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老い

作者: 抽冬一人

 

 むき出しになった池の上で、老人は宙を仰いだ。それは少しあるいたところにある公園で、彼は夢中で枯れ蓮を掻き集めていた。色を抜かれた蓮は老者の咳のようだった。冬も終わろうとしていて、公園の池は水を抜かれ、すっかり干上がっていた。

 麻袋に詰め込まれた蓮を持ち上げると、池を出て、薄い土の上に戻った。陽は暮れようとしている。地面に拾い集めた蓮を盛り上げると、彼はライターでそれに火を点けた。湿気っていたが、しばらくして火が点いた。

 薄茶のけむりが、つうと高く昇っていく。焼けた匂いに、眼は潰されるようだった。皺だらけになった手を火にかざした。久方ぶりの温もりだった。最後の食事も思い出せない。彼は皮と骨になりさがっていた。しばらくして、膨らむように指先へ血が通い始めた。


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