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①
友達との約束をドタキャンされてしまった少女は、暗い帰り路を歩いていた。
急にメールで、「ごめんね、行けなくなっちゃった」とだけ連絡され
少し気分が波立った彼女は、夜遅くまで繁華街をさまよってしまった。
苛立ちも発散して晴れやかな気持ちで街灯を通り過ぎていると、後ろから人の気配がした。
なんだろう。と思ったのは時遅し。誰かに抱きつかれた。
「っ!?」
急なことで身を固くした少女は、何もできずに突っ立ってしまった。
「や、や、やめ…」
やめてくれ、離せという旨を伝えようとしても声は出ない。
すると後ろから
「カバンを…あなたの背負っているカバンをください…」
と声が投げられた。声は野太く低い。そしてその声の主の手は
彼女の色の白い柔肌の脚をゆっくり大切そうに撫でまわす。
「……ひぃっ……。」
ふっと体が軽くなる。どうやら彼に離されたようだ。
女性のカバンをおかずにする新手の変質者のかと思った彼女は、彼に背負っているカバンを震える手で渡した。
「ありがとうございます……。」
丁寧に礼と会釈をした彼は、どこかに去ってしまった。