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幼き日の喧騒
夜がまだ明けきらない灰色の空に、サイレンが鳴り響いた。
「カミス、こっち来て!」
リムの母が手を引いてくれるその隣で、リムは泣きそうな顔で僕を見ていた。でも、僕の目は家の前から動かなかった。
だってーーそこに、お父さんとミチル兄さんが、縛られて並んでいたからだ。
制服の人たち。銃。叫び声。パタパタと軍用ブーツが地面を叩く音。
なのに、お父さんは落ち着いていて、僕の方を見て、静かに微笑んだ。
ーーカミス
ーーもう、会えない
そんな声が聞こえたような気がして、僕は喉の奥が熱くなるのを感じた。
「.....お父さん......!」
呼ぼうとした声は、誰かの腕に押さえつけられて、喉の奥で潰れた。
白い輸送車のドアが開き、黒い服の人が兄さんを引っ張った。
兄さんは少し振り返って、でも何も言わなかった。
その目だけが、ずっと僕を見ていた。