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途中で村を2つほど経由し、討伐クエストを3つこなすとブロッサムがフォンに上がった。通常だともっとクエストを完了させないと上がらないらしいけど、私の場合は魔石の査定がかなり大きくあっという間に上がったとのこと。
本来魔石を綺麗な状態で回収することは難しく、自分達でも魔石の用途があるのでそもそも買取に回せる量を残せないというのが実態なんだとか。足りない魔力を補うという役割もあるけど私の場合はその必要が無く、保管分とコテージの設備とみんなで使う量が確保できたら、それ以上は全て買取に出しているのでそれが結果的に良かったんだと思う。
「そろそろ公都まで後半分だな。」
「ゆっくりのんびりの旅路でも結構進んだね。そう考えると、イルリスの森からはかなり離れている。」
イルリスの森を出発してからおよそ15日、もう少しで枝季に入ろうとしていた。フローラには猫耳フード付きのお洋服を着させているけど、リラとソラは黒狼の姿だとそこそこ寒さに強いらしく、まだリボンだけだった。でもそろそろ本格的に寒さ対策をしないといけない。
「そういえば、ルルーは寒いの大丈夫?」
『寒さには強いのでもう暫くは大丈夫ですが、雪季はお腹が冷えやすいのでいつも上着を着ています。』
「そうなんだ。そしたら、折角だし新しいものを作ろうか。」
『いいのですか?』
「もちろん!ルルーの好みで作ろうね。」
『ありがとうございます。』
ルルーは表情豊かなので、とっても喜んでくれていることがよく分かる。どんな感じにしようかな。
「……ユリシアが当たり前のようにルルーと話していると、俺の感覚がおかしいのか?と思えてくるな。」
「私としては、寧ろアスターがルルーと話せない方が不思議だけどね。」
「え?」
あれ、そんなに驚かれる要素ある?
『ねぇね、ルルーは魔力を持つ特別な馬なんだけど、アスターは多分知らないよ。ルルーの魔力の量だと普通は念話できないけど、話せるねぇねが特別なんだよ。』
「あ、そうなの?」
「ルルーは魔力持ちだったのか。俺はルルーとは話せないし、やっぱりユリシアが規格外じゃないか。」
「えぇ……?」
あ、だから初めて出逢った時、難しそうな表情をしていたのね。ルルーと話せた私に疑問を持っていたんだ。ソラと白虎もそうだった。
……私、何も悪くないよね?アスターをコテージから締め出してやろうか。
「それより、ここから先は村も無いから基本は空き地を探してコテージ生活だ。運河を渡るが山を越えるわけではない。ペースは上がるだろうから予定より早く公都には着くだろう。そしたら新しい服も早めに作れるからな。」
私の不穏な空気を察知したのか、アスターが視線を逸らしながら話し出した。先日色々と心配かけちゃったし、今回はスルーしましょう。アスターの言う通り、皆んなの新しいお洋服も早く作ってあげたい。
「分かった。」




