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閑話休題 ぱぐとはなんぞや

今回はちょっと視線を変えてみました。スタート1周年のお祝いも込めて。


終始アスター目線です。

 ある日、コテージに帰りいつもの挨拶を済ませたリラとソラが、何やらソファで話し合っている。


『ねぇね、みてて!』


「どったのソラくん。」


 手洗いうがいをしてリビングに戻ると、ちょこんと座ったリラとソラ、少し離れてフローラと並んでいる。何事かと思いつつ取り敢えず見守ろうとユリシアと待っていると、2匹がぽんっと可愛らしい音を立てて姿を変えた。


「うわぁパグだー!」


 ユリシアがそう叫びながら2匹に突撃した。一応加減はできたらしい。勢い良くリラとソラを抱きしめ頬を緩めるユリシアは初めて見た。


「可愛いーもちもちー!パグさいこーっ!」


 辛うじて聞き取れた言葉はそれだけだった。他にも何やら叫びながら2匹を撫で回しているが、何を言っているのか全く理解できなかった。

 ユリシアが喜んでいることと、撫で回され抱きしめられているリラは少々鬱陶しそうでソラは嬉しそうにしていることだけは伝わった。


 それにしても、ぱぐとはなんだろうか。聞いたことがないな。


『ねぇねが喜んでくれたのは嬉しいことだけど、ちょっと鬱陶しい。』


『そう?僕は嬉しいよ!ねぇねにぎゅーされるの好き!』


『でも、ねぇね本当の私たちの姿も好きだけど、やっぱりパグの時の方が好きなのかな。ねぇね幸せそう。』


『リラ、それツンデレって言うんだよ!』


「どういうことだ、突然どうしたんだ。」


 取り敢えずユリシアを落ち着かせ、話を聞くことにした。

 ソファに座るとぴょんとフローラが膝に乗ってきて、ユリシアはリラを片腕で抱き抱えソラを膝に乗せ撫で回している。


「どうしたって、そっか。アスターとフローラは知らないよね。あのね、このリラとソラの姿は、地球にいた頃の姿なの。こっちの表現に合わせると、種族は犬でその中でもパグっていう種類なんだ。特徴はこの耳と、鼻が平べったいところかな。あと毛が短くて、もふもふというよりもちもちだね。」


「成程。」


 つまり、2匹は地球にいた頃の姿に変身したということか。


「しかし、何故突然変身なんてしたんだ?」


「確かに。それは気になるね。」


『あのね、ねぇねが私とソラを見て、時々寂しそうな顔をしていたの。それで、もしかしたら、あっちの世界にいた頃の私達に会いたいのかなって思って、変身できないか何度か練習したの。』


『そしたらね、できるようになった!自分の意思で変えられるから、いつでもパグになれるし、元の姿に戻れるよ!』


「私のために……。なんて良い子達なの!」


 ユリシアはリラとソラの言葉に感動している。ユリシアの為に練習したというのだから、それはそうか。

 でも、そうだな、こちらでのリラとソラの本来の姿――黒狼族だ――は、ユリシアにとってはいきなり愛する家族が姿を変えたようなものだ。その気持ちはあまり分からないが、確かに寂しいだろう。


「それにしても、また随分と可愛らしい姿だな。人間には好かれそうだ。」


『そうだね!アスターも触ってみる?』


 そう言いながらソラが移動してきたので、触らせてもらった。撫でてみると、確かにもふもふというよりもちもち、だ。

猫は至る所で見られるが、いぬは見たことがなかった。全体的に丸みを帯びており愛嬌のある顔と表情の豊かさは、人間が好みそうだな。


「黒狼の姿より、こちらの方が村人達に怖がられないだろうな。村に滞在する時はその姿でいたらどうだ。」


『でも、黒狼の姿でいるのは、ねぇねが襲われたり、攫われたりしないように威圧するためでもあるんだよ。』


「成程、そういうことも含めて考えているのだな。偉いぞ。」


 黒狼の姿にはその効果もあったか。

 自分が常にユリシアの側にいられるわけではないので、ずっと守ることはできない。リラとソラがユリシアと共にいるだけで守りの効果があり、大切な役割だ。

 リラは本当にユリシアが大事なんだな。


『私達にとって、ねぇねは大事な家族で大事な存在だからね。』


 その言葉をユリシアもしっかりと聞いていたらしく、感極まったのか泣き出した。そうか、こういう家族のかたちもあるのか。


 俺とルルーとは違う関係性だが、また一つ、ユリシアと出会わなければ知らなかった世界が見えた。

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