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翌日。そろそろ次の村へ向かおう、という話でまとまったので、その前にメリに寄って空き地の使用終了手続きと、1件だけ討伐のクエストを受け、またもやフローラと行って来いと言われたのでサクッと終わらせた。討伐の際は魔物を倒して魔石を回収し、討伐証明と買取を一緒に行うこともできるし、買取に出さないのであれば魔石の状態を気にせずそのまま討伐証明として提示するだけでも良いみたいだった。その時のクエストの条件にもよるので、都度確認する必要はあるんだとか。
倒すだけとは言っても、私やフローラは魔力の制御訓練も兼ねているので、威力を抑えたり狙い撃ちだったり、そういう勉強もしながらだ。
無事に終わってメリで報告し、魔石の買取もしてもらった。
その足で武具屋に寄り、昨日買った武具とアスターの防具と剣も受け取った。
「これから各地を巡るつもりなので長居はできないが、また会えることを楽しみにしている。」
「そうかそうか、良い旅になると良いな。」
餞別だ、と店主さんから小さな小箱を差し出され、アスターが受け取る。その中に入っていたのは、クリアな宝石が嵌め込まれた銀細工だった。しかもお揃いっぽいデザインだ。
銀色で角が削られた四角いプレートには蔦のような装飾が彫られていて、中心に半球の透明度の高い宝石が嵌め込まれている。宝石の中には花が入っているんだけど、多分宝石は水晶で中の花はどちらも白い。……アスターとユリ?
「これは?」
「少し前に、冒険家達と一緒に洞窟に入ったことがあってな、その時に1人の魔導士が洞窟内を氷漬けにしてしまったんだ。一応元には戻ったが、何故か凍ったままの花が残っていたので採取したんだがあまりにも綺麗だったんでな、保存しておいたら、いつの間にか宝石のようになっていたんだ。折角なので知り合いの細工師に頼んで作ってもらったんだよ。君達にの元に行く運命だったんだなぁ。是非貰ってくれ。」
「何故洞窟内が氷漬けになったのかは事情があるのだろうが、聞かないでおくことにしよう。」
「そうしてもらえると助かる。」
聞いちゃいけない感じの空気感……。
「それにしても綺麗だな。ありがとう。」
「ありがとうございます。大切にします。」
「また機会があったら立ち寄ろう。」
「ああ。良い旅を。」
店を出てそのまま村を出ると、次の目的地へ進み始めた。