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社に響く楽の音を  作者: 紫南
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04 時間短縮が基本

2016. 6. 8 23:00投稿分

響華はベッドの中、カーテン越しに朝日を感じて目を覚ました。


いつもとは違い、不思議な夢を見た気がして、緩慢な動きで身を起こす。


「月姫を見たような……あと不良とゴスロリ?」


どんな夢だったかは覚えていないが、それらの人物の映像が頭に焼き付いていた。


「ゴスロリ少女を、不良が誘拐する夢?……どんな意識が働いたんだろ……まぁいいか」


夢なのだから、何らかの潜在意識が働いたのだろう。だが、全く思い出せない。


何だか胸がざわつくように感じるが、どうでも良いと切って捨てる事にする。


響華は素早く制服に着替え、身支度を整えると、キッチンへと急いだ。


キッチンでは、朝方帰ってきた両親が朝食とお弁当の準備をしている。


「おはよう」

「あら、まだ早くない?」

「もう少し寝ていてもいいのに」


出勤時とは打って変わって、ラフな格好に着替えた二人は仲良くキッチンの中に立っていた。


二人とも料理が好きなのだ。


「お弁当詰めたりしたかったから」

「いつものようにやるわよ?」

「そうだよ。お父さん達に任せなさい」


そう言う両親だが、一つ問題があるのだ。


「デコ弁、キャラ弁は遠慮する。母さん達は見た目に走るんだもん。時間が掛かる上に無駄に材料使うでしょ。そういうの迷惑」

「め、迷惑……」

「無駄……」


事実と正直な意見を告げられ、ショックを受ける二人。それを無視して、響華は戸棚から丸い小さなボール型の保存パックを取り出す。


「それ、お弁当箱じゃなくて、保存用のパックよ?」

「うん。これでいい」

「えぇ⁉︎」


驚く両親をよそに、響華はご飯を底に敷き詰め、その上に玉子焼きやウインナー、サラダさえも綺麗に並べ、最後に密閉の蓋をすると、用意されていた大きなハンカチで包み、鞄に入れてしまった。


「ちょっ、ちょっとそれを持っていくつもり⁉︎」

「横になったよ? こぼれたらどうするんだ?」


響華は、焦る両親など目に入っていないかのように、朝食として用意されていた食事を始める。


「あれでいいんだよ。いっぱいまで詰めたし、密閉容器だからお弁当箱よりあんまり片寄らないよ。こぼれないしね。おかずとご飯を別々に食べてたら時間がもったいないから」


響華としても、考えた結果なのだ。昼の休憩は長いとはいえ、響華には短い。


午前中の授業で出された課題をやり切り、学校で出来る勉強の類いは全てそこでやってしまいたいのだ。


「どんぶり飯を考えた人は偉大だね。時間短縮は生きていく上で重要な課題だもの」


そう言いながら、パンの上に目玉焼きとベーコンをのせてぱくつく。


「放任し過ぎたのかしら……なんだか別の血を感じるわ……」


母はどうやら、自分達とは性格が違うなと感じたようだ。


二人ともきっちりとした事が好きだ。料理の時の分量など、計らないと気が済まない。お皿に料理を盛るのさえバランスや見た目の美しさに拘るのだ。


そんな二人からすれば、先ほどのお弁当は理解出来なかったらしい。


「性格とかは、環境に作用されるのが大きいんじゃないかと思うんだよね。それとも橋の下で拾ってきた?」


二人の子どもで間違いないかは分からないなと響華は冷めたように言う。それに当然、母は怒った。


「そんなわけないでしょ!」

「こ、これが……反抗期……」


どうやら父は少々現実逃避に走っていた。


「ごちそうさま」

「もう⁉︎」

「……反抗期……」


さっさと朝食を済ませた響華は、両親に構わず学校へと出かけていくのだった。


読んでくださりありがとうございます◎

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