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「今日は慧眼を使うトレーニングでもあるから、店とメリの中では常に使う意識をしておくように。」
「うん、分かった。」
コテージに出る前にアスターからそう言われ、武具屋に着いて早速発動させる。
……うわ、情報量過多だよこれ。
慧眼はつまり、情報を掴むものだ。その情報元が多ければその分読み取るし、スキルのレベルが高ければ高い程、対象の読み取る情報量も多くなる。スキルのレベルに関係なく、訓練を積んでいなければ制御出来ず、情報量に脳がパンクしてしまう。
それを制御し、自分が欲しい情報を得る為に訓練が必要、ということだ。
……アスターさん、ちょっと無茶が過ぎる気がしますけど。
制御方法は人それぞれで、アスターは幼少期から専属の教師と訓練したそう。一つのものに対する情報を視る事から始めて、徐々に対象物を増やし特定のものに絞って読み取る方法だったらしい。
私の場合は既にある程度の使いこなしが出来ているので、自分のやり方を模索する方が早いから情報量の多い場所に行く方が早いのだとか。
荒っぽいがその方が早いというアスターの意見だった。
取り敢えず、膨大な情報量をどうにかしたくて、頭の中で壁を作りシャットアウトして、一つのものだけ視るてあとは背景と思う事にした。
背景となれば、情報は入ってこない。この方法で一つずつ慧眼を使う事にした。
「ユリシア、大丈夫か?」
「ええ、何とか。取り敢えず一つに絞って読み取れるようにはなった。」
そうアスターに言えば、めちゃくちゃ驚いた顔をした。
「……まさか、もうやり方を見つけたのか?」
「うん。」
「凄いな。もっと時間がかかるものなんだ、だから手助けはするつもりだったが大丈夫そうだな。」
あ、一応助ける予定はあったのね。
取り敢えず情報の波は穏やかになった。一つずつ視る方法を編み出したので、いつも通り後で図鑑にする用として情報のストックを作り始めた。
あ、商品そのものを図鑑にするつもりはないよ?
あくまでも素材がどういうものとか、そういう感じ。
「うん、もう大丈夫。」
「良かった。それなら店内を見ていくか。」
店主のおじさんがわざわざ出て来てくれたらしく、色々教えてくれた。商品の説明以外にも、この村周辺の情報も話をしてくれた。
見た目は厳ついけれど穏やかで優しい店主さんだな。