファルゼンの近くには、動かなった人形の首が無残にも目の光を失って転がっていた。




「さて…」

 作業を終えたファルゼンがリリヤの方へ近付く。


「い、いや…」

 首を振りファルゼンが近付くのを拒むリリヤ。リリヤが拒む理由は、作業中の彼の顔が原因だった。

 ファルゼンは分解作業中、終始笑顔だったのである。一枚一枚人形に付いている部品を素早くはがしていく。

 人形の悲鳴は聞こえないと言わんばかりに黙々と作業を続けていた。

 そんな様子を見せられたリリヤの恐怖は頂点に達していた。が、ファルゼンはリリヤの傍まで来ると、しゃがみ込む。そして、


「大丈夫ですか?まったく、なんの考えも無しにいろいろ触るからです…。おや?足が…」

 そう言って人形に押さえつけられた足首を触ると、

「うぎゃぁ!」

 リリヤの足首に激痛が走る。

 リリヤは自分もあの人形のように悲鳴を上げるおもちゃとして遊ばれる。と思ったが、


「おぉっと、すまない。ほら、これで…」

 ファルゼンはすぐに治癒聖法を使用し、リリヤの足首を治していく。そしてダメージを受けた腹、背中、そして頬も治していった。


「よし、これで綺麗な顔も元通り」

 ニコッと笑ったファルゼンの顔には先程まで感じられた恐怖はなかった。

 時間をかけてゆっくりと治してくれた顔の傷跡は触ってもまったくわからない程回復した。

 しかし、足首の方は骨にヒビが入っていたらしく治りが悪い。少し治ったとしても歩くのは難しいだろう。


「このままでは一人で帰るのは無理、か…。よし、私の背中に乗りなさい」

 ファルゼンがそう言うと、しゃがんだ格好で背中を向ける。


「い、いいのか?」

 リリヤが不安そうに聞くと、


「構わないですよ。私が責任を持ってあなたを家に送ります」

 素直にファルゼンの背に乗るリリヤは、送られている途中どのような会話をすればいいのか迷う。いや、会話をしない方がいいのか…。だがここは素直になった方がいいと思い、

「その…悪かった。色々と…」

 と、リリヤは今までの事をまとめて謝った。

「いいんですよ、別に…。それより、この程度の怪我ですんでよかったですよ。このような遺跡には我々の想像を超えたモノが沢山あるのです…」


「わかった…。それより、よくあの部屋の扉を開けられたな。取っ手は無かった気がしたが、扉は簡単に開いたのか?」

 と、尋ねるリリヤ。

「いえ、古文書に描かれたパスワードがありましてね。たまたまそれを入力したら開いたのです」

「パスワード??」

「鍵のようなものです」

 ははっとファルゼンは笑って答えた。

 ファルゼンは優しかった。

 今まで敵対していたのが嘘のようにリリヤはファルゼンに好意を持った。が、

「いやぁ~。でも、君も女の子のように泣いたりするんだねぇ」

 そう言って「ひひひ」といやらしく笑うファルゼンに、つい先ほど持った好意は消し飛んでしまった。

「ぐ、この…」

「ま、これで無駄ないがみ合いも無くなったとの事で、これからもよろしくお願いしますよ?」

「ぐぅぅう…」

 それから長年に渡りファルゼンに頭が上がらないリリヤであった…。(最近はなんとか反抗できるようになった…。)




 その後、ファルゼンが発見した遺跡はルグニア王国とエルフ国の共同研究という形になり、一般の人間は全く入れなくなってしまった。


 もちろん遺跡に入って危ない目にあった事は直ぐにバレて二人共かなり怒られた。




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