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一部ルビの追加と、漢字からひらがなに変更しました。(本文の内容は変更ありません。)
そう考えていた時、水面に映る自分の姿を見て、漸くどんな変化があったか理解した。
「……私、変わり過ぎでは?日本人だった面影が全く無いのだけど。」
『ねぇねの本当の姿だよ!』
眼の色は深みのある紫、髪は肩くらいまでの長さから背中まで伸び、明るいベージュで毛先にかけてピンクのグラデーションになっている。
顔立ちや身体つきは西洋のお人形、という形容が近く、身長は変わっていないようだ。……そこは伸びていて欲しかったな。
「こちらの世界……本来の私と言うべきかな。私ってこんな外見だったのね。」
そうね、もう色々と受け入れていくべきなのよね、きっと。
一応外見の把握も出来たので、そろそろ寝床の確保をしましょう。
「よし、暫くは此処を拠点にしよう。」
『ねぇね、今日はここで寝るの?』
「うん。リラちゃん達疲れたでしょう?だから今日は此処でねんねするの。」
『ねぇねもリラも僕と一緒にねんねするの!?』
「そうだよ。」
『やったあ!』
『久しぶりにねぇねとねんねできるね。』
「そうだねぇ。」
パアアア、と効果音が付きそうな勢いで二匹が笑顔になる。うん、可愛いね。
『おうち造るの?』
「うーん、リラたちが地球で過ごしてた時のようなおうちはちょっと難しいから、簡易コテージにしようかな。サバイバル慣れしていない私達だとテントは不安だからね。」
ふーん?という表情で首を傾げる二匹に笑いかけ、造りたいコテージを思い浮かべる。
以前動画を観ていた時におすすめに流れたのだが、外観が半球体の可愛らしいコテージがあったので、それを真似て造ってみようかな。
「創造」
出てきたのは、ダークブラウンのコテージ。周囲の木の幹の色に寄せたのだが、良い感じだ。
耐久力もありそうだし、必要なものとかは後から足せば良いし、細かい所は中を確認してから決めよう。
「中を確認してくるから、リラとソラは此処でちょっと待っててね。危ないところがあったら綺麗にしてくるからね。」
そう、室内は後から手を加えるつもりだったので、角とか床とか、この子達にとっては危険な箇所もありそうなのだ。
異世界に来た今となっては、二匹にとって些細な事かも知れないけど。
おおよそ欲しい設備と部屋は創造で造ったので、床と窓枠などだけ先にメンテナンスを施し、二匹の元へ戻った。
「お待たせ、もう入っても大丈夫だよ。」
『はーい!』
『楽しみ。』
ドアを開けて二匹を中へ入れると、大はしゃぎで二匹とも駆け出した。
二階建てにするか迷ったが、まだそこまでは必要ないかと考え広めのロフトにして寝室代わりにし、皆んなで寝るので大きなベッドと服を掛けておく為のラック、小物類を置く棚を設置して、螺旋階段をリビングの中心に、手摺と柵を付けて最下段は二匹が勝手に登らないよう開閉式の柵を取り付けた。
ダイニングは猫脚のテーブルセットを置いて、キッチンが狭いと意外と困るので、一人で使うには少々広いがゆったりとした構造だ。ダイニングとリビングは一応引戸で区切ってあるが、基本的に開けっぱなしになりそう。なおキッチンの入り口にも階段と同じような柵を設けてある。その他必要な設備諸々。
コテージに入って左側にお風呂とトイレを別々で、脱衣所に独立洗面台を設置して、右側にはリラとソラのスペースがある。トリミングとか動物医療とか、専門知識はほぼ無いのだが、リラからこっちに戻ってからは要らないから大丈夫だと説明された。リラたちは何かあったら自力でどうにか出来ちゃいそうだもんね。
因みに、コテージ内は土足禁止でスリッパを使用し、床は通常のフローリングだとリラとソラに負担が掛かるので、全面クッションフロアにしてある。
室内は全体的にアンティーク調で揃えつつ、二匹の事を考えて装飾は最小限に控え目にしたが、住んでみたかった部屋が出来たかな。