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第9話 エルフ国へ行こう


 そして一夜明け…、一行は軍の馬車の発着所へと向かった。



「リリヤ。昨日の兵士についての事なんだが、あれは流石にやりすぎではないか?いくら自分のペガサスだといっても…」

 ルージュはリリヤに昨日の事について注意してみた。


「ルージュ。私はあのペガサスを家族として接しているんだ。父ちゃんと母ちゃんが仕事で忙しかったから、私は常にペガサスの『フィーナ』と一緒だったんだ。そんなフィーナが危険な場所へ連れて行かれるなんて許しておけねぇよ…」

 と、リリヤは反論する。


「だが、あの兵士が悪いって訳じゃないだろう?あの兵士が連れてきたんじゃないんだ。幸い昨日の内に連絡術で確認がとれたんだろ?まぁ、気持ちはわかるぜ?俺の親父も大切な竜の相棒『ミミ』ちゃんがいるからな」

 アルバートがそう言うと、


「ミミちゃん?」

 と、リリヤは不思議そうにしている。


「そうドラゴンのミミちゃん」

 アルバートは表情を変えずそう答える。

 その答えにリリヤは複雑な表情を浮かべていた。ドラゴンに似合わない名前を付けてるなー。と思っているが、リリヤは口には出さない。


「あー。とにかくわかったよ。明日行ったら一言侘び入れるよ」

 と、リリヤは言った。

 するとカインが、


「そうそう。リリヤは可愛いんだから、怒ってばかりじゃもったいないよ!僕は笑っているリリヤの方が好きだなぁ…」



「「「………」」」



 カインの一言で周りの空気が固まる。


「おま…」

 アルバートの表情が強ばる。


「え?え、え?」

 カインは周りの雰囲気の変化に戸惑う。


「なんだカイン、私を口説いてんのか?」

 ククッと笑うリリヤの言葉で気付いたカインは、


「ち、違う僕はそういうつもりで言った訳じゃ!僕にはネネが…!?な、なんでもない」

 慌てて口を噤むカインにさらにリリーは追撃する。


「ネネって誰だ?ルージュ」

 リリヤは知らない名前が出てきたのでカインに聞いてみた。

「私達の幼馴染でカインの想い人だ」

 ルージュも悪乗りをする。


「い、いや!あの…」

 顔を赤くするカインを見て笑う一同であったが、ここでリリヤは、


「笑顔か…よし」

 と、邪悪な笑顔を浮かべながら何かを思いついたようであった。

 綺麗な顔が台無しである。


「あ、あんな笑顔…見たことが無い…」

 そうルージュが驚愕の表情をしながら言った。無論悪い意味で、である。


「もしかして、あれが精一杯の笑顔なのか?」

 そう心配するアルバートに、


「そうでないことを願う…」

 と、ルージュは言った。






 昨日兵士の胸ぐらを掴んで怒鳴り散らした場所へと再び来た一行は、再びその被害にあった兵士の元へと行った。

 目的はルグニア王国の手違いでエルフ国へ送ってしまたペガサスに関する書類と、アルバート達の紹介状である。


「あ!」

 顔が青くなる兵士。明らかに怯えている。他の兵士はリリヤと目を合わせようとせず、自分の仕事に集中する。


「おい、あれ…」

「あぁ。昨日来たえらくベッピンさんのエルフだ…」

「俺、あんなに可愛いのにおっかねぇなんて今も信じられねぇよ…」

 と、口々に周りの兵士達が言っていた。

 リリヤはもうすっかり有名人だ。


「あ…」

 今日も受付に居る昨日被害にあった兵士は誰かに助けを求めようとしたが誰も目を合わしてくれない。

 アルバート、ルージュ、カインはそんな兵士を見てなんだか可哀想に思えてきた。


 リリヤがすぐ近くまで来ると兵士は覚悟を決め、

「あ、しょしょしょ紹介状ですね?ここ、こちらになりますであります!」

 と、慌てて対応する。

 兵士の顔はキリッとしているが、言葉がおかしい。


 兵士は既に用意してあった紹介状をリリヤに両手で渡す。


 それを見たリリヤは紹介状を受け取り、少し寂しそうな表情をして、さらにそこから微笑み兵士の手を取った。

 そして、




「有難うございます。あのぉ、昨日はごめんなさい…。私、大切な家族が危険なところに行ってしまった事に動揺してしまってあのような事を。どうか許していただけませんか?」



 その顔はとても美しく、そこに居たのは守ってあげたいような女性No.1に輝く事間違いない人物だった。


 昨日のあの鬼のような顔をした女性ではない。


 別人の。それもとびっきり美人なエルフがそこに居た。


 まるでアルバート達が最初に出会った言葉を発する前のリリヤのようだ。



「え!?」

 これには昨日被害に遭った受付の兵士は驚いたようだ。



「「「!!!???!?!?」」」

 影からこっそり見ていた兵士もその変化に驚愕してる。



「い、いえ!こちらこそ、申し訳ありませんでした」

 兵士は先程まで青くなっていた顔が赤くなってきた。


 そう言われたリリヤは満面の笑を浮かべ、兵士の手を取り自分の胸に当てこう言った。

 ムニュッと効果音が出そうな感じで兵士の手が胸に埋まる。


「ほわ!?」

 兵士。顔の赤さが加速する。



「野郎…」

「あいつ…」

「彼女が居る癖に…」

 受付の兵士は他の兵士から嫉妬の視線を浴びせられる。

 一難去ってまた一難。

 彼には別の危機がこの後待っていそうだ。



「私を許していただけるのですか?あぁ…。有難うございます。どうか貴方様に天の御加護があらんことを…」

 リリヤの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。



「なんだかあれだけを見ているとエルフみたいだな…」

 と、アルバートはボソッと呟く。

「エルフだよ彼女は」

 カインはアルバートにそうツッコミを入れる。

「絶対その言葉をリリヤの前で言うなよ…」

 と、ルージュに言われアルバートは真面目な表情で頷いた。



「では、皆様。ありがとうございました」


 最後にリリヤはとびっきりの笑顔でそう言った。



「「「「あっ!」」」」

 兵士は一瞬で悩殺されてしまった。



 周りに居た兵士たちも影響が及び、半日ほどそこの部署は機能しなかったという…。





「クハハハ!おい見たか?あいつらの間抜け顔?」

 兵士達が居た受付から離れ、現在馬車の発着場に居た。

 既にペガサス達はいつでも飛び立てるように準備がなされていた。

 そこでリリヤは大笑いをしている。


「昨日の笑顔はあれをしようとしていた笑いだったのか」

 と、ルージュは言って呆れている。


「おう!ルージュが昨日の私の対応に不満そうだったからな。ちゃんと謝って置いたんだぜぇ?」

 そう言って笑うリリヤ。

「尚悪いわ!」

 ルージュは言葉を強くしてそう言った。

「女って怖いな…」

 アルバートの率直な意見を聞いたカインは、チラッチラッとルージュを見る。それに気付いたルージュは、

「私には無理だよ」

 と、半ば呆れた顔で言った。



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