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第11話 リリヤとファルゼンの幼少期その1


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 5年も前の話である。



 リリヤは当時12歳、ファルゼンは13歳であった。


 ファルゼンの母親はルグニア王国のリース村出身であったため、夏休みを利用して祖父母の家へ遊びに行っていた。


 リリヤは当時のガキ大将であったため(今でもではないだろうか…)、他所の国から来た人間(この世界は魔族、エルフ、人間という分け方があるが、全てをまとめ『人間』という分け方もある)が珍しく、ファルゼンにちょっかいをかけてやろうとリリヤは考えた。


「おい、お前達。お前ら三人であの家に来た他国の奴を驚かせてこい」


「「「へぃ!リリヤさん!」」」


 最初に三人の男の子を先兵として送った。しかし驚いたことに、


「うぅぅ…」

「ちくしょー…」

「いてぇよぉ…」


 男の子三人がボロボロになって戻ってきた。


「ふぅ。貴方がこのような下らない事を考えた主犯ですか?」


 そして更に驚いた事に一緒にファルゼンが居るではないか。


 聞くところによるとちょっかい(会話で絡んだだけ)を出した途端聖術でボコボコにやられてしまったとの事。その証拠に三人の男の子の体のいたる所に擦り傷などがある。


 これに怒ったリリヤは、今度は十人程の男女で囲みファルゼンを"フクロ"にしようとしたが、なかなかと抵抗されうまくはいかなかった。

 結果、リリヤ優勢であったが引き分けという形になってしまった。




 リリヤにとってたった一人相手にここまでやられたのは初めてであり、衝撃的な事件であった。その為喧嘩があった翌日には、ファルゼンを自ら監視することにした。


 ファルゼンの行動は理解できない事ばかりであった。家に居て読書をすることはまぁいいだろう。だが、弁当を持って森へ行き古代遺跡を探索していた。


 リリヤはよく友人達と遊び目的で古代遺跡に行くことはあるが、ファルゼンのように一人で行くことはしない。

 更にファルゼンはノートを取り出し遺跡の様子を書いているようであった。


「なんだ…?あいつは何をしているんだ?」

 リリヤはそんなファルゼンの行動に疑問だらけであった。




 別の日には森の何も無い場所へ行き当たりを見渡し、地面を探っている。それを続けて一日が終わる。という事もあった。


「(王都から来たと言っていたから森が珍しいのか?それとも地面ばかり見ているから珍しい薬草でも探しているのか?)」


 と、リリヤは最初そう思っていたが、それが何日か続くと不気味に思えてくる。

 自分が知る限りその森には何も無いはずである。




 だが、疑問に思っていたその行動の全てが解る日が来た。ファルゼンを尾行して六日目の朝であった。


 いつもと同じように遺跡に行くファルゼン。遺跡の中でもかなり広い部屋へと入っていく。

 ファルゼンは部屋の中央まで行くと急にしゃがみこみ遺跡の石畳を取る。


「(遺跡を壊しているのか??)」


 国が管理している遺跡を壊すことはもちろん御法度であるが…


「(なんだ?ボタン??)」

 リリヤは今までと明らかに違う行動をするファルゼンを見るのに夢中であった。


 ファルゼンは手帳を片手に石畳の下にあったボタンを押していく。

「???」

 ニヤリと笑うファルゼンは石畳を元に戻しリリヤが居る入口方向へと戻ってくる。


「(ヤベ!)」

 慌ててリリヤは入口へと引き返し近くにあった茂みへと身を隠す。


 少ししてファルゼンが遺跡から出て、そのまま森の方向へと消えていった。


「(いつもの方向か…。あっちにゃ何も無いだろうが…)」

 リリヤは毎日毎日意味の無さそうな事を同じように繰り返すファルゼンに段々と恐怖を感じてきた。

 何度も引き返そうと思ったが、やっぱり気になるためファルゼンの後をついて行く。


「!?」

 リリヤがファルゼンの後へついて行った場所はいつもの場所であるはずであるが、明らかに違っている箇所があった。


 階段が地面から出ていたのである。


 正確には地面から入口が盛り上がり、扉を開けるとそこに階段があったのである。


「(なるほど…さっきの奴の行動はこの入口を出すためだったんだな)」

 リリヤは納得し、ファルゼンの後を追い暗い階段を降りて行く。



「なんだこれは…」

 入ってみて思わず口に出してしまったリリヤ。そこには地下のはずなのにまるで陽の光が降り注ぐような明るさをした天井や壁、暖かな光に包まれたその空間は幻想的なものであった。


「(まずいまずい、奴はどこだ?)」

 我に返ったリリヤはファルゼンを追う。



 しばらく進むと大きな扉の前へ着く。

「なんだぁ~、これは??」

 なにやら大きな装置がある部屋にたどり着いた。奥の部屋でファルゼンが何かをしている。


「ん?テーブル?」

 リリヤの目の前には白いカウンターがある。


「不自然だな…。お?」

 机の下にボタンがあった。


「なんだこれ?」

 なんの疑問も持たずリリヤはボタンを押した。すると、何かに押し戻される感覚を全身で感じ、自らの意思を反してカウンターから勝手に体が離れる。

「???」

 自分の身に何が起きたのか考えた瞬間、


ビーッビーッビーッ!


 警報が鳴った。


 音に気が付いたファルゼンはリリヤの方へ振り返る。


「ヤヴェ!……ははは、来ちゃった…」


 リリヤは目のあったファルゼンに向けテヘッと舌を出して笑う。


「一体何を!」

 ファルゼンが血相を変えこちらへ走りよってくる。だが、


ガシャン!


 ファルゼンとリリヤが居る部屋の間に透明な壁が出来た。

「うわわわぁあ!びっくりした」


 リリヤはいきなり目の前に出てきた壁に目を丸くする。

「もう、さっきからなんなんだよ!」

 リリヤがそう文句を言う。


「―――!――――――!!」

 ファルゼンは透明な壁の向こうで何かを叫んでいるが聞こえない。

 それを見たリリヤは急激に優越感に浸れた。


「は…ははは!はっはっは!!ざまぁ見ろ!閉じ込められてやがるじゃねぇか!」

 リリヤは必死な形相で叫ぶファルゼンを見て高笑いをする。


「今まで散々生意気な事をしてきたツケだな!これに懲りて二度とこの私、リリヤ様に逆らわない事だな!そうすればそこから出してやってもいいぞ?」

 無論リリヤはこの透明な壁の消し方を知らない。

 いや、再びボタンを押せば消えると思っていた。


 しかし、リリヤの機嫌の良さは長くは続かなかった。



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