14 紳士な対応
2016. 6. 15
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15日までにはと思っておりましたが、残念ながら辿り着けず……後5話ほどの予定ですので、可能な限り20日までには完結させます。
響華は心地良い揺れと、傍にある温かさに微睡みながら、ゆっくりと目を開けた。
「起きたのか?」
そんな声が上から降ってくる。
不思議に思ってほんの少し上へと目を向けると、とても近くにその人の顔があって驚いた。
「……これは……?」
目を瞬かせながら状況を確認する。どうやら律樹という青年に横抱きにされて運ばれているようだ。
「お前の家、もうすぐだろ。もう少し大人しくしとけ」
「……うん……」
身じろぐことも憚られ、体が強張らないように気を付ける。日は完全に落ちているので、外灯の光が眩しく感じられた。
「お前、何をやったか覚えてるか?」
「何を……?」
尋ねられてそういえばと思い出す。突然、首飾りが熱く感じられて、それを握ったのだ。そして、何かが体から抜けていくような感覚があった。
「俺らの間じゃぁ、あれを霊位を上げるっていうけどな。分からんだろ」
「うん」
意味がわからない。だが、響華にはあの時、何かが周りを囲む感覚と、神の姿がいつもよりはっきりと見えるようになった事に気付いていた。
「神っていうのは、俺らのこの世界とは違う次元に存在してる。簡単に言うと、居場所がこことはちょっとズレてんだ。だから、ちょい透けて見えたりする」
「だから触れない?」
「おう。あっちから触れんのは、単に力で干渉してるからだ。まぁ、そこは神の存在の仕方とかの話になるから、それは置いとくぞ」
この世界には幾つもの層があり、存在する層位が違うために、はっきりと見えないのだという。
「その違う場所にいる神と、今俺らがいる場所のズレを強引に修正して、同じ場所に持ってきたのが、お前がやったことだ」
響華は、神の存在する層と同じ場所、状態にあの場を変えたのだそうだ。
「それも、あの場所だけを封囲してる。長くは保たんが、篠神は朝までと言ったからな。それだけ保たせる封囲術と同時となると、倒れて当然だ」
「封囲?」
「結界って言ったら分かるか? 封じ囲むものってのが封囲術だ」
そんな話をしていれば、家の前に着いていた。
「家には誰もいないのか?」
律樹は家の灯りはついているが、まるで人の気配がしないと顔を顰める。
「母さん達は仕事に出てるから。帰ってくるのは四時近く」
「へぇ……」
その時、響華は不意に聞こえてきた友人の音に気付く。
「……優香?」
「ん?」
響華が顔を向けた方へと律樹も目を向ける。すると、優香が駆けて来ていた。
「響華っ」
息を荒げて駆け寄った優香は、律樹の腕の中にいる響華を心配そうに覗き込んだ。
「よかった。ばぁちゃんが響華が倒れたって言うから、焦ったよ……んん?」
そうして安心したからか、今になって響華が律樹に抱えられている事に気付き、優香は二歩下がる。
「優香?」
不思議に思う響華と律樹の前で、おもむろににスマホを取り出し、写真を撮った。
「へ?」
「おいっ?」
「あ、ごめん。思わず」
そう言って優香は超速で何やら文字を打つ仕草をすると、何事もなかったようにスマホをポケットにしまい、改めて尋ねた。
「それで、どうゆう状況?」
「……」
面白そうな事を期待するように光る瞳。それを見て、響華も今の状況を思い出す。
「あ、お、下ろして……」
「お、おう……」
今更ながらに恥ずかしくなり、響華は顔を赤らめる。それは律樹も同じで、少々強張った動きで響華を下ろした。
「ふむふむ。お兄さん、力があるんだね。普通、気絶したりしたら、背負って運んだ方が楽だろうに」
「……別に……女一人くらい問題ねぇよ……」
真っ直ぐに見つめる優香に、律樹は堪らず気まずそうに目をそらして言う。その顔はほんのり赤くなっていた。殴られた場所も赤くなっているが、それとは違う。
「へぇ。あれじゃないんだ? ほら、やっぱり背負うと触るもんね」
「っ……!」
明らかに動揺する律樹だが、響華には優香の言わんとすることが分からなかった。
そして、優香がクスクスと笑いながら続ける。
「響華は着痩せするからね。役得だと思えば良かったのに。お兄さん、見た目に似合わず、人生をすすんで損しながら生きるタイプなんだね」
「てめぇ……っ」
今度は怒りに顔を赤らめる律樹を見て、響華が優香へ問う。
「優香、何の話?」
「うん? ふふふ……」
「くっ……」
勝ち誇ったような笑みを律樹に見せ、優香が口を開く。
「おんぶすると、当たるっしょ?」
「ん?」
首を傾げる響華に、優香は嬉しそうに説明する。だが、律樹としては、このまま話して欲しくない情報だった。
焦るような素振りを見せる律樹など、優香には既におもちゃでしかない。だから構わず続けた。
「ふふふっ、紳士なお兄さんは、胸が当たるのを気にして、わざわざお姫様抱っこにしたんだよ。いやぁ、本当にお兄さんは見た目に似合わず誠実な人なんだねぇ」
「ばっ!」
「あ……っ」
響華と律樹は一気に真っ赤になってお互い目をそらした。
それを優香が心底嬉しそうに、楽しそうに見つめていたのだった。
読んでくださりありがとうございます◎
次回投稿は23時です。




