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東方龍酔歌  作者: しらゐ ひふみ
第一章
3/3

龍と思い出

「霊夢~、遊びに来たぜー」


急に雨が止んだ午後のある日、博麗神社に白と黒の衣装を身に纏った魔法使いの霧雨 魔理沙が霊夢の目の前に降りた。

名前を呼ばれた当の本人は縁側で体の半分を隙間の中に入れている八雲 紫と話している。


「あら、魔理沙、急に来るのはいつもの事だけど…今回はなんの用?」


霊夢は湯呑の中に入っている薄いお茶をすすり魔理沙に聞いた。


「ふふ、それじゃあ頼んだわよ霊夢」


紫は怪しい笑顔を浮かべると隙間を閉じ帰ってしまった。


魔理沙はそれをみるとニヤッと笑い霊夢の横に座った。


「なあなあ!何話してたんだよ!秘密の会合ってやつか?」


霊夢はめんどくさそうな顔をすると魔理沙の方を向き言った。


「…蔵を開けてくれって頼まれたのよ…それで…あんたは何しに来たの?」


魔理沙は思い出し、霊夢の前に興奮気味に言った。


「ああ、そうだった!急に晴れただろ?霊夢これって異変だぜ!!」


その一言を聞くと霊夢は呆れた顔をした。


「…また魔理沙が変な事を…。大方、今回の異変も天気だし、またあの天人がやってんじゃないの?」


「そうか?それと虹が空に一直線に空へ伸びたんだぜ!これはあの天人の仕業じゃないだろ?」


「…それは…レミリアのとこの門番よ…きっとスぺカの練習でもしてたのよ」


「…そうか?というより蔵って?」


魔理沙がまた思い出したように霊夢に聞いた。


「…物をしまうとこよ」


「そうじゃなくて!…博麗神社の蔵の中って何もないだろ?」


「失礼ね。地下にはあるわよ」


「地下?」


「ええ、紫の持ってきた外の私物が入っているわ。というよりほとんどが紫の物」


「へえ~…なあ霊夢~」


「ダメよ」


「な!なんでだよ!!」


霊夢は魔理沙の次に言おうとしてる言葉が大体わかってしまった。彼女が猫なで声で言う時は必ず物を『見せて』『貸して』『触らせて』のどれかだ。


「魔理沙…これはとても危ない物しか置いてないのよ?」


「ふーん…なんか実感湧かないな」


「はあ…あんたに何言っても無駄だったみたいね」


魔理沙はゴロンと縁側に寝そべり空を眺めた。


「最近はなんもなくて暇なんだぜ…」


「暇でいいじゃない、私は大助かりよ」


霊夢はお茶をすすろうとするが湯呑の中が空なのに気づいた。

急須を持ち湯呑に注ごうとしたが、中身が出なかった。


「…なあ霊夢~」


「なに?」


霊夢が苛立った声で魔理沙の方を向いた。


「弾幕ごっこしようぜ!!」


霊夢は湯呑を置き、ニヤッと笑う。


「いいわよ?手加減はしないから」


「ストレス発散にはやっぱりこれだぜ!!やろうぜ霊夢!!」


「ええ…始めましょう」


霊夢は御幣を手に持ち縁側から離れた。






「…龍よ…また寝ているのか?」


ん?誰だ?なんか懐かしい感じがする…ここって


目を開けると満点の星空の真ん中に満月とは言えないがまん丸に成りかかっている月があった。


「ここ…どこ?うわあ!」


どうやら小さな船の上の様で体を起こそうとした時、大きく揺れてしまった。

釣り竿を持った男が私を見ていた。

若い男だ。

男は自身の胡坐の上に書物を乗せ水面に映った月に向かって釣り針を垂らしていた。


「何してるの?」


「見て分からないか?龍よ。釣りをしているのだ」


「ふーん…釣れたの?」


「釣れるわけがない…」


そんな事を言っている間に釣りの浮きが沈んだり出たりを繰り返していた。


「ねえ、魚。」


「ん?ああ…」


彼は釣り竿を上げ、釣り針にかかっている魚を釣り針から抜き、魚をまた川に流した


「なんで逃がすの?」


てっきり釣った魚を食べると思った。

しかしこの男は違った。


「龍よ。俺はこの水面に映った月のように手の届かぬ物が欲しい。」


「手の届かないもの?」


「ああ、人間は欲にまみれた生き物でな。不可能な物ほど欲しくなるのだよ」


「ふーん…それなら私が取ってきて上げようか?」


彼は私の頭を撫でると口元を少し緩ませた。


「…そうだな…もしかしたらお前にも手伝ってもらうかもしれんな」


「うん。君の恩はまだ返していないしね~」


「龍よ。そろそろ戻るか」


「うん」


彼が船をこぎ、岸に向かおうとする途中に大きな城がありその城の中から一人の綺麗な女の人が出てきた。金色の髪の女の人だ。


彼女が私と彼を見ると微笑んだ。


「綺麗な人だね~。」


「…ふん。…龍よ、狐風情に騙されるな」


「狐?」


「ああ、狐だ」


彼が私の方を向いた瞬間、私は現実に引き戻された。



『…夢か』


木陰の下、私は木に寄りかかりながら周りを見た。

もう日が沈みかかっているとこだった。


『………お酒臭い…』


自分自身の匂いを嗅いでみたがやはりお酒臭い。

確かに飲みすぎた気がするな…今度からもう少し考えて飲もう…。


遠くで誰かが話している。

私はそこに行ってみることにした。



「ふー…これで完璧だね」


「すみません、直すの手伝ってもらって」


勇儀さんのおかげで壁が完璧に修復されていた。

二人で直したが大体4時間くらいで終わった。

これでこれで咲夜さんやお嬢様に怒られないで済むな。


「さてと…あたしはそろそろ帰ろうかな」


「わかりました。お気を付けて…」


勇儀さんが帰り支度をしている時に仙龍が眠気眼で私たちに近づいた。


『美鈴。お姉さん帰っちゃうの?』


『仙龍、起きたの?』


「おや?お嬢ちゃん起きたのかい?」


彼女は勇儀さんに抱き着きこう言った。


『ねえ、帰らないで』


勇儀さんは言葉が分からなくても彼女の言っていることが分かったみたいだ。


「今日は帰るよ、お嬢ちゃん今度はお嬢ちゃんの方から来な?そしたらいい酒飲ませたあげるよ」


勇儀さんは彼女の頭を撫でて彼女に笑いかけた。


『仙龍?勇儀さん帰らなきゃ、ね?』


『うん…バイバイ、お姉さん』


彼女は勇儀さんから離れ、彼女に手を振った。

勇儀さんはそれを見ると、満足したように帰って行った。


彼女はそれをまっすぐな綺麗な瞳で見ていた。

夕日に照らされながら寂しい笑顔を浮かべる彼女に私は見惚れてしまっていた。


彼女が手を振り終えた瞬間、仙龍が私に向かって笑いかけた。


その時彼女の顔を改めて見たら、何故か胸が高揚してしまった。


『美鈴、今日はゴメンね。手伝えなくて』


『あ、い、いえ!大丈夫ですよ!!』


『うん、そっか…暗くなってきたね』


『そうだね…そろそろ夕飯の時間だな』


『もうそんな時間か~。なら私も帰らないと』


彼女が酒壺を担ぎ、帰り支度をし始める。


………夕飯…誘ったら、食べてくれるかな?


ふと、私の頭にそのような事がよぎった。

べ、別に下心は全くはないのだが…ただ単に『彼女が知りたい』それだけだった。


『ねえ、仙龍。今日…「めーりーん!!!」


私の小さな声を遮り、塀の中から妹様が飛び込んできた。

その小さな体が私に飛び込んできた。


「咲夜がね~ご飯だって」


「ああ、もう日も沈んでるし…そんな時間時間ですよね」


「ね~早く行こうよ~」


「分かりました。」


私が苦笑いをしかできない中、仙龍がそんな私たちを見ていた。


妹様が彼女に気づくと、私から離れ、彼女に近づいた。


「ねえ、あなた誰?」


『?。美鈴なんて言ったの?』


『えっとあなた誰?だって』


「ねえ、それ何語?美鈴~」


「えっと…えっと…」


仙龍の翻訳より、妹様の質問の方が早すぎて、答えられない。

私が困っていると仙龍が妹様の頭を撫でて、手を振り私に言った。


『今日は帰るね、バイバイ美鈴』


『あ!ま、まって!!』


彼女は私に背を向けると空へ飛んで行ってしまった。


「美鈴~なんて言ってたの~」


「『今日は帰る』そうです…」


「ふ~ん…そっか、まずご飯食べよ~」


「行きましょうか、妹様」


…はあ~。


私は心の中でため息を付き、月の出かかった空を見た。




『………』


『どうしたんだ?仙龍』


藍が私に聞いてきた。

ぼーっとしていた私を藍が心配そうな顔で見ていた。


『んー…ちょっとねー』


『…悩み事?話してくれないか?』


『…私の故郷とは違うんだね』


『そうだな。確かに私たちの故郷はもうない。しかし』


藍が言おうとしている事が分かり、彼女の言葉を遮り言った。


『うん…新しい場所に慣れなきゃいけないことは分かるよ。』


『そうか…よし!ならこの国の言葉を教えてやろう』


『お、いいね。挨拶はなんて言うの?』


『ちょっと難しいぞ、朝は「おはようございます」昼は…』


『ちょ、ちょっと待って!!朝昼晩、挨拶が違うの?』


『まあな。よし、続けるぞ』


『分かった』


私はその晩、藍に厳しいくらいのレッスンを受けた。





「勇儀、頼まれたもの持ってきたわよ」


「おお、ご苦労さん、華仙。まあまあこっちに来たことだしゆっくりしろよ」


地底に行くと着物姿の勇儀が座敷で酒を飲みながら手で招きこちらを誘っていた。


まあ時間もあるし…いいよね…


酒を四合ほど飲んだくらいの時だった。勇儀が面白い事を言った。


「いや~今日は盛大に負けたよ。」


いつもなら悔しいそうな顔をしてるのに今回はやけにニコニコしている


「あら。あなたが負けるなんて。まあ霊夢や魔理沙とかでしょ?」


彼女を倒せるとしたら彼女達か、白玉楼の庭師。紅魔館のメイド長くらいだろう。


「い~や、聞いて驚くなよ?」


勇儀が盃の酒をぐいっと飲み干すとイキイキtした顔で私の方を向いた。


「生半可な事じゃ驚かないわよ…」


お酒を口に含めた瞬間、勇儀がとんでもない事を口に出した。


「龍に負けたんだよ」


その一言で私はお酒を吹き出しそうになった。

一瞬、彼女が酔っぱらったか、おかしくなったかと思った。


「はあ?!龍ってあの?!ちょっと待って勇儀…」


しかし勇儀は私の言葉を聞いてくれない。


「そうだな…ちゃんと人間の形をしているよ、結構可愛かったね~」


彼女は目をつぶり思い出にふけっている。


「人間の形って…それって何千年も生きてる子じゃない」


「そうだね~。しかしまたあの子に会いたいね」


目を開くと勇儀が上を見ていた。

彼女が興味を持つなんて珍しい。


しかし、人の形の龍か…。もしかしたら私の飼っている龍ちゃんと心が通じ合うかもしれない。

少し会ってみたい。

なおかつ…『撫でまわしたい』


「その意見に賛成です」


突然、後ろから声がした。

私たちが振り向くと、地霊殿の主、古明地 さとりがいた。


どうやら、先ほどの私の思考を読まれたようだ。


「さとりかい?地霊殿から出てるなんて珍しいね」


「ええ…今日は妹たちに連れられて…」


さらに後ろには彼女の妹、古明地 こいしと猫と烏がいた。


「おねえちゃん、ずっとこもりっぱなしだったからカビが生えちゃうと思って」


「こいし、カビは生えないから大丈夫よ。それと勇儀さん、龍のこと少し聞いても?」


「おお、いいよ。彼女はね~…」


「彼女と言うことは雌なんですね?」


さとりさんが一歩勇儀に近づく。


「ん?そうだよ、それに今回は酒壺を背負ってたね」


「お酒が好きなんですね?ほかに特徴は?」


また一歩、勇儀さんに彼女が近づいた。


彼女の目が血走っている…めちゃくちゃ怖い。

そんな事を思っている時、彼女のペットの火焔猫 燐が聞いた。


「さとり様?もしかしてまたペット増やす気ですか?」


「うにゅ?また家族が増えるの?」


首をかしげながらもう一人のペット霊烏路 空が首をかしげながら主人に聞いた。


「ええ、できればそうしたいわね」


まさかのペット宣言?!


「ペットなあ…彼女は嫌がりそうだけどな」


勇儀がそういうとさとりさんが閃いた様に言った。


「ツンデレ!ツンデレですね!!そうですね!!」


「お、落ち着けって」


「ああ撫でたい、撫でまわしたい飼いたい匿ってなでなでしたい!!」


さとりさんは女の子がしちゃいけないような笑顔で手をわなわなとさせている。

こ、怖い…。私はここまでじゃないわよね?そうよね?


そんな時、勇儀が思いついた様に言った。


「そうだな…華仙、地上に連れてってやれよ」


「え?なんで私が!」


「どうせ、お前も興味あるんだろ?」


「ま、まあね」


あそこまでじゃないけど…まあ少しは…


「なら同じ目的同士で動いた方がいいだろ?」


「…それもそうだけど…」


「なら行きましょう!!明日、すぐに!!!」


はあ~…。


私はため息を付き、お酒をちびりと飲んだ。





「はい、私の名前は蒼 仙龍です、『言ってごらん?』」


「わ、私の、な、名前は?蒼 仙龍です」


『おお!!よく言えたな』


「藍は、げんくですか?」


『「げんく」?ああ、「元気」だろ?』


「そ、そう。う~ん…みずかしい」


『「難しい」な』


『う~…日本語もういや…』


『ダメだ、練習しろちゃんと』


「私は、れ、練習しません」


「ダメだ、ちゃんとやれ」


『「やれ」って?』


『それをしろって意味だ」


「やりますん!!」


『それはどっちだ…』



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