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東方龍酔歌  作者: しらゐ ひふみ
第一章
1/3

蒼と紅

この作品は二次創作です

苦手な方は戻るを推奨します。

「暇だなあ~」

私、紅美鈴は暇だった。


客も来ない。侵入者(魔理沙さん)も来ない。今日に限っては眠くない。

だから私、紅美鈴は暇だった。


咲夜さんでも来ないかな~。

『美鈴。暇なら少し休憩でもしない?』とかで来てくれればな~。

まあそんなことはこんなこと考えてる時にはないとして。


なんか起きないかな…『異変』とか…。

ここ幻想郷は珍しく『異変』が起こらずひと時の平穏が訪れていた。


そんな退屈を持て余しながら何か起こらないかと考えてる時だった。


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

音にしてみればそんな感じの音だった。

昔見た事がある『漫画』でよくありそうな音だった。


「え?!何?!!何?!!」

私は慌てて、その音のした方向を見てみる。

そこで気付いたことが三つ。


まず一つ。

『女がいる』

長い黒髪を後ろで結び、私と同じような服装をしている。そして綺麗な顔立ちをしていた。

大きな瞳に長いまつげ。顔は百合の様に白かった。


二つに女には『角と尻尾』があった。

鬼とは違った角が二本。木の様で枝分かれをしていた。尻尾はトカゲのようで綺麗な蒼色をしていた。


…シカの妖怪?違う。尻尾もあるし、妖気が異常だ。


そんな事を考えていると三つ目のことが頭をよぎる。

『この塀どうしよう…』

飛んで来た彼女のせいで煉瓦で作った外壁が粉々になっていた。


「ちょ、ちょっとあなた何ですか?!侵入者ですか?!侵入者なら容赦なく…」


私が構えた瞬間に彼女がこっちを見た。

にこっと笑うと彼女は懐かしい言葉で話した。


『大丈夫だよ、って言ったって通じないか』


え…中国語?


彼女は私の故郷の言葉を発した。それだけでもう衝撃だったが彼女はもっと驚かせた。

飛んできた方に向けて構えた。

見た感じは中国拳法だと私はわかったが私の知らない型だった。

しかし少し思い浮かぶものがあった。

このゆらゆらした感じって…。


「まだ、あんた立てるんだね。面白いね。気にいったよあんた…」


彼女の構えを見てるのに夢中になってもう一人の来訪者の存在に気付かなかった。


もう一人の来訪者は、鬼、星熊 勇儀だ。

相当、怒っている様でいつもの数倍の妖気で彼女を見ていた。


彼女なら人を投げ飛ばして、投げた人で煉瓦の壁を粉々にすることなど簡単に出来るはずだ。


いや~納得納得…してる場合じゃない!このままではヤバい!紅魔館が消し飛ぶ!


そんな事を考えてアタフタしてると中国語の彼女が構えを取りながら言った。


『あなたの力は確かにすごいけど、本当の武に力が勝てるかな?お姉さん』

そう言うと彼女は手で挑発をした。


「なんか癪な事を言ってるのはわかったよ…さあ、やろうか…」


星熊さんは自分の盃に酒を注ぎ始めた。


き、聞いたことがあるぞ!星熊 勇儀は自分のハンデとして酒をこぼさないで戦うって!


すると勇儀さんが酒を注いでいる姿を彼女が見た瞬間、彼女が構えを止めた。


「ん?どうしたんだい?また盃を盗ろうって魂胆じゃないだろうね?」


『いいな~。きっと美味しいんだろうな…酒さえあれば本気出せるんだけどね…お酒頂戴?、って言ったって通じないか』


どうしよう…伝えたほうがいいんだろうか。

ていうか勇儀さんの盃を盗った?!

どれだけ命知らずなんだ…この人。


ていうか止めないと!


「二人とも止めて下さいよ!怒りますよ!この壁どうすればいいんだか…あなたも止めて下さい!」


私の言葉に二人とも私を見た。

その言葉を聞いて勇儀さんは申し訳なさそう謝ってきた。


「すまないね、けどこの子が昨日落としたあたしの盃を商人に売ろうとしたのを見てね。それを注意したら彼女が襲ってきたんだ。自己防衛だよ」


本当に盗ったのか…試しに聞いてみるか。

『なんで彼女の盃、盗ろうとしたの?』


私の中国語に彼女が驚いた。


『中国語、話せるの?よかった~。ねえあの人なんで怒ってるの?困ってるんだ』


彼女は人懐っこい犬のように近づき私に聞いてきた。


『あの人はね、なんで盗って売ろうとしたか聞いてるんだけど、どうしてそんなことしたの?』


私はそう聞くと彼女は不思議そうな顔をした。


『売る?違うよ盃を拾った後にいろいろと歩いてたら。男の人とあってね。その人に拾った盃を取られて何か言った後に、お金渡されたの。きっと拾ってくれてありがとうって言ってたと思う。そうしたらその人から盃を勝手に盗って脅してる鬼がいたから私怒って拳を打ったわけそうしたらこんなことになったの』


『あ~なるほど…』


なんか理解できたかも…。二人の話しまとめれば。


勇儀さんが盃を落とす。

彼女が見つける。

彼女が歩いていると商人が盃に気付く。

「鬼の盃だ!いい値段で買おう!」

『あ、持ち主なんだ。お金は拾ったお礼かな?いい人だ!』

勇儀さんが来る。そして盃に気付く。

「あたしのじゃないか。勝手に売ろうとしたね?駄目だろう」

『いい人困ってる…この鬼、悪い鬼だな!ていっ!』

「急に殴るなんて…もういい怒ったよ!」

今に至るって感じかな?


二人に説明するか…。



~少女 説明中~


「なんだ、そういうことだったのかい。すまないね。思いっきり殴ったりして…」


勇儀さんは彼女に殴ってしまったところを優しく撫でている。

撫でられている彼女はおとなしい生き物の様に撫でられている。


勇儀さんが私を見た。

「今日のことはあたしのせいだね。明日、壊したところを直すから許してもらえないかい?」


「そんなことでしたら私がやりますよ。慣れてますから、壁直すの」


魔理沙さんがたまに壊してしまう事があるのでもう慣れたものだった。

しかし勇儀さんは引き下がらない。

「頼むよ、それじゃあ罪滅ぼしにもならないからさ。それと一人で直すより二人で直した方がいいだろ?」


「まあ…そうですね。それじゃあ明日はよろしくお願いしますね」


「それじゃあ明日ね。バイバイ嬢ちゃん」


勇儀さんは最後に彼女の頭を撫でて帰って行った。


私と彼女は勇儀さんの後ろ姿を見ていると彼女が私に近づき聞いてきた。


『あなた、名前はなんて言うの?』


『紅 美鈴。ここの門番をしてるの。あなたの名前は?ここじゃ見ない顔だよね』


『私は、ツァン 仙龍シェンロン。美鈴ね、よろしく。ここの国で初めて話したような気がするよ』


『大変だったね。ところで蒼さん、あなたって…』


『あ、仙龍でいいよ。ごめんねこの壁壊しちゃって。人里に来るのは久しぶりではしゃいじゃって…』


『あ、うん。ところで仙龍?あなたって…』


そんな時だった。


「な、何なの!?この塀は!」


こ、この声は…。

声の方向を見ると慌てふためいている咲夜さんがいた。

そんな時に咲夜さんが私を見た。


「美鈴!あなたまた寝てたでしょ!寝てるからこんなことになるのよ!どーするのよ、また修理費で赤字になるじゃない!」


「あ、あの~…。咲夜さん?実は言うと…」


「言い訳しないの!ほら正座!」


「はい…」


どう説明すればいいんだか…。

ああ…日ごろもっとしっかりしてれば…


そんな時だった。

仙龍が咲夜さんの前に立った。


『違うよ、美鈴じゃないよ!あたしがやったんだよ!美鈴お願いそう伝えて!』


「美鈴この子誰 あ?というより何語?」


「あー…えっと…壁壊しちゃったご本人です」


「はあ!?この子が?まあ人じゃないのは確かね…」


咲夜さんが彼女の姿を見る。角と尻尾がある為、一目見ただけで人間じゃないことは確かだ。

すると正座している私の背中に抱き着いてきた。尻尾も絡ませて。顔には少し涙を浮かべている。


『美鈴じゃないの!美鈴じゃないの!』


こんな事をされては怒っている咲夜さんもたじたじだ。

こんな異様な光景に咲夜さんはため息をついた。


「何なの。その子」


「私の故郷の大陸から来たみたいなんですけど…」


「ふ~ん…。まあ今回はその子に免じて許してあげるわ。直しときなさいよ、そこ。

後、お昼出来たから休憩しなさい」


「あ、はい。ありがとうございます」


そんな会話のやり取りを終えると仙龍は咲夜さんの方を見た後、私に聞いてきた。


『わかってくれた?』


『うん、わかってくれたよ』


私のその言葉に彼女の心配そうな顔がパアっと明るくなる。そんな感じの音がしたと思う。


『よかった~。ごめんねあたしのせいで怒られちゃって。ねえ美鈴暇なら遊ばない?』


『いやー仕事中だしなー。それと仙龍ごめんね、お昼食べなきゃいけないから、また今度ね』


『そっかなら仕方ないね。明日はいるの?』


『うん、いるよ』


『それじゃあ、また明日ね、美鈴』


彼女は私から離れると、にこっと笑った。

その時とてつもない強風が吹き荒れた。

私は吹き飛ばされないように持ちこたえた。


風が止んだ時、彼女はもういなかった。






「ふ~ん、そういう訳ね…。塀が壊れた理由はわかったわ。美鈴、それでその子は何者なの?」


お昼、私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットに先ほどの事を伝えた。

意外にもその少女について聞いてきた。


その場にいる全員が固まる。

お嬢様が他人を気がなる時、それは、『よほど興味がわいた人物』か『自分の敵になる人物』だけだ。

お嬢様以外のみんなはその後者の方を心配した。

先ほどの楽しいお昼は一変して緊張のお昼に変わった。


「何、みんな黙っちゃって…ただ純粋に気になっただけよ」


みんなが安堵のため息を吐いた。

その様子にお嬢様がむっとした顔になった。


「何よ、みんなしてため息なんかついて。私は人の事を気になっちゃいけないのかしら?」


「そんなことはないですよ。どんなところが気になったんです?」


咲夜さんナイスフォロー!!


「そうね、その子の正体について気になったわね」


確かに私と同じ大陸の言葉で鬼に殴られても平気にしてたし、何よりもあの角と尻尾だ。

最後の強風も気になる。


私が頭をひねっているとパチュリー様が私に言ってきた。


「あなたと同じ大陸の生まれだったらあなたの方がわかるんじゃないのかしら、美鈴?」


「う~ん…まあ、この種族じゃないかな~ってのはありますね」


頭の中に一つの種族が浮かんだ。

でも見たことがないし、自信はなかった。


「何なの?言ってみなさい、美鈴」


お嬢様が目をキラキラさせて聞いてきた。

私は本当に予測だが言ってみた。


「龍、とかですかね?」


私の一言にみんなが固まった。

え?どうして固まったの?

その理由は妹様の一言だった。


「美鈴、なにそれ?」


「え?有名じゃありませんか?干支にもなっているくらいだし…」


「もしかしてドラゴンの事?」


パチュリー様が私に聞いてきた。


「ドラゴンとはまた違う生き物ですかね…たぶん」


「じゃあ、美鈴。龍ってどんな生き物なの?」


妹様が聞いてきた。私は龍についてみんなに説明してみた。


「えっと、まず体は蛇のように長くて、鳥のような手の前足と後ろ足があります。それと角があって空を飛ぶことも出来ますね」


「へえ~。羽がなくても飛べるって、魔理沙や霊夢みたいね。他には?」


「えっと~…火を吹けた、と思いますね。後…」


「あ、もしかして!美鈴の服に書いてあるやつ?」


妹様が近づき私の服の刺繍を見た。

みんなも私の刺繍を見始めた。

私の説明が分かりずらかったのかな…ちょっとショック…。


「私これずっと蛇かと思ってた!」


そのことでもっとショックを受けた。

蛇の刺繍って…。蛇がかっこ悪いとは言わないけど…なんか悲しい…。


「ごめんなさい、美鈴。私もそう思っていたわ…」


「お嬢様もですか…」


「美鈴、ごめんなさい…」


「パチュリー様も!」


「………」


「咲夜さんは違いますよね?」


「ごめん…美鈴」


絶句だった…。

そういえばそんな詩作った人いたな…。

李白だっけ…。


この場合とはまた違う意味だけど…


ああ可愛そうな龍…。なんか私の事言われてる気になってきた…。

なんか泣けてきた…。あの子が龍だったら、きっとこの気持ちを分かってるはずだ…。

あの子は今、何してるんだろう…。





『ここは幻想郷って言うんだ、へえ~』


彼女は辺りをぐるりと見渡している。

初めて見る光景に彼女は興味津々の様だ。


『あなたには色々と説明しなければならないわね…仙龍』


『大丈夫だよ、昔みたいに暴れないからさ…。ねえねえ藍、あれからどのくらいたったの?』


私はこのことを言うのが怖かった。

しかしこの現実を受け入れてもらわなければ…。

幻想郷には入れられない。


『千年以上たったわ』


『え?…そんなに経ったんだ。約束…守れなかったか…』


『仙龍…』


彼女は黙って空を見ていた。

その眼には涙があふれている。

彼女は自分の服で涙をごしごしと拭くと彼女は私に笑いかけた。


『やっぱり、あの時、藍の言う通り、人間は儚いね。藍は頭いいね!』


『成長したわね…仙龍』


『そりゃあ、ずっと閉じ込められていたもの。一生あそこに閉じ込められてるかと思った。今回の事は本当に助かったよ』


『ええ…これに懲りたらあまり人を信じたら駄目よ…。ところで仙龍…』


『なに?』


『助けた時も気付いたけど…。龍玉はどこいったの?』


『あ~…盗られちゃった』


『はあ~!?あれがないとあなた…』


『でも、なくても生きていけるし…』


彼女はニコニコと笑っている。

私はため息をついた。


『呆れた、成長してると思ったけど…まあいいわ、私の主が外の危ないものをここに持ってきて保管しているところがあるの』


『本当?私の龍玉があるかな?』


『どうだろ…どれくらいあるんか分からないくらいあるからな…。けど…紫様に聞いてみるよ』


『ありがとう、藍』


『いいよ、昔の好じゃないか、それと…』


『ん?』


『ようこそ、幻想郷へ』


私たちは持っていた杯をかわした。

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