②
礼儀の正しい変質者が去って行った後に、彼女は気づいた。
自分の貴重品を入れたままカバンを渡してしまったのだ。
まだ変質者が近くにいると思った彼女は叫んだ。
「おかずがカバンの人ぉおおおおおおお!!!!!!!
あたしの財布返してええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
実は彼女、お酒も少なからず入っていた。
それゆえ先ほどの変質者が、ひったくりだったという可能性は全く考えていない。
変質者と信じ込んでいるため、財布が返ってくると思いんでいる。
すると驚くことに、陰から先ほどの変質者がおずおずと姿を現した。
「すっ、すいません、そうですよね、あの、あの、返しますので、落ち着いてください。」
「そうよ、あんた、カバンで抜くなら財布返しなさいよ。」
変質者の下出な態度に慣れた彼女は彼の手からカバンをひったくった。
カバンから中身を取り出そうとした彼女は、自分の持ち物が意外に多いことに気づかされた。
これではカバンを返せないと思った彼女は、何も考えずこう言った。
「ちょっとあんた、あたしの家近いから近くまで来なさい。
あたしの荷物多いから家で出すわ。それからこのカバン、あ、げ、る。」