1話中心世界
「よしっ!! いいよ!! このまま倒すよ!!」
「「おぉぉぉぉ!!」」
私は現在とある島にて魔王軍と戦闘中。
状況を簡単言うと、もう少しで勝てそうなのだ!!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
一気に魔王に近づく。
そして。
「ぐぁぁぁぁぁっっ!!」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
やっと……やっとこの時がやってきた!!!
ついに……ついに!!
「偉大なる魔王は倒れた!! 魔物ども!! 勝ち目はないわ!! 降参なさい!!」
決まった……決まったよ……
悔しそうに武器を捨てる魔物たち。
「……ぎ……」
「やりましたね!! 王女様!!」
「貴方達がいてくれたからよ。貴方がいたからこその勝利……」
「……なぎ……」
信頼してくれる仲間!! なんて素晴らしいのだろう!!
そして、私は大きく息を吸って高らかにこう宣言した。
「魔物は滅んだ!! これからは我が……早花咲 那岐の下で最強の帝国を築き上げるのだぁぁぁ!!」
「……築き上げるのだぁ〜……むにゃ」
「那岐!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なっなな何?
何が起こった!?え!?
先ほどから痛む腹を見ると、誰かのつま先が食い込んでいる。
なるほど。全て理解した。今のは夢で、きっといつまでも寝ている私を起こしに来たのだろう。
視線をあげるとほら、やっぱり。特徴的な桜色の髪に桜色の瞳。オレンジ色の浴衣もどきを着ている少女が蹴ったポーズのまま腕を組み、呆れたような表情でこっちを見てる。
「んあ〜……あと5分……」
「貴方の5分は5分じゃないでしょう。休みの日でだらだらしたいのはわかりますが、起きて下さい。」
「むぅ……」
この少女はフレイヤ。なぜこの名前なのかは追々説明するとして血は繋がってないが、一緒に住んでいる家族である。
「那岐、いい加減起きて下さい。鈴風様が朝ごはん作って待ってますよ。それに今日は昨日の会議を踏まえて……」
ギクッ……
「那岐? まさかとは思いますがまたサボってなんかいませんよね?」
「…………」
どうしよう!! 言い訳!! 言い訳!!
……そ、そうだ!!
「さ、サボってなんかないよ!! ひっどいなぁ〜うちがそんな人に見えるの!?」
「はい」
「…………」
「貴方は今まで数多の仕事というか会議とか活動をサボっているでしょう。しかもとても大事な仕事をサボって遊園地を満喫。仲間が苦戦しているときにショッピング。そんな貴方に『うちがそんな人に見えるの!?』と聞かれても見えますね。と答える以外何があるのでしょう?」
「……サボりました。すみませんでした。」
「まぁ、いつもの事ですから。資料ぐらいは貰ってありますよ」
サボったの知ってるんだったら最初からそうしてよ……
「え〜と、何々?」
早花咲那岐
朝飯食べたらすぐ来い。
「……だそうです。」
「………………じゃん。」
「?」
「会議の資料じゃないじゃん!! 思いっきり説教だよ!! どうすりゃいいんだよ!!」
「行って素直に説教食らえばいいじゃないですか。お似合いですよ。それより朝ごはん、そろそろだと思います。行きましょう」
「むぅぅ……」
早花咲鈴風。私の姉だ。私とは違って茶髪のロングヘアー実にオシャレな服を着ている。
因みに私とは違ってと言ったが、むしろ私が変わっていると言えるだろう。
私は白に少し水色混じりのロングヘアー。いや、これは染めたとかじゃなくて元々なのだ。それに服は……黒い白衣擬きっぽいやつとかパーカーにミニスカートとかだ。
……正直目立っているのはわかっている。
「……鈴姉は?」
「先ほどから畑仕事に」
「ふぅ〜ん」
ここは田舎だ。ド田舎だ。大きな敷地に一家族ひとつは畑を持っている。
地名は季桜町。いつも思うがどこぞの酒みたいな名前だよなぁ…
「怒られますよ?」
「ん?」
「メタ発言はよくありません。次こういうこと言ったら殺す。」
「……フレイヤは時々こういうこと言うから怖いよなぁ……」
「そろそろ行きますよ。皆さんがお待ちです」
「……っん。わかったよ」
一気にお茶を飲み干し、パーカーの右手首あたりに黒い生地に白で『GC』と書かれているリストバンドをつけ、家を出る。
――桜の守護者《cherry guardian》――
私が七歳くらいの時に仲がよかった友達四人と元々はヒーローごっこのつもりで結成した秘密組織。
今となっては様々な暗部の悪巧みを懲らしめたりして人数は初期の4人から7人に増え、それに伴い、基本4人のグループ(今のところ『海』『風』がある)に分かれている。そして活動費は年明けに一人1000円払うのだ。
因みに家がないメンバーはアジトに住み込みで活動している。
ここは田舎だから山くらいたくさんある。
その中の桜山という山の中腹あたりにツタが絡まり時代の流れを感じさせる木でできた家がある。
その中に入り、本棚の側面にある不思議な模様ににつけてきたリストバンドを近づける。すると、そこにあった壁が消えて下へ続く階段が現れる。
そして、階段を下り鉄の扉の前に立つ。
「……? どうしました?」
那岐はふぅ〜っと重く吐くと苦笑いを浮かべ
「さて。叱られに行くか。」扉を開ける。
すると。
「はろ〜……」
「ゴルァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
……状況が理解できない。
私は扉を開けたはず。なのになぜさっき通った壁にぶち当たっている?
階段の下を見ると金髪のウェーブがかかった長い髪。透き通った緑色の目。ピンクと茶色を基調としたワンピース。
一見すると、フランス人形のような印象を受ける少女だが。
「那岐。何回目かわかる?」
「ん〜っと……10回」
「な・に・か・言・う・こ・と・は?」
「えっ……あぁ。おはよぶッッ!!」
「ごめんなさいだろうが!! いい加減にしろ!!」
あ〜あ。超痛い。頭殴られた。本日暴力3回目。運ないなぁ……なんかずっとガミガミ言ってるし。
すると予想外の方向から声が。
「エルナ〜少しは静かに出来ないの? さっきから頭にすごい響いてるんだけど。」
「ヒキニートに言われたくない」
と言うと部屋に戻り、近くにあるソファに不機嫌そうな表情で座る。
今の少女は『エルナ・グランソルジェ』初期の四人の一人で、『風』のリーダーだ。
そして今、口出しをしてきたのは『神無木 梓』紫色の男にしては少し長い髪。パーカーにハーフパンツというまさにヒキニートという格好。
まぁ、事実ヒキニートなんだけど。
仕事は本当は『風』に属していて、戦闘もできるはずなのだけど……
あいにく本人がこの性格のため、アジトで司令塔の役割をしている。
これは表面上のことで、実際は、ネトゲやり放題でネットライフを日々満喫している。
「さて。集まったね」
エルナが急にドヤ顔でテーブルを囲むような形のソファで足を組み直す。
「まず仕事の説明の前にうちらが住んでいる『ここ』について再度確認しようか」
一区切り置いて、ゆっくりと言った
「この、――中心世界――についてね」
「中心世界。
言葉の通り、世界の中心。
様々な異世界を管理する世界。
妖界、魔界、天界、冥界、通常世界。
そんな様々な世界と交易をしつつ、管理もしている。
特に、日本、アメリカとかがある通常世界の管理は厳しく、何があってもこちらには気づかれてはいけない。
でも、通常世界以外の世界とは貿易も行い、友好な関係を築いている。
また、技術面、科学、学問何をとってもダントツ1位。正に世界の中心部っつー訳よ。
さらに、中心世界の中心部、月見街。私達はトップと呼んでいるわね。そこの暗部や、他の地域の魔術組織はいつも良からぬことばっかり考えるから、うちらがやっつけるわけね。
そんな中心世界には少し変わった人間が存在する。
魔術師と能力者。
人間の突然変異と言われている。
魔術師は魔法や魔術が使える者のこと。なろうと思えば誰でもなれるけど、やっぱり才能は必要。
能力者は完全に生まれつきね。産まれたその時から能力は宿っている。しかし能力を使うにはある程度体に付加がかかる。だから能力者には魔術が使えない。
普通の能力者は魔術を使おうとすると血管が千切れたり、最悪死亡してしまうわね。
しかし、ただ一人。能力と魔術、その両方が使える者がいる。
……貴方のことよ、早花咲那岐。
能力は原子誘導、生命か宿らない物なら重力を操作して、変形、分子を化合させたり、分解させるのも自由自在。
能力者の中でも最も強い、『スパイラルファイブ』の1人。
それでいて、魔術面でも北欧神話の水神ニョルズと呼ばれるほどの実力を持つ。
桜の守護者でもかなりの戦力となっている。
まぁ、中心世界についてはこれくらいかしら?」
「これくらいって…最後うちについての説明だったよね……?」
「改めて聞くと那岐ちゃんすごい人なの〜」
「そうかなぁ……」
今、声をあげたのは『矢崎 奈乃『で『風』に属している。茶髪のショートヘアーで、いつも通っている中学の制服を着ている。口癖が「〜なの」らしく、基本的にはとても穏やかな性格なのだが……
「奈乃の能力もすごいと思うけどなぁ……ね!! 久々に見たいんだけど!!」
「えぇ!? う〜ん……わかりましたなの。」
そして奈乃は右手を那岐に向けてつき出すと、掌に炎が出現する。彼女の能力、『火焔操作』(ファンタジーファイヤ)である。
それだけ見れば、とても綺麗。しかし
「フフっ……」
ほら、始まった。
「どうだ那岐!! 我の素晴らしきこの力は!!」
そう。奈乃は能力を使うと普段のおとなしい性格から一変。どこからどう見てもただの厨ニ病だ。
「ウンウン、スゴイスゴイ」
「……自分でやれと言っておいてその反応は流石にどうかと思うがな。」
「ん? ……あぁ龍我、いたんだ。」
「お前が来る前からな。」
今のは桜木 龍我。外はねの茶髪で高校の制服の下にパーカーを着ているいかにも不良といった服装である。
初期メンバーの一人で、私と同じ、『海』に所属している。
因みに能力者。
奈乃は掌の炎を消すと、
「むぅ……やっぱり全然すごくないの……」
「……」
まさかの厨二病自覚なしなのだ。
いや、というよりは皆聞いてはいけないことだと思って聞かないだけなのだが。
「で? 結局今回何すんの?」
「簡単に言えば、あることを事前に防ぐ。と言ったところか。」
「あること?」
梓が怪訝な顔をするとエルナは薄く笑みを浮かべ、こう言った。
「明日、トップで魔術組織による大規模な爆発テロがあるらしい。」
――to be continued――