第4話 修行の成果を貴女にお見せします
「ゴルアアア!!」「ウロロロロ!!」「グロァァ!!」
「くっ! 狂猿の群れ。なんとか生き残らなければ。こんな所で死んでたまるかっ!〖泥床〗」
「「「ゴルルルアァ?!」」」
一方その頃……
「今日は、キラービーの丸焼きよ〜。オリー」
「美味しいですわ。シルフィーお嬢様」
「……シドはお勉強を始めたんだったわね」
《修行期間 6ヶ月経過》
「ゴオルアアァ!! 潰えなさいっ! 〖岩槍〗」
「ゴキャアァ!!」
「おぉ、見事じゃ。我が孫よ。よくぞ。ハノイの樹海を生きて踏破したものじゃあっ!」
「……では、学を……学びを私に下さい……この世界は武力だけでは生きられないと自然の中で学びをましたから……」
一方その頃……
「今日はブルーミントの丸焼きよ。オリー」
「美味しいですわ。シルフィー様」
「……シド。今頃、元気にやってるかしら?」
《修行期間 1年経過》
「……学び学び学び学び学び。学がなければ、タートルスパイダーに補食されてしまいます。それと自然環境だとしても、人間社会だとしても、序列とルールは守らなくては。ガルーマザーに殴られるのです。これもあのお嬢様を御する為に……ククク」
「す、凄い。あれだけの知識を綿が水を吸うがごどく吸収している」
「あの目は凄いわ。何かとてつもない執念を感じるわ」
一方その頃……
「今日はゼリースライムの丸焼きよ。オリー」
「美味しいですわ。シルフィー様っ!」
「……シド。ちゃんと美味しいご飯を食べているかしら?」
《修行期間 2年経過》
「ホホホウ。その年で基本属性の魔法を殆ど習得するとは……そして、お主の適性な魔法属性は水と土じゃな」
「はい。フォルマン老師……全ての風の魔法を私の魔法で粉砕します」
「……何やら凄い執念をお主から感じるのう。良かろう。弟子のお主にはワシの全てを伝授しよう」
「はっ! ありがとうございますっ! フォルマン老師」
一方その頃……
「今日はトンファースネークの唐揚げよ。オリー」
「美味しいですわ。シルフィー様〜!」
「……そろそろシドに会えなくて寂しくなってきたわね。会いに行ってあげようかしら」
《修行期間 3年経過 フレイル軍事施設》
「………ハッ!」
「オオオォォッ! 流石、ジルドナ殿。お孫さん、あの年でラインハルト剣技の全てを取得するとは」
「勿体ない。あれだけでは若いのに、執事とは勿体ない」
「ううぅぁっ! シドよ。良くやった。良く頑張り抜いたのう。お主はワシの自慢の孫じゃ」
「ハハハッ! シドよ。良くやった。たった3年間でフレイル家式ハイパーデラックスウルトラ何たらスパルタ特訓の全カリキュラムを完了するとは、これでお前も一人前の戦士として、軍人学校へと送り出せ……」
「いえ、グレイ様。私はシルフィーお嬢様専属の執事です。ですので、これからはシルフィー様の元へと戻ります」
「あっ………そうだったな。この3年間のお前の成長でつい、軍人学校へと入れようと手続きしていたが。そうか、軍人にはならず、シルフィーの執事に戻るのか? シドよ」
「はい。では私はこれで失礼します」
「軍事学校には軍服を着た貴族の令嬢とかも居るのだが……む? もう居なかなったのか? いつの間に?」
一方その頃……
「今日は久しぶりにシドに会えるのよ。オリー」
「それは素晴らしい日ですね。シルフィーお嬢様ーッ!……数年振り位ですが、シドさんって何で私達の前から突然、消えたんでしょうか?」
「ん〜?……そんなの私にふさわしい男の子になる為に決まっているわっ!」
「す、素晴らしい発想ですわ。シルフィーお嬢様〜!」
そんなツッコミ不在の間に入り込んだのは、蛮族令嬢のお嬢様を制御する為に、3年間必死に修行した私にだった。
「……シルフィーお嬢様。オリビア、お久しぶりです」
「……貴方。シド?!……シドなの?! 久しぶりじゃないっ! 数年振りかしら?」
「シドさん?!……何だか雰囲気変わっちゃいましたね。シルフィーお嬢様」
私が声をかけるなり、シルフィーお嬢様とオリビア嬢は嬉しそうに近づいて来てくれた。
「シドッ! 久しぶりね。今からタイラガエルの薫製を作るから食べさせてあげるわね」
「シルフィーお嬢様。それよりも勝負をしましょう。」
「ん? 勝負?……私、数ヶ月前にシドと何か約束したかしら?」
「はい。三年前にとても大切な約束をしました。私が勝てば、シルフィーお嬢様とオリビア嬢は今後、勉学に励み。私が負ければ、私はシルフィーお嬢様のお願いを何でも聞くという約束です」
「……むむっ! シドが私の言う事を何でも聞いてくれるの?……良いわっ! 受けて立つわっ! 今からよ。オリー掛け声をお願いっ!」
「はいっ! シルフィーお嬢様っ!……(カッコ良くなって帰って来た、シドさんを好き放題できりゅ?!)……試合始めですっ!」
オリビア嬢の掛け声と共に、シルフィーお嬢様先行の勝負が始まった。
「先手必勝よっ! 喰らいなさいっ! シド。〖風拳《ウィドウナック〗〗」
シルフィーお嬢様は真っ正面きって、私に殴りかかって来た。
「……〖泥床〗〖水溜〗〖岩硬〗」
そのお嬢様の猪突猛進に対して、私は冷静に対処した。先ずは足場を泥沼化して、シルフィーお嬢様の足の動きを封じ。
「へぶぅ!!……あ、足が埋まっていくわ。シド。助けてっ!」
続いて泥沼化した場所に大量の水を注ぎ、泥沼池へと変化させ。
「ゴポポ……ブハァ?!……溺れちゃうっ! 私、溺れちゃうわっ! シドーッ!」
最後にシルフィーお嬢様の顔だけが泥沼化した池から飛び出てきたタイミングで、全ての泥沼を硬い土へと変化させた。
「……シド。身動きが取れなくなっちゃったわ」
「ふっ! そうですね。地と知の勝利です。シルフィーお嬢様……これで私の勝ちですね」
「ハワワッ! シルフィーお嬢様。お気をたしかに〜!」
「………ええ、勝負は勝負。私の負けで良いわ。シド……だから、ここから早く出しなさいッ! これは命令よ。シド」
「ええ、シルフィーお嬢様。この執事のシドにお任せ下さい。なんたって、私はシルフィーお嬢様の勝利なのですから」
その後、私はシルフィーお嬢様を泥沼の硬化を時、軟化させ泥沼の中から救いだそうとした瞬間。
「隙ありよ。シドーッ! 勝負には負けたけど、貴方も私の様にドロドロになりなさいっ!」
「は?……シルフィーお嬢様。何を?」
「わ、わわ、私もお二人と一緒にドロドロになります〜!」
「ええ、一緒に汚れましょう。オリー」
ボチャンッ!
私とオリビア嬢はシルフィーお嬢様に手を引っ張られ泥沼の中へと一緒に落ちてしまった。